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Disc Review

Layla Revisited (Live at Lockn’) / Tedeschi Trucks Band featuring Trey Anastasio (Swamp Family Music/Fantasy/Concord)

レイラ・リヴィジテッド/テデスキ・トラックス・バンド

確かに、こいつしかいないというか。デレク・トラックス。彼しかいない。エリック・クラプトンが結成したデレク&ザ・ドミノズによる1970年リリースの名盤『いとしのレイラ(Layla and Other Assorted Love Songs)』の全曲演奏という、きわめて勇敢なチャレンジというか、英断というか、暴挙というか(笑)、そういうことをしても万人から納得してもらえる存在は。

もちろん、エリック・クラプトン以外で…ということではあるけれど。もともとあのアルバムの場合、途中からレコーディングに加わったデュアン・オールマンが果たした役割も大きく、たぶんクラプトンひとりではやりそうにないし。

それに対してデレク・トラックスは、なんたって“デレク”ってくらいだから。両親が『いとしのレイラ』の大ファンで、彼にそのものずばりの名前を付けてしまったほど。彼と弟を寝かしつけるときの子守歌として、お父さんはこのアルバムをずっとかけていたのだとか。すり込まれ具合が半端ない。

さらに、ブッチ・トラックスの甥っ子だという人脈もあり、デュアン・オールマンの継承者的な立場で、若くしてオールマン・ブラザーズ・バンドにも大いに貢献してきた。並行してクラプトンのツアーに参加していたこともおなじみだろう。2007年のクラプトンのツアーでは『いとしのレイラ』全14曲中6曲を演奏。もちろんデュアン・オールマンのパートを担いながら、だ。

しかも、『いとしのレイラ』のオリジナル発売日、1970年11月9日はデレクの愛する姉さん女房、スーザン・テデスキのどんぴしゃ誕生日でもあるのだとか。

もはや運命。使命。ということで、テデスキ・トラックス・バンドは2019年8月24日、米ヴァージニア州アーリントンで開催されたロッキン・フェスティヴァルに出演した際、レギュラーの12人編成のバンドに加え、頻繁にコラボしている仲間、ドイル・ブラムホールIIと、フィッシュのトレイ・アナスタシオの2人をゲストに迎え、なんと事前告知なしに、いきなりサプライズで『いとしのレイラ』の全曲演奏をぶちかましたのだった。

そのニュースはけっこう衝撃的に世に拡散された。ブートレッグもいろいろ出た。2CD+DVDみたいな豪華版もあった。なのですでに衝撃のパフォーマンスを耳にしている方も多いと思うけれど。おまちどおさま。そのオフィシャル・エディションがついにリリースされた。それが本作『レイラ・リヴィジテッド(ライヴ・アット・ロッキン)』だ。

オリジナルはデュアン・オールマンも含め5人編成のバンドによって演奏されていたわけだけれど、そのコンパクトなスワンプ・ロック/サザン・ロック・サウンドをテデスキ・トラックス・バンドはギター4本、ダブル・ドラム、3管ホーン・セクション、スーザン+トレイ+ドイルおよびバンドのコーラス3人を含む複数ヴォーカリストたちにキーボード、ベース…という大編成で再現。これが実によく練られていて。ダイナミックで。かっこいい。

オリジナル・アレンジをきっちり活かしつつも、随所に緻密なアイディア満載。おなじみのギター・リフにホーン・セクションを絡めて、時に重厚に、時にぐっとタイトに、新鮮なグルーヴを提供してみたり、豊かなコーラスでメロディラインをよりふくよかによみがえらせたり。映像が先行公開されていた「恋は悲しきもの(Why Does Love Got to Be So Sad?)」の躍動感とか、「リトル・ウィング」のシンフォニックな展開とか、とてつもない。

そして、何と言ってもずらり勢揃いした腕ききリード・ギタリストたちが組んずほぐれつ、4人(主に3人)がかりで挑むギター・ソロ! ごきげんにスリリングだ。どれを誰が弾いているのか、映像がないと判然としない個所もあるけれど、だいたいはフレージングや音色でわかるので、あれこれ想像しながら聞くのも超楽しい。熱いジャムのおかげもあってオリジナル・ヴァージョンの倍くらい長尺になっている曲も多数だ。

実際のコンサートは「いとしのレイラ」の演奏で幕。オリジナル・アルバムのラストにアンプラグド編成でひっそり添えられていたボビー・ホイットロック作品「庭の木(Thorn Tree in the Garden)」は、激アツな再現コンサートの興奮を鎮めるように“客出し”のBGMとしてPAシステムから流されたらしい。もちろんそのときはデレク&ザ・ドノミズのオリジナル・ヴァージョンが流れたわけだけれど、今回、アルバム・リリースにあたって「庭の木」もデレクとスーザンによってスタジオ・レコーディングされ、ラストに追加された。最後のピースがさりげなく、しかしぴたりとハマり、1枚の壮大な絵がついに完成した。

日本盤(Amazon / Tower)にはもう1曲、「アイ・アム・ユアーズ」のリハーサル・テイクがボーナス追加されているみたい。うれしいような、微妙なような。まあ、ぼくはボーナスなしのハイレゾでゲットしちゃったのでよくわからないけど。日本盤で楽しむときはボーナスの前、「庭の木」でいったん再生止めたほうがしっくりおさまりそう…。

もちろん本作は、パティ・ボイドへの屈折したクラプトンの思いが充満した表題曲を含むオリジナル・アルバムに取って代わるものではないのだけれど。50年ちょい前に出たあの傑作を再度、多角的に見つめ直す上でとても大きな助けになるはず。この企画ひっさげて、コロナ後のワールドツアーとか、やってくれませんかねー。

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