グッド・モーニング・アズトラン/ロス・ロボス
ロンドン、行って来ました。ブライアン・ウィルソン、6月9日、10日のロイヤル・フェスティヴァル・ホール公演2デイズを見に。2月に来日してくれたばかりではあったものの、イギリスも含む1月のヨーロッパ・ツアーや2月の日本ツアーとはまたまた演奏曲目が変わるらしいって噂を聞いて。居ても立ってもいられず、チケット取りました。またもや自腹っす(笑)。すっかりブライアン貧乏です。
でも、行って良かった。素晴らしい選曲、素晴らしい演奏、素晴らしい観客で。1部、2部構成になっているのはこれまで通り。2部では2月の日本公演同様、アルバム『ペット・サウンズ』の全曲演奏と「グッド・ヴァイブレーションズ」、プラス・アンコールって感じで。これは同じ。唯一の違いは「アイ・ノウ・ゼアズ・アン・アンサー」が「ハング・オン・トゥ・ユア・エゴ」の歌詞で歌われるところかな。これは盛り上がった。
問題は第1部のほう。びっくりしたなぁ。あまり正確ではないものの、なんとなくこんな感じだったと記憶しているセットリストを書いておくと――
1st. Set:
- Medley: Wonderful ~ Cabinessence
- Sail On Sailor
- Medley: Meant For You ~ Friends
- Dance Dance Dance
- California Girls
- Don't Worry Baby
- Please Let Me Wonder
- In My Room
- Good Timin' (dedicated to Carl)
- Forever (dedicated to Dennis)
- You're So Good To Me
- The Night Was So Young
- Your Imagination
- Busy Doin' Nothin'
- Darlin'
- Melt Away
- Medley: Our Prayer ~ Heroes And Villians (including the "Cantina" Part!)
- Surf's Up
- Marcella
- Do It Again
2nd. Set:
All Songs Of "Pet Sounds" (including "Hang On To Your Ego")
Good Vibrations
Encore:
- Surfer Girl
- Help Me Rhonda
- I Get Around
- Barbara Ann
- Surfin' U.S.A
- Fun Fun Fun
- Love And Mercy
確か9日のほうでは「ドント・ウォーリー・ベイビー」はやらなかったような覚えがあるのだけれど。うーむ。幸せすぎて記憶が飛んでる(笑)。いずれにせよ、すごいよね。『スマイル』度がさらに深まっていて。『スマイリー・スマイル』ヴァージョンではなく、『スマイル』アレンジの「ワンダフル」でいきなりスタートして「キャビネッセンス」へと突入したのにも驚いたけれど、なんたって「英雄と悪漢」の途中、ブライアンが突如“イン・ザ・キャンティーナー……”と歌い出した瞬間は鳥肌もの。場内を埋め尽くしたマニア群が一気に凍り付いていた。
他にも「グッド・タイミン」とか「ビジー・ドゥーイン・ナッシン」とか「ナイト・ワズ・ソー・ヤング」とか、ソロから必殺の「メルト・アウェイ」とか。ダリアン・サハナジャとジェフリー・フォスケットを核に据えたバンドのメンバー一丸となって、ますます『スマイル』以降のブライアン度を深めている感じだった。来日時のラインアップからアンディ・ペイリーが抜けてマイク・ダミーコが復帰。このブライアン・バンド、今やブライアンの音楽がはらんでいる内省的な側面をとことん突き詰めようとしている感じで。そっち方面に関してはもはや鉄壁。選曲的にも内向きな曲がどんどん多くなってきているのも当然というか。本当にすごいことになってきている。思い知らされた。
とともに、むしろ「サーフィンUSA」とか「アイ・ゲット・アラウンド」とか「ファン・ファン・ファン」とか、その種の“外向き”なビーチ・ボーイズ・ナンバーに関してはちょっと重厚すぎるというか。サーフィンとか車とか、そういうティーンエイジ・ライフの現場感覚を満載した曲のパフォーマーとしてはこのバンド、少々立派すぎるかも……って気がしたりして。そういうのは、もしかしたら今度8月に来日するマイク・ラヴ率いるビーチ・ボーイズのほうが軽々と今に継承している味なのかも。そういう意味じゃ、現在のブライアン・バンドって究極の室内楽バンドって感じ。アウトドア系の曲の表現には向いていないみたい。
なんてね。前はブライアンが自分の曲をライヴで演奏してくれるという、その事実だけで十分満足だったぼくなのに。こんな、ちょっとした不満を偉そうに語るようになっちゃってさ。ずいぶんと贅沢になったもんだ(笑)。ブライアンがライヴ活動を再開したときには、まさかこんな贅沢な日々がやってくるとは想像もしなかったんだから。まったく、この恐るべきブライアン・バンドはこれからいったいどんな方向に進んでいこうとしているんだろう。
開場前、ホールのカフェにはイギリス全土からわらわらと集まってきたビーチ・ボーイズ・マニアがどかっと勢揃いしていて。ビール飲んだり、コーラ飲んだりしながら、あっちでもこっちでも濃いマニア話を語りまくっていたなぁ。イギリスのファン・クラブのオフ会みたいになっている一角もあって。みんなで「サーファー・ガール」とかコーラスして楽しんでいた。そういう光景も含め、心底面白かったロンドン滞在でした。
で、今回のピック・アルバムはこのロンドン行きとは全然関係なくロス・ロボスです。国内盤は、エイベックスから例の極悪コピー・コントロール仕様で(笑)早々と選考発売されていたけれど、ようやく本国アメリカでもリリースされたのでご紹介しておきましょう。こちらは当然、通常の音楽CD。コピー・コントロールCDじゃないです。しかも初回盤は2枚組。ボーナス・トラック2曲のほか、メイキングのビデオなども含まれるCDエクストラ仕様。日本の輸入盤屋さんで買うと、もしかしてエイベックスが輸入したものかもしれなくて、それ買うのはシャクだから(笑)、CDナウに注文してアメリカから直で買いましたよ。
プロデューサーを、XTCやレディオヘッド、フォール、ヴァーヴなどとの仕事で知られるジョン・レッキーに代えての第一弾。キャリアを総括するボックス・セットを出したあとってことも含めて心機一転か……と思って聞き始めたけれど、これがまたロス・ロボスらしく、全然変わりなし。ちょっとアヴァンギャルドな肌触りと得も言われぬ哀感とを同時にたたえたハイパーなラテン感覚と、芳醇かつグルーヴィーなソウル感覚と、ヒップでごきげんなロックンロール感覚を見事に同居させたロボス・ワールド。素晴らしい。パソコンに取り込んで、毎日聞いてます(笑)。
さて、そんなわけでマイク・ラヴ&ブルース・ジョンストン率いるビーチ・ボーイズの来日も、みなさん通いましょうね。ブライアン・バンドに比べれば、たぶんテクニック的には少々見劣りするかもしれないけれど、ビーチ・ボーイズがもっともビーチ・ボーイズらしかった時代の現場感覚を追体験するには、やっぱマイクのヴォーカルを生で聞かないと。詳細はこちらへ。でもって、その予習には7月19日のCRTへ!