Disc Review

BETA / Peter Cat Recording Co. (muddy water records)

ベタ/ピーター・キャット・レコーディング・カンパニー

今から5年くらい前、前作だか前々作だかにあたる『ビスミッラー』ってアルバムを本ブログでも紹介したことがあるインドのインディー・ポップ・バンド、ピーター・キャット・レコーディング・カンパニー。そのとき、この人たちのこと何ひとつわかってません…と書いたのだけれど、今なおよくわかってないままで。でも、どうにも離れがたい、忘れられないこの人たちの音が気になって。新作が出たので聞いてみました。

そしたら、相変わらず吸引力ばっちりというか。前回書いた言い回しをそのまま流用させてもらうと、“洗練されているんだか泥臭いんだか、緻密なんだか雑なんだか、やる気があるんだかないんだか、オルタナなんだか真っ当なんだか、楽しいんだか悲しいんだか、アナログなんだかデジタルなんだか、チューニングが合ってるんだか合ってないんだか、そもそもうまいんだかヘタなんだかすらよくわからない”って感じの持ち味がそのまま、ほんの少しだけアップグレードしつつ音像に定着していて。今回もやられました。

スウィート・ソウル、サンシャイン・ポップ、インディー・ロック、キャバレー・パンク、エレクトロニック、サイケもの、スペースもの、ハリウッド、ボリウッドなど、時代も地域も越えたトランス・カルチャー・ポップ・サウンドというか。

アルバム・タイトルの“BETA”というのはヒンディー語で“息子”という意味だとか。ドラマーのカラン・シンが最近父親になったことにちなんで付けられたタイトルらしいのだけれど。「サドゥンリー」って曲にはヴォーカルを担っているフロントマン、スリヤカント・ソーニーが十代だったころにこの世を去った父親への思いが綴られていたり。父と子、みたいな何かが大きなテーマなのかも。

これまでの作品群に漂っていた、終末の予感に対するシニカルなまなざしのようなものに代わって、なにやら救済への祈りのようなものが浮上してきたような…。ラストを飾る「ビューティフル・ライフ」って曲の“美しい人生、それは俺の心の中に生きている/それをつかむことができたなら…”というフレーズがやけに耳に残ります。

とか言ってますが、ほんとはよくわかってません。次から次へといろいろな音のアイディアとかギミックとかがアルバム全編、ものすごくイマジネイティヴに飛び交っているもんで。そっちにばっかり耳が行っちゃって、歌詞とか全然入ってこないっす(笑)。

フィジカルは10月になってから出るみたいな感じで、今のところデジタル・リリースのみ。ストリーミングで聞いてます。暑い日のウォーキングのBGMとかにしていると、けっこうくらくらきます。熱中症じゃないと思います。

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