Disc Review

For Dinah / Ledici (Candid Records)

フォー・ダイナ/レデシー

ぼくはダイナ・ワシントンというシンガーが大好きで。

ジャズも、R&Bも、ポピュラーも、全てのジャンルを超越した女性シンガー…というか、彼女の存在自体がすでにひとつのジャンル、みたいな? そうまで言い切ってしまいたいくらい、ぼくは彼女の歌声に圧倒されていて。男性シンガーではレイ・チャールズ、女性ではダイナ・ワシントン。そんな感じ。

で、今回、レデシーがそんなダイナ・ワシントンのレパートリーばかりを取り上げたトリビュート・アルバムを出したのでさっそく聞いてみました。

2021年にリリースされたニーナ・シモンへのトリビュート・アルバム『レデシー・シングズ・ニーナ』に続く企画だけれど。もともと計画が立ち上がったのは8年くらい前のことだったらしく。以来、『…シングズ・ニーナ』を間に挟みつつ、レデシーさん、じっくり実現に向けて取り組んできたみたい。レデシーはダイナについて、“彼女は私に、自由に動き、自由に創造し、リーダーシップを発揮する女性であることや、好きなものを身につけ、思うままに発言することを許してくれた。アレサの前に、ダイナがいた…”と語っていて。そんな熱く深い思いがいい形で実を結んでいます。

同趣向のダイナ・トリビュート盤はそれなりに出ていて。そんな中でぼくがいちばん印象的に受け止めたのは、アレサ・フランクリンが1964年に出した『アンフォゲッタルブ:ア・トリビュート・トゥ・ダイナ・ワシントン』ってやつ。これはダイナ他界直後に出た盤で、ジャジーなアレンジよりもR&B的なファンキーなアプローチが目立つ1枚。敬愛するダイナを失ったことでむしろその呪縛から解き放たれようとするかのような仕上がりになっていたのだけれど。

それに比べると、レデシーの本作はぐっとストレートというか、ダイナ寄りというか。アレサのように、愛しているがゆえにオレ流でぶん回す、みたいなこともなく、あー、この人、ほんとにダイナのことが大好きで、まっすぐリスペクトしているんだなと感じられる歌唱を聞かせてくれてます。ジャズ、ソウルなどからミュージカルまで、多彩な分野でのびのび持ち前の歌心を発揮する感じにも確かにダイナの後継といったムードがあるし。

レックス・ライドアウトとクリスチャン・マクブライドがプロデュース。ポール・ジャクソン・ジュニア、マイケル・キングらも参加。もちろんマクブライドも1曲、フィーチャリングされている。ブルック・ベントンとのデュエットで大ヒットした「ベイビー(You've Got What It Takes)」はグレゴリー・ポーターとのデュエットで。

若い世代にはこれきっかけで、ぜひダイナのオリジナルにも触れてもらいたいものです。

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