
ザ・ライフ・オヴ・ア・ショウガール/テイラー・スウィフト
まあ、今さらぼくが紹介するまでもない特大話題作なので、どうしようかなとは思っていたのだけれど。
いちおう、ちょっとだけ触っておきます(笑)。テイラー。
ここ数作、アーロン・デスナーとかジャック・アントノフと組んで深めてきたテイラー流アメリカーナ/インディー・フォーク路線とか内省的で詩的な路線みたいてやつをいったん置いて。2010年代ど真ん中、『レッド』『1989』『レピュテーション』のころへと一気に回帰。マックス・マーティンとシェルバックと改めてタッグを組んで、きらきらしたポップ・クイーンとしてのテイラー像を新作『ザ・ライフ・オヴ・ア・ショウガール』で届けてくれた。
なので、カントリー時代も、ポップ時代も、インディ・フォーク時代も、基本無条件で大好きなぼくとしては、これはこれでうれしいのだけれど。
ただ、正直なところ、もうちょっと近年のアメリカーナ路線を深めつつ成長していってほしかった気もしなくはなく。あるいは、何か変化するのならば以前の味へと回帰するのではなく、あっ、今のテイラーはこんな方面に向かうのか…的な? 『フォークロア』でぼくたちを驚かせてくれたときのように、もっともっと意外な展開を勝手に期待していたのかもしれなくて。
先週末に本アルバムが出たとき、しばらくはどう受け止めるべきか、ちょっと複雑な気分で聞き続けていたのでした。
けど。聞き続けているうちに、そういう、なんかファンゆえの身勝手な逡巡もろもろ、どうでもよくなってきちゃって(笑)。テイラーも、マックスも、シェルバックも、この8年間、それぞれの道でクリエイターとして活動していた中で培ったすべてを持ち寄っている感じもあって。そう思うとこれを単なる“回帰”だと決めつけちゃいけないこともわかってきて。
「オパライト」とか、一緒に♪ウォッ・ウォッ・ウォッ・ウォーッ…と歌っているだけでもうごきげん。
他にも、往年の大女優と自らを重ね合わせる「エリザベス・テイラー」とか、ジョージ・マイケルの同名曲を巧みに引用しつつ、テイラー自身も含む業界の大物たちをマフィアのボスに例えた「ファーザー・フィギュア」とか、高校時代の親友が亡くなったことを歌ったらしき「ルーイン・ザ・フレンドシップ」とか、90年代インディー・ロックふうの「アクチュアリー・ロマンティック」とか、歌詞表現に賛否が渦巻いているキャッチーな「ウッド」とか、ケルシーへの愛を綴った「ハニー」とか、サブリナ・カーペンターと共演した表題曲とか…。
要するに、今回もテイラー、よかったじゃん、と。結局そこに行き着くだけの朝でした。
このところテイラーのLP買っても、届くまでに曲数増やした拡張版CDとかが出ちゃったりして。なんだよー…みたいな経験をいっぱいしてきたけれど。今回はどうやら全12曲でフィックスらしく。ありがたいっすね。