Disc Review

Live in London / Randy Newman (Nonesuch)

RNewmanLondon

ライヴ・イン・ロンドン/ランディ・ニューマン

CRT“スマイルまつり”もいよいよ明日。楽しみですが。CRTといえば、手前ミソながら先日のランディ・ニューマン・ナイトもかなり充実した回だったような…。

この人のことを語るとき、いつも持ち出す話だけれど。シンガー・ソングライターにも様々なタイプがいて。自分の心の揺らめきをそのまま自分のドラマとして表出するタイプもいれば、曲ごとに物語の主人公を作り上げて、その人物を演じるタイプもいる。ニューマンは後者の代表格。初期の代表曲「セイル・アウェイ」では、彼は奴隷商人になりきってアフリカ人を甘い嘘で欺く。「ロンリー・アット・ザ・トップ」では、フランク・シナトラをイメージさせる大物有名シンガーになりきり、美女と大金と喝采とに彩られた男の淋しさを歌う。「レッドネック」では偏見に満ちた南部白人になりきり、北部人を嘲る。「イン・ジャーマニー・ビフォア・ザ・ウォー」では、孤独な殺人者となり、動かなくなった少女の身体の傍らで川の流れを見つめる。「ショート・ピープル」では、発表当時アメリカの製造業に大打撃を与えた日本企業を憎む男にでも憑依したか、“背の小さいやつには生きる資格もない、愛する者もない”と冷徹に歌い放つ。「マリー」の美しいメロディに乗せて綴られるダメ/ヤバ男っぷりも凄み満点…。

そんな彼の持ち味の、けっこう深いところまで先日のCRTでは踏み込めたかなって感じもあって。クローズドな場所にみんなで集って、飲んで食って、音楽をサカナにあーだこーだ言葉を交わし合うのって楽しいなと思ったのでありました。

あの夜の復習編としても絶好のライヴ盤が出ました。2008年、当時の最新アルバムにあたる『ハープス・アンド・エンジェルズ』のプロモーションを兼ねてロンドンで行われたコンサートの模様。シンプルなピアノ弾き語り曲もあるけれど、メインはBBCコンサート・オーケストラをバックに従えてのパフォーマンス。全22曲。ファッツ・ドミノとアーロン・コープランドが同居する素晴らしいピアノ演奏もたっぷり楽しめるし、血筋を活かした流麗なストリングス・アレンジの粋も存分に味わえるし。やばい。

とともに、彼自身の渋く、深く、皮肉っぽい歌声で綴られる物語がしみます。デビュー・アルバムから『ハープス・アンド・エンジェルズ』まで、全キャリアをカヴァーする選曲。ニューマンがピアノ一本の弾き語りで自らの過去の作品に改めて接した“ソングブック・シリーズ”のライヴ版って位置付けでもいいような…。MCも聞き逃せません。どっかんどっかん行ってます。この夜の模様はBBCでオンエアされていて、そのときの映像もDVDとして付いてます。インタビュー映像もあり。買うしかないっ。

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