レイト・デヴェロッパーズ/ベル・アンド・セバスチャン
去年、オリジナル・スタジオ・アルバムとしては7年ぶりとなる『ア・ビット・オヴ・プリヴィアス』をリリースしたベル・アンド・セバスチャン。まあ、その間、シングル集があったり、EPの連続リリースがあったり、ライヴ盤があったり。久々感はなかったものの、やっぱオリジナル・フル・アルバムというのは格別で。1980年代あたりへのノスタルジックな眼差しもまぶしく。ベルセバ沁みるなぁ、と、じんわりさせてもらったものですが。
そんな『ア・ビット・オヴ・プリヴィアス』のレコーディング・セッションで録音されながらアルバムに収められずじまいだった“Late Developers”、つまり“奥手”な、というか、“大器晩成”っぽい楽曲を集めたアルバムが出た。
ファースト・シングルとして先行リリースされた「アイ・ドント・ノウ・ホワット・ユー・シー・イン・ミー」は、前作の感触とも共通するエイティーズ・マナーにのっとったシンセ・ポップ・チューンで。同郷グラスゴーのソングライター/プロデューサー、ウー・オーことピート・ファーガソンの作品だった。ある意味、前作以上に迷いなくポップなアプローチというか、歌詞的にも音的にも外向き/前向きなテイストへと一歩踏み出した感じもあって。そういう意味では本アルバム、単なる未発表音源集というわけではなく、前作と同じセッションでレコーディングされた姉妹作ととらえるべき1枚か。
アルバムのオープニングを飾るのは、ワイルドなギター・カッティングに乗せてスチュアート・マードックが哀感に満ちたメロディを綴る「ジュリエット・ネイキッド」。歌詞の内容はまだよくわかっていないけれど、“ラヴ・スプリーム”だの“ウィル・ユー・スティル・ラヴ・ミー・トゥモロウ”だの“クイックサンド・オン・ザ・バトルフィールド”だの、なんだか気になるワードが耳に残る。ヴァイオリンのサラ・マーティンが歌う「ギヴ・ア・リトル・タイム」は、これぞベルセバという感じのキュートなメロディがたまらない。A.A.ミルンの子供向け詩集『ぼくたちがとてもちいさかったころ』と同じタイトルだってことがなんだか象徴的な「ホエン・ウィー・ワー・ヴェリー・ヤング」は、これまた初期ベルセバ・ファンがぐっときそうな1曲で。日常に呑み込まれる中、“置き去りにしてきてしまった未来”を悔いながら、日々を憂うマードックの語り口がなんとも切ない。
まあ、ひとつひとつ感想を書いていったらまじ、キリがないわけですが。他にもキャット・スティーヴンスを思わせるアコースティック・チューンあり、ポール・マッカートニー&ウイングスの名前に突然言及するポップ・ロック・チューンあり、これまたエイティーズ色濃いシンセ・ディスコものあり…。
ラス前、1994年ごろ作られたという未発表曲「ホエン・ザ・シニックス・ステア・バック・フロム・ザ・ウェル」には、やはりグラスゴー仲間、カメラ・オブスキュラのトレイシアナ・キャンベルがゲスト・ヴォーカルとして参加。で、ラスト。軽快なホーン・セクションを伴ったアルバム・タイトル・チューンでマードックは“誰が言ったんだ? ぼくに知恵がある、と。答えを知っている、と。ぼくじゃない”とか歌っているのも、なんだかベルセバらしくてぐっときます。
国内盤(Amazon / Tower)にはいつものようにボーナス・トラックも。