
トリクシーズ/スクイーズ
なんか、これ、ちょっとしたミラクルって感じ?
スクイーズ、2018年の『ザ・ナレッジ』以来、8年ぶりの新作。と、これだけでも十分ミラクル感あるのだけれど。クリス・ディフォードとグレン・ティルブルックがまだデビュー前、1974年に構想したコンセプト・アルバムの再現作だというのだから。なんだか時空の巡り具合がすごすぎて。ときめく。
スクイーズの核を成すディフォード&ティルブルックといえば、英国ポップ史上屈指のソングライティング・デュオのひとつ。そんな彼らがスクイーズとして世に出る数年前、ディフォードが19歳、ティルブルックが16歳のときに、あるコンセプト・アルバムのアイディアを思いついて。曲は書いたものの、しかしそれを演奏する腕前がなく(笑)。
そうこうしているうちに、世にパンクの波がやってきたこともあって。そういう風潮とは今ひとつ適合しないシアトリカルさをたたえた本アルバムの構想はボツってしまい、今までずっと未発表のまま眠っていたらしい。でも、そのとき書いた曲たちはカセット・テープに記録されていて。ふたりは今になってそれらを発掘。現在のスクイーズによって完成へと至らせた。それが今回の新作『トリクシーズ』らしい。
“トリクシーズ”というのは架空のナイトクラブで。そこを舞台に、ギャングやダンサーや俳優やミュージシャンやセレブな常連が繰り広げる群像劇、みたいな? 音楽的には、エルトン・ジョンの『キャプテン・ファンタスティック』とか、キンクスの『プリザヴェイション第1幕、第2幕(Preservation Acts 1 & 2)』とか、デヴィッド・ボウイの『ダイアモンドの犬(Diamond Dogs)』とか、ジェネシスの『眩惑のブロードウェイ(The Lamb Lies Down on Broadway)』とか、あのころのシアトリカルな名盤たちの影響が色濃いツクリで。スパークスとかロキシー・ミュージックとかウイングスとかの色合いも。
なんかすごく面白いのは、ティーンエイジャーだったディフォード&ティルブルックの、ピュアな、まだ円熟しすぎていない、青々とした言葉や旋律を、今、70歳前後になったスクイーズの円熟した感覚とテクニックで再構築してみせた、その時空を超えたバランスというか。
このアルバムでスクイーズがデビューしていたら、また違った未来があったのかも。CD1にオリジナル・アルバム、CD2にアルバム・デモ&ライヴ音源、Blu-rayにアルバムのDolby Atmosミックス音源を収録した3枚組のデラックス・エディションもあり。

