Disc Review

Lightning Might Strike / Juliana Hatfield (American Laundromat Records)

ライトニング・マイト・ストライク/ジュリアナ・ハットフィールド

以前、この人がエレクトリック・ライト・オーケストラのレパートリーばかりカヴァーしまくったアルバムを取り上げたことがあったけれど。

その他にもオリヴィア・ニュートン=ジョンの曲だけとか、ポリスの曲だけとか、そういうアルバムも間に挟みつつ、初期のパンク寄りのテイストから、徐々にぐっとジャングリーなパワー・ポップ的な持ち味へと移行してきたジュリアナさん。

ブレイクベイビーズ時代、レモンヘッズ時代、サム・ガールズ時代なども含めて、ほぼ休みなく40年間近く活動を続けているけれど、ぼくとしては近年のジュリアナさんがいちばん好きかも。

今回の新作もいい感じ。どの曲にも皮肉と自嘲と、でも最終的にちょっとだけボジティヴに持ち直す複雑な感触とが交錯していて。冒頭の「フォール・アパート」から、いきなり“私はよく崩れる/何事もなかったふりをするのはひとつスキルよ/そして今、また私はばらばらに崩れちゃう”みたいなことを、外向きなメロディとサウンドに乗せて歌っていたり。

“私の希望と夢が萎えていく/心と同じようにゆっくり溶けていく/ポプシクル、ぽたぽた…”という、どこか悲しい心情を、でもかわいく描いて、さらにパワー・コードうなるギター・ポップ・サウンドに乗せて綴る「ポプシクル」とか、往年のバブルガムものの美学を受け継いでいるようだし。

個人的なお気に入り曲はミディアム三連もの「ハーモナイジング・ウィズ・マイセルフ」かな。過去に感謝しつつ、未来の不確かさをも受け入れる…みたいな感触がじわじわきます。ラストを飾る「オール・アイヴ・ガット」も、それまでのシニカルなアプローチから一転、孤独とか恐怖とか痛みとかに対峙したときの拠り所にできるたったひとつのものをアコースティック・ギターのカッティングに乗せて歌っていたりして。沁みます。

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