サムズ・プレイス/リトル・フィート
待ってました! の1枚。ちょっと前にもここで盛り上がりました。リトル・フィートが真っ向からブルースに挑んだ新作の登場です。
リトル・フィートのブルースものというと、まず1971年のファースト・アルバムでのあの強烈なハウリン・ウルフ・メドレー——ルーズベルト・サイクス作の「フォーティ・フォー」とハウリン・ウルフ自作の「ハウ・メニー・モア・イヤーズ」を合体させつつカヴァーしていたあれ——を思い出す。再結成後だと、1996年のライヴ『ライヴ・フロム・ネオン・パーク』でマディ・ウォーターズの「キャント・ビー・サティスファイド」とロバート・ジョンソンの「レッド・ホット」のメドレーを披露したり、2012年の『ルースター・ラグ』でミシシッピ・ジョン・ハートの「キャンディマン・ブルース」をカヴァーしていたり…。
もちろんブルースはフィートにとって、ロックンロール、カントリー、フォーク、ニューオーリンズR&B、ゴスペル、ファンクなどと並ぶ重要なルーツのひとつなわけで。彼らのプレイを聞いていれば、当然そこにはたくさんのブルースが匂い立っているのだけれど。ブルースというフォーマットに特化してアルバムまるごと埋め尽くしたのは今回が初。うれしいです。
アルバム・タイトル『サムズ・プレイス』というのには2つの意味合いがあるようで。ひとつはレコーディング場所。メンフィスにあるサム・フィリップスのスタジオで録音されたということ。そしてもうひとつは、いつもならステージの後方に位置することが多いパーカッショニスト、現在78歳のサム・クレイトンが、本作ではフロントを張り、全編でリード・ヴォーカリストとして力強いバリトン・ヴォイスを披露していること。
冒頭の「ミルクマン」のみオリジナル曲。あとは、マディ・ウォーターズ、リトル・ウォルター、ハウリン・ウルフなどチェス系ブルースの雨アラレ。マディが1975年の『ウッドストック・アルバム』で取り上げていたボビー・チャールズ作品「ホワイ・ピープル・ライク・ザット」をセレクトしているところも憎い。ラストを飾る「ガット・マイ・モジョ・ワーキング」はライヴ音源だ。
ファーストで取り上げていたハウリン・ウルフの別曲にまた挑み、マディの「キャント・ビー・サティスファイド」も再演。いい感じにキャリアを一巡りさせている感もあり。タフに、柔軟に、ファンキーにグルーヴするフィート・サウンドで聞くブルースはやっぱごきげんです。
ローウェル・ジョージもポール・バレアもいなくなってしまった今、フィートのギター・アンサンブルを担っているのはローウェルの後を受け継いだフレッド・タケットと、ポールの後を受け、今回がフィートでの初レコーディングとなるスコット・シャラード(グレッグ・オールマン・バンド出身)。どちらも大健闘。ちなみに今回「ホワイ・ピープル・ライク・ザット」をやろうと提案したのはスコットさんらしい。ナイス!
曲によってはボニー・レイットも客演してごきげんなスライド・バトルを聞かせてくれる。やはりゲスト参加して、この種のセッションには欠かせないブルース・ハープの音色を随所に提供するマイケル“ブル”ロブもいい仕事。新加入ドラマーのトニー・レオンもいい。ケニー・グラッドニーとのコンビネーションもばっちりだ。もちろんビル・ペインも相変わらず強力でブルージーなピアノやオルガンをぶちかましている。
今朝というか、昨深夜にストリーミングが始まったばかりで、まだブツを手にできてはいませんが、これまたヴァイナルで楽しみたい1枚っすね!