
NBPファイル vol.131:追悼コニー・フランシス
また寂しい報せです。コニー・フランシス。つい先日、骨折で入院したというニュースが伝わってきて。快方に向かっているとは言われていたものの、残念なことに7月16日、亡くなったとのこと。享年87。
大滝師匠が生前、日本人にはコニー・フランシスがいいんだよ…と、よく話してくださったものです。ブレンダ・リーじゃなく、コニー・フランシス。あのウェットな歌声が日本人にはぴったりくるんだ、と。
ぼくも子供のころから彼女の歌声をよく聞きながら育ちました。わくわくさせてもらったり、泣かせてもらったり。1960年代、ラジオでいっぱい彼女の歌声がかかっていました。テレビでは弘田三枝子さんとか伊東ゆかりさんとか森山加代子さんとか九重由美子さんとか、たくさんの日本人シンガーが彼女のヒット曲を日本語に訳詞して歌ってくれていました。なんだか必須科目のような感じでコニー・フランシスという個性を浴びていた気がします。
けっして大げさにではなく、日本のポップ・シーンを育ててくれた恩人のひとりだと思います。ただ、それだけに、あまりにもデフォルト感が強すぎ、つい彼女の真のすごさみたいなものを忘れがちになったりしていた時期すら、少なくともぼくにはありました。1970年代前半とか、特にそんな感じだったかな。恩知らずにもほどがある…。
そんな不埒なぼくが、改めて彼女のすごさを思い出したのは、1980年代に入ってからでした。その昔、1980年代アタマくらいに、ぼくは数年勤めた某出版社を退社して、雀の涙ほど出た退職金と失業保険をつぎ込んで、当時まだ超高価だったビデオデッキを購入。渋谷のすみやでとある映画の輸入ビデオ買ったのでした。
それが、テディ・ランダッツォとチューズデイ・ウェルド主演による映画『ロック・ロック・ロック』(1956年)。劇中、ランダッツォが挑むタレント・スカウト・ショーの司会がアラン・フリードで、ショーの出演者はチャック・ベリー、ジョニー・バーネット、フランキー・ライモン&ザ・ティーンエイジャーズ、フラミンゴス、ムーングロウズ、ラヴァーン・ベイカーなど。
YouTubeなんかない時代の話だから。とにかく、そういうオールディーズ系のアーティストが動いているところを見ることができる機会などまったくなかったもんで。このビデオ、見まくりました。映画自体の出来はフツーの青春ラヴ・ストーリーだけれど。演奏シーンが素晴らしくて。ロックンロールという新種の若者音楽がシーンを賑わしだした当時の躍動感と混乱とがたっぷり楽しめる仕上がり。楽しかった。VHSではなく、βだったなー。いやー、懐かしい。
で、そんな映画の中に、主演のチューズデイ・ウェルドが歌うシーンもあって。これがよかったのだ。ぐっときた。でも、チューズデイちゃんは画面上で口パクしているだけ。実際の歌声は若きコニー・フランシスだったのです。
コニーさんがデビューしたのは1955年で。でも、当初はあまり売れず。初チャートインは、カントリー歌手マーヴィン・レインウォーターとのデュエット曲「ザ・マジェスティ・オヴ・ラヴ」が出た1957年のこと。これが全米93位にちらっとランクしたあと、ソロ名義による「フーズ・ソーリー・ナウ」が全米4位まで上昇。ここからヒット・シンガーとしての大活躍が始まるわけだけれど。
『ロック・ロック・ロック』はそれよりも前、まだヒットが出ていないころの歌声で。でも、映画で歌われていた2曲のうち、特に「アイ・ネヴァー・ハッド・ア・スウィートハート」って曲がよくて。まだコニーさんが18歳くらいだったころの歌声だと思うけれど。うまいし、泣けるし。
あ、この人、やっぱりすごい人だったんだな。こんなすごいシンガーの歌声を当たり前のようにたくさん聞きながら育つことができたんだな、と。1980年代になって改めて感謝したものです。
そんな感謝の気持ちもこめて、今朝はコニー・フランシスのプレイリスト、作ってみました。今回もいつものように12曲で選んだので、「ヴァケイション」とか「かわいいベイビー」とか「大人になりたい」とか「ステューピッド・キューピッド」とか、泣く泣く外した代表曲も多いですが。いいベスト盤もたくさん編まれているので、そちらでぜひ。
「アイ・ネヴァー・ハッド・ア・スウィートハート」をきっかけに、個人的にコニー・フランシスの再評価期に突入。それから改めていろいろ盤を集め始めて。その時期に好んで聞いていたタイプの曲からセレクトした12曲リストです。コニーさんだから、やっぱりリストは邦題で作っておきますね。
素敵な歌声をたくさんありがとう。どうぞ安らかに。
RIP Connie, Don’t Ever Leave Us
- アイ・ネヴァー・ハッド・ア・スウィートハート (I Never Had a Sweetheart) (1956)
- カラーに口紅 (Lipstick on Your Collar) (1959)
- ボーイ・ハント (Where the Boys Are) (1961)
- ノー・ワン (No One) (1961)
- 夢のデイト (Someone Else's Boy) (1961)
- 想い出の冬休み (I'm Gonna Be Warm This Winter) (1962)
- 渚のデイト (Follow the Boys) (1963)
- ロリポップ・リップス (Lollipop Lips) (1963)
- ユア・アザー・ラヴ (Your Other Love) (1963)
- ブルー・ウインター (Blue Winter) (1964)
- ビー・エニシング (Be Anything) (1964)
- 離さないで (Don't Ever Leave Me) (1964)