ライヴ/フィービ・スノウ
今年の7月、ウッドストックのベアズヴィル・シアターで行われたフィービ・スノウのパフォーマンスを記録した新作。ヴァーヴ・フォアキャストからのリリースで。メジャー・レーベルからの彼女の新作としては、89年にエレクトラから出た『サムシング・リアル』以来ほぼ20年ぶりのことになる。この20年の間、カヴァー・アルバムが1枚、オリジナル中心のアルバムが1枚。どっちも素晴らしい内容だったけれど。マイナー・レーベルから出たその両盤の収録曲も交えたセット・リストで、フィービは長いブランクを一気に埋めつつ躍動してみせる。
デビュー直後、31年前に産んだ娘さんの脳に障害があって。以来、フィービは長い試練の日々を過ごしてきた。その娘さんが今年の3月に他界。想像を絶する苦しみと悲しみを乗り越えての復活パフォーマンスだったわけだ。でも、まったく衰えはない。錆び付いていない。74年のデビュー盤を聞いたときに感じた、クールで、同時にホットで、ファンキーで、内省的で、ダイナミックで、深くて…そんな彼女の魅力はそのまま。名うてが勢揃いしたバンドの演奏も含め、最上級の歌心を堪能できる。おなじみの「ポエトリー・マン」「シェイキー・グラウンド」、前述したカヴァー盤にも入っていた「ロッキン・ニューモニア…」とか「ピース・オヴ・マイ・ハート」、それから今回がたぶん初カヴァーになる「イッツ・オール・イン・ザ・ゲーム」とか「ウィズ・ア・ソング・イン・マイ・ハート」とか、選曲も仕上がりもごきげんだ。新曲もあります。
フォーク、ジャズ、ブルース、ソウルなどが魅惑的に溶け合うフィービ・スノウの世界が、また多くの音楽ファンのもとに帰ってきた。うれしいっすね。なんか、ジャケが泣けますね。