
ナイアガラ・ムーン(50周年記念エディション)/大滝詠一
大滝詠一が設立したナイアガラ・レコード。当時の日本では前例のなかった本格的個人レーベルですが。その初リリースから50年。半世紀。それを祝って、3月には大滝さんのベスト盤とか、ストリングス・インスト・アルバムとか、いろいろ再発がありました。
4月23日には、ナイアガラの第1弾リリースとなったシュガーベイブ『SONGS』の復刻LPとか、カセットとか、50周年記念エディションCD(1994年の「TATSURO YAMASHITA Sings SUGAR BABE Live」からの音源を収めたボーナス・ディスク付き!)とか、デビュー・シングル「ダウンタウン」の復刻7インチとかも出て。大いに盛り上がっておりますが。
個人的にはこっちかな。1975年5月30日、ナイアガラ・レコードからのアルバム第2弾としてリリースされた大滝さんのセカンド・ソロ『ナイアガラ・ムーン』のLP完全限定復刻。
大滝さんの作品はもちろん全部大好きで。プレ・ナイアガラ期のソロ・ワークも素晴らしいし、“ゴー・ゴー”も“多羅尾2”も“カレンダー”も“オンド・アゲン”も、もちろん“ロンバケ”も“イーチタイム”もみんなすごいけど。
でも、これがいちばんかな。50年前、ほんとリリースを待ちわびて、いっちばんわくわく聞きまくったかも。ご本人執筆のライナーもくまなく読んで、まだ何ひとつ知らなかったアメリカン・オールディーズの世界にずぶずぶハマっていくきっかけをもたらしてもらって。そのあたりのことは『エリス』の44号でも湯浅学と対談させてもらっていますが。
ジェリー・リーバー&マイク・ストーラーあり、ニール・セダカあり、バリー・マン&シンシア・ワイルあり、エルヴィス・プレスリーあり、バディ・ホリーあり、アーニー・K・ドゥあり、フォー・シーズンズあり、クレイジー・キャッツあり、ルイ・アームストロングあり、マット・モンローあり…。
そんなもろもろからの影響を巧みに、柔軟に、躍動的に、アナーキーに、諧謔的に、飄々と、かつユーモアたっぷりに再構築してみせた大滝ワールド。しかも半世紀前に、ですよ。しびれる。爆発的だった。50年間、ずっと大好き。大好きなまま。
オリジナルのエレック盤以降、再発盤が出るたび裏ジャケの写真が変わっていたり、いろいろ油断のならないアルバムですが。今回はわりとストレートアヘッドな復刻のようでいて、またいろいろあります。グリーン・ヴァイナル仕様。エレック・ロゴ入り。“ニュー・ミュージックの雄”オビ付き…。
『ナイアガラ・ムーン』、うちに何種類あるんだろう(笑)。でも、それもまた楽し。