明日なき暴走（50周年記念ジャパン・エディション）／ブルース・スプリングスティーン
ぼくが勤めていた出版社をやめた年だから、1981年か。その年の暮れ、セサミ・ストリート関連のコンピレーション・アルバム『イン・ハーモニー2』ってのを買ったら。そのB面ラストにブルース・スプリングスティーン＆ジ・Ｅ・ストリート・バンドの「サンタが街にやってくる（Santa Claus Is Comin' to Town）」が入っていて。1975年12月のライヴ・ヴァージョン。これ、ほんとによく聞いたなぁ。
本ブログで何度も告白してきた通り、ぼくは1970年代いっぱい、ブルース・スプリングスティーンにまだ本格的にハマっていなくて。1975年に「明日なき暴走（Born to Run）」が全米チャートで最高全米23位というヒットになったときも、まあ、まだ普通に聞き流していた。
でも、1980年になって「ハングリー・ハート」が全米5位に達するヒットとなったとき、こりゃやばい、と。ぼんやり見過ごしてきたけど、この人、すげえ…ってことにようやく気づいて。そこから大ハマりしたのでした。
というわけで、時期的にもハマり始めたころに、その『イン・ハーモニー2』の「サンタが街にやってくる」に出くわしたもんで。大いに盛り上がったっけ。というのも、これ、コーラス・リフの部分がクリスタルズ・ヴァージョンになっていたから。フィル・スペクターが配下のミュージシャンを総動員して63年に作り上げた『クリスマス・ギフト・フォー・ユー』に収録されていたやつ。
「ハングリー・ハート」も、ある種真っ向からのスペクターものだったし。あのヒットに後押しされて買った当時の最新アルバム『ザ・リバー』も、随所に往年のロックンロール・イディオムがぶちまけられているアルバムだったし。そんなこんなも含めて、ああ、スプリングスティーンって深い、やばい…と思っていろいろ過去音源とか映像とか集め始めたただ中に出会った重要曲のひとつだった。
ちょっと後になって手に入れたプロモーション用の米盤シングルのスリーヴに、サンタとトナカイのイラストとともにカバが描かれていて。最初のうちは気づかなかったのだけれど、これ、ゲイラ・ピーヴィーが1953年に放ったクリスマス・ノヴェルティ・シングル「アイ・ウォント・ア・ヒポポタマス・フォー・クリスマス」へのオマージュなわけで。それもまたスプリングスティーンの奥深さを象徴しているよう。
と、そんな「サンタが街に…」がライヴ・レコーディングされた1975年12月12日、米ロングアイランドのC.W.ボスト・カレッジでのフル・コンサートの模様がついに日本でフィジカル化されましたよ！
「サンタ…」側からの紹介でいいのかどうか、よくわからないけど(笑)。昨日、12月24日に、スプリングスティーンの傑作サード・アルバム『明日なき暴走』の拡張版、ずばり『明日なき暴走（50周年記念ジャパン・エディション）』ってのが日本独自にリリースされて。
これは文字通り、『…暴走』の誕生半世紀を祝う日本独自企画。CD3枚組で。ディスク1がSACDとのハイブリッド仕様によるオリジナル・アルバム。で、ディスク2と3が、1975年、“ボーン・トゥ・ラン・ツアー”からそのロングアイランド公演をフルで収めたライヴ盤。それぞれをCDサイズの紙ジャケに収めたうえで、それらをさらに7インチ紙ジャケ仕様のダブル・ジャケットに投げ込んだ形でのリリースだ。
今回のリリースに関しては、レコード・コレクターズ誌の次号に原稿を寄せたので、詳しくはぜひそちらを読んでやってください。本ブログではボーナス・ディスクとして付いているその2枚組ライヴのほうが思いきり喜ばしい、という件を強調しておきます。
これ、もちろん本ブログにはよく登場するnugs.net（旧live.brucespringsteen.net）でオフィシャルに配信されている膨大なライヴ・アーカイヴ音源のひとつではあるのだけれど、nugs.netって日本からだと正規には音源を入手できないことになっているもんで。熱心なマニアさんは、こう、いろいろごにょごにょしながらがんばって手に入れている状況。ぼくもそのひとり。それだけに、今回その音源がオフィシャルにフィジカル化されたのだから。ありがたい限り。live.brucespringsteen.netだとフィジカルを注文してもCD-Rだったりするしね。
そういうわけで、まさに12月24日、日本のスプリングスティーン・ファンへぎりぎりに届いたうれしいクリスマス・プレゼント。これを取り急ぎご紹介しつつ、本年のブログ更新は終了、と。そういうことにさせていただきます。今年もお世話になりました。また来年、いい感じのタイミングで更新再開しますね。
メリー・クリスマス！ よいお年を！
