Disc Review

Shut Up & Play! / Toronzo Cannon (Alligator Records)

シャット・アップ&プレイ!/トロンゾ・キャノン

“シカゴで最も有名なバス運転手”と言われてきたトロンゾ・キャノン。

今は運転手生活からは引退したみたいだけど、昼はシカゴ交通局のバス・ドライヴァー、夜はブルース・クラブで演奏…という多忙な日々をこなしてきたシカゴの遅咲きブルース・ロッカー。5年ぶりの新作、出ました。通算6作目。ブルースの名門、アリゲーター・レコードに移籍してからは3作目。

1990年代にL.V. バンクス、ウェイン・ベイカー・ブルックス、ジョアナ・コナーらのギタリストとして活躍するようになり、やがて2001年に自らのバンド、キャノンボール・エクスプレスを結成。2007年、自主制作盤『マイ・ウーマン』でアルバム・デビューを飾った後、こちらも名門のデルマーク・レコードと契約して。

で、『リーヴィング・ムード』(2011年)、『ジョン・ザ・コンクァー・ルート』(2013年)とアルバムを2作重ねたところでいよいよアリゲーターへ。『ザ・シカゴ・ウェイ』(2016年)でブルース・ミュージック・アワードを獲得したり、問題作『ザ・プリーチャー、ザ・ポリティシャン・オア・ザ・ピンプ』(2019年)をリリースしたり。で、いよいよ久々に今作の登場となった。

2019年作のアルバム・タイトルからもわかる通り、この人、“朝起きたら俺のベイビーがいない…”的な伝統フォーマットに縛られることのない、バスを転がしながら目撃してきたシカゴの現状を託したオリジナル・ブルースが売りで。

今回も、偉そうな政治家の偽善とか、二枚舌とか、銃乱射のこととか、医療保険の問題とか、日々の苦しさとか、まるで透明人間になったような感覚とか、詐欺まがいのビジネスのこととか、自らの歩みのこととかを、熱いブルースや、ディープなゴスペル・ソウル、アーバンなソウル・バラードなどに乗せて歌いまくり、パワフルなギター・ソロを弾きまくっている。

冒頭の「キャント・フィックス・ザ・ワールド」って曲では、“今すぐ世界を正すことなんかできねぇから/俺は俺のブルースをぶちかますしかないのさ”とか歌ってて。いきなりかっこいい。続く2曲目のタイトルなんか「アイ・ヘイト・ラヴ」ときた。やばい。「ギルティ」って曲には“hush money(口止め料)”ってワードも出てきて。たぶんレコーディング時はまだトランプの有罪評決は出ていなかったと思うけど、独自に評決を下してたってことね。頼もしい。

アリゲーターの社長、ブルース・イグラウアーが共同プロデュース。Amazonでは今のところなぜか輸入CDが売られておらずヴァイナル(けっこう高い)のみなのだけれど、国内流通CDも今月下旬には出る。横浜とかにやってきてプレイしてくれたのは前作が出た2019年だから、もう5年前か…。新作ひっさげての再来日、切望します!

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