NBPファイル vol.64:ドク・ポウマス&モート・シューマン作品集
2日前、6月27日はドク・ポウマスのお誕生日だとか。1925年6月27日、ニューヨークのブルックリン生まれ。彼は1991年に65歳で亡くなっているけれど、もうすぐ生誕100年か…。
ユダヤ系白人ながら、16歳を迎えるころ、ビッグ・ジョー・ターナーの「パイニー・ブラウン・ブルース」を聞いて一気にブルースのとりこに。本人いわく、この瞬間が人生最大の転換点だったとか。この時期から自らブルース歌手になることを夢見るようになった。6歳でポリオを患ったせいで松葉杖が欠かせない生活だったものの、大学に通い始めると同時にグリニッチ・ヴィレッジのブルース・クラブに出入りするようになり、やがて自らもステージで歌うように。
とはいえ、まだ1940年代の話。ブルース・クラブに集う者の中で白人はポウマスひとりだった。が、ユダヤ人で、しかもポリオを患っていた彼は“弱者”としての思いを黒人たちと共有していた。黒人たちも彼の勇気と才能に大いに敬意を払っていたという。
1944年、19歳のときにアポロからレコード・デビュー。以降、チェス、サヴォイなどいくつかのレーベルを渡り歩きながら50年代半ばにかけて躍動的な自作ジャンプ・ブルースを何曲もリリースした。が、歌手として生活を支えるだけの稼ぎを得ることができなかったポウマスは、並行して主にアトランティック・レコードを根城にソングライターとしても活動するようになった。
特に1950年代後半、同郷の後輩、モート・シューマンとコンビを組んでからは売れっ子に。オーティス・ブラックウェルの紹介でヒル&レインジ音楽出版と契約した彼らは、1959年、フェビアンに提供した「アイム・ア・マン」とボビー・ダーリンに提供した「プレイン・ジェイン」を全米トップ20ヒットに送り込み、ソングライター・チームとして順調なスタートを切った。
以降、ポウマスの黒い感覚と、シューマンのジャズ/ラテン/ブロードウェイ・ミュージカルなどに精通した幅広いセンスが一体化した素晴らしいヒット・チューンを、エルヴィス・プレスリー、ザ・ドリフターズら当時の人気シンガーたちにたくさん提供してきた。
というわけで、スロウバック・サーズデイ恒例NBPプレイリスト、今週はそんなドク・ポウマスのお誕生日を祝し、ポウマス&シューマンの作品集。それこそ無数に存在する彼らの名曲の中から、ほんの12曲ではありますが、ぼくの好きな曲を並べてみました。彼らがエルヴィスに書き下ろした作品だけで12曲ってのもいいなと思ったけれど、それはまた別の機会に。
ポウマス&シューマンについては、2015年に出た『エリス』10号の拙連載ページ「ソングライター・ファイル」で詳しく書いたことがあります。メールアドレスを登録すれば無料で読めるデジタル音楽誌ですので、ご興味ある方はバックナンバーのコーナーをチェックして読んでみてください。
These Magic Moments of Doc (Pomus & Shuman Songbook)
- A Teenager In Love / Dion & The Belmonts (1959)
- Sweets for My Sweet / The Searchers (1963)
- Angel Face / Jimmy Darren (1959)
- No One / Connie Francis (1961)
- This Magic Moment / Jay & The Americans (1968)
- Suspicion / Terry Stafford (1964)
- Hushabye / The Mystics (1959)
- Can't Get Used to Losing You / Andy Williams (1963)
- So Close to Heaven / Ral Donner (1961)
- Seven Day Weekend / Gary U.S. Bonds (1962)
- Save the Last Dance for Me / The Drifters (1960)
- I Need Somebody to Lean On / Elvis Presley (1964)