Disc Review

Tedeschi Trucks Band and Leon Russell Present: Mad Dogs & Englishmen Revisited Live at LOCKN’ / Tedeschi Trucks Band (Swamp Family Music/Fantasy)

マッド・ドッグス&イングリッシュメン・リヴィジテッド/テデスキ・トラックス・バンド&レオン・ラッセル

以前も本ブログでお伝えした通り、10月、11月、12月、3ヵ月にわたって月1回ずつ、ノージと一緒にブライアン・ウィルソンの歩みを振り返る講座の講師を務めさせていただきます。ありがたいことにたくさんの受講希望いただいているみたいなので。こちらもさらに気合い入れてがんばりますね。

で、ぼく自身も勘違いしていたんですが。3回全部受講しないといけないのかと思っていたら、1回ずつの受講もOKなんだとか。3回まとめての受講が難しい場合は、各回それぞれへのご参加も可能。なので、とりあえず1回、最初の回だけ受講してみて、面白かったら次も…みたいな形もありっぽいです。1回は教室で、あとはオンラインで、とか。そういう選択もできそう。

まあ、ブライアンもいろいろ山あり谷ありの人生なので、受講回がどこかに偏りそうな予感もなくはないですが(笑)。ご興味ある方、スケジュールのご都合とかと照らし合わせつつ、お時間あるときに覗いてみていただけるとうれしいです。


と、業務連絡を終えたところで、本日のピックアップ。テデスキ・トラックス・バンド with レオン・ラッセルによる最強ライヴ・アルバムです。

このライヴは、ほんと、生で見たかったなぁ。2015年9月11日、ヴァージニア州アーリントンで開催されたザ・ロックン・フェスティヴァルでのテデスキ・トラックス・バンドのパフォーマンス。

この人たち、2019年、同じロックン・フェスティヴァルでデレク&ザ・ドミノズのアルバム『いとしのレイラ』の全曲演奏をぶちかましたりもしていて。それが『レイラ・リヴィジテッド(ライヴ・アット・ロックン)』としてアルバム化されたとき、本ブログでも盛り上がらせてもらったものだけれど。

その4年前、2015年には前哨戦とも言うべきライヴが行われていて。それが本作に記録された“マッド・ドッグズ&イングリッシュメン”を再訪するトリビュート・コンサート。ご存じの通り、マッド・ドッグズ&イングリッシュメンというのは、ジョー・コッカーのライヴ・アルバム名であり、そこで演奏していたバンドの名前でもあり…。

1969年から70年にかけてデラニー&ボニーのバンドで演奏しながらゴスペル、ブルース、カントリーといった自身の南部ルーツを強調した音作りに取り組むようになっていたレオン・ラッセルの存在に着目した英プロデューサー、デニー・コーデルが、自分の手がけるシンガー、ジョー・コッカーの音楽監督にレオンを抜擢。レオンはデラニー&ボニーのバンドの顔ぶれを基本とした新たなビッグ・コンボ“マッド・ドッグズ&イングリッシュメン”を編成してジョー・コッカーをバックアップすることになったわけだけれど。

ホーン・セクションやコーラス隊を含む大所帯バンドであるテデスキ・トラックス・バンドにとっても、このマッド・ドッグズ&イングリッシュメンは大先輩というか、ひな形というか、そんな重要な存在。ということで、2013年ごろからジョー・コッカーの名作ライヴ『マッド・ドッグズ&イングリッシュメン』への再訪トリビュート・コンサートの計画が練られ始めたのだとか。

もちろん、その段階ではジョー・コッカーの参加も予定されていたのだけれど。残念なことに彼は2014年暮れに他界。が、テデスキ・トラックス・バンドは計画を頓挫させることなく、ジョー・コッカーへの追悼の気持ちも込めて2015年9月、計画を実現させたのでした。ジョー・コッカーは旅立ってしまったものの、当時まだレオン・ラッセルはご存命中。ということでレオン御大(キーボード、ヴォーカル)を招き、クリス・ステイントン(キーボード)、リタ・クーリッジ(ヴォーカル)、クラウディア・レニア(ヴォーカル)らマッド・ドッグズ…のオリジナル・メンバー10名をゲストに迎え、感動の再訪コンサートが開催された。

『レイラ再訪』にも参加していたドイル・ブラムホールIIや、ブラック・クロウズのクリス・ロビンソン、ギャラクティックのアンダース・オズボーン、ワイドスプレッド・パニックのジョン・ベル、ウォーレン・ヘインズ、シャノン・マクナリーらも客演。『マッド・ドッグズ…』の当たり曲のひとつだったカヴァー曲、トラフィックの「フィーリン・オールライト」には作者、デイヴ・メイソンも迎えられている。すごい。やばい。テデスキ・トラックス・バンドの面々と合わせて、最後にはステージ上に30人くらい(笑)。

5年くらい前、このコンサートのドキュメンタリー映像が公開されていたのになぜか音盤化はされず。今年になってようやくそれが実現した理由はよくわかりませんが。とにかく盤になってくれて、とてもうれしい。

翌年他界してしまうことになるレオン・ラッセルも、けっして本調子ではなかったのかもしれないけれど、歌にピアノに大健闘。こうしたラージ・スワンプ・アンサンブルのオリジネイターとしての存在感をたっぷり放っているし、他のゲストの面々も誰もが強力。近年のロックが失いがちになっているやばさのようなものを見事、世紀を超えてぼくたちの眼前によみがえらせてみせてくれている。

当日のフル・セットリストはアンコールも含めて17曲だったと思うけれど、そこから14曲をセレクト。クラウディア・レニアの「クライ・ミー・ア・リヴァー」とか、リタ・クーリッジを迎えた「グルーピー(スーパースター)」とか、ドイルの「サムシング」とかを外して、曲順もいろいろ入れ替えて。でも、いい感じの流れにまとめられていて。元のジョー・コッカー版『マッド・ドッグズ&イングリッシュメン』の熱とはまた違った、継承しようとする者たちの決意と、される側の誇りとがいい形で交錯する感動の記録です。若き日のジョー・コッカーやレオン・ラッセルらの映像と組み合わせたクリップも感動的。

やっぱマッド・ドッグズ&イングリッシュメンにせよ、デラニー&ボニー&フレンズにせよ、バングラデシュのコンサートにせよ、エルヴィス・プレスリーの1970年代ライヴにせよ、南部系のラージ・アンサンブルはすごいね。いかすね。こういうバンド形態、今の時代、維持が大変だとは思うけれど、絶対になくなってほしくないなぁ。テデスキさんたちには踏ん張ってもらいたいものです。

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