
ダーリング・ブルー/ザ・マーカス・キング・バンド
去年、それまでのダン・アワーバックに代わってリック・ルービンをプロデューサーに起用し、ソロ名義でソウル方面にぐぐぐっと力強い接近を仕掛けたマーカス・キング。
今回は2018年の『カロライナ・コンフェッションズ』以来、久々に“ザ・マーカス・キング・バンド”名義の新作。デイヴ・コブ人脈のエディ・スピアーのプロデュース/エンジニアリングの下、改めて長年のバック・バンドと再タッグを組み、より幅広いルーツ探索の旅へ出た感じだ。待ってました!
ジョージア州メイコンのカプリコーン・スタジオと、テネシー州ナッシュヴィルのブラックバード・スタジオでのレコーディング。もちろん持ち前のカントリー・ソウル〜アメリカーナ風味を基調に、ロカビリー調あり、サザン・ロック調あり、スワンプ調あり、ホンキー・トンク調あり、シンガー・ソングライター系あり…。ゲストもいろいろ迎えながら快調に飛ばしていって。
中盤以降は、カーティス・メイフィールドというか『スーパーフライ』っぽい「カロライナ・ハニー」とか、ノア・サイラスをゲストに迎えた「ザ・シャドウズ」とか、前作のソウル調を引き継いだ方向性の楽曲が顔を出してきて。盛り上がる。ジェシー・ウェルズを迎えた、1970年代カントリー・ロック・バラード調の「サムバディ・エルス」とか、デラニー&ボニー&フレンズっぽいグルーヴの「ノー・ルーム・フォー・ブルー」とかもかっこいい。
歌詞的にはまだあまり深く聞き込んではいないけれど、キング自身が経験した鬱病や依存症のことなども直視しつつ、それらを乗り越える、あるいはそれらといかに共存していくかを描いた曲とかも。
キングのギタリストとしての側面は今回もあまり強調されることなく、痛快なバンド・サウンドと、それをバックに歌心を発揮するキングのストーリーテラーとして魅力にスポットを当てた1枚という感じかな。