Disc Review

Eric Clapton: Anniversary Deluxe Edition / Eric Clapton (UMC/Polydor)

エリック・クラプトン・ソロ(アニヴァーサリー・デラックス・エディション)/エリック・クラプトン

今、60歳代半ばであるぼくの場合、エリック・クラプトンという存在を知ったのは彼がクリームというバンドの一員だったころ。といっても、クリームの活動期、1966〜68年、ぼくは小学生から中学生時代。そのころ好きでよく聞いていたのは日本のGSとか、洋楽ならモンキーズとか、そういうのが中心で。ロックの何たるかとか意識したこともなかった。

クリームのシングル「ホワイト・ルーム」はそこそこヒットしたのでラジオで耳にしてはいた。けど、クラプトンによる曲後半のワウワウ・ソロとかばっさりカットされた短縮ヴァージョン。クラプトンが凄腕ギタリストだという評価は耳にしていたものの、どうすごいのか実感できぬまま。個人的にその辺をなんとなくとはいえ思い知ることができたのはもう彼らの解散後、1969年の『グッバイ・クリーム』収録の「アイム・ソー・グラッド」を聞いたときだったか…。

いや、それでもまだよくはわからず。映像という最終手段で彼らの何たるかをそこそこ具体的に感知できたのは1972年になってから。ご存じNHKの“ヤング・ミュージック・ショー”で1968年11月の解散公演の模様が放映されたときだった。メンバーによる奏法解説パートも含め、いろいろな謎がやっと解明された気になった瞬間。ぼくはもう高校生になっていた。

で、改めてクリームってすげえな、と。ようやく思い知った。ベースとは思えぬジャック・ブルースのベースにも、テンポ・キープなんて役割はまったく頭になさそうなジンジャー・ベイカーの奔放なドラムにも圧倒された。MTVもインターネットもなかった時代のスピード感なんてそんなもんだ。3〜4年遅れ。すでにクラプトンはクリームどころかブラインド・フェイスもデレク&ザ・ドミノスも解散し酒とクスリとセックスに埋没していた。

なので、実は1970年に出たクラプトンのソロ名義によるファースト・アルバムとか、その魅力をじっくり味わえるようになったのも、ずいぶんと後。もう大学生時代かな。『461オーシャン・ブルヴァード』とか出たあと、少し時を戻す感じで再訪してやっとクラプトンがやりたかったことの一端を感じ取ることができた、みたいな。

と、そんな、ずいぶんと後追いで堪能するようになったエリック・クラプトンのファースト・ソロ。オリジナル発売から50周年を祝う4枚組ボックスが出た。『エリック・クラプトン・ソロ(アニヴァーサリー・デラックス・エディション)』。ザ・バンドの存在などにショックを受けて、一気に米国南部音楽への傾倒を強め、デラニー&ボニーと活動をともにしたりしていた時期のクラプトンの姿をいきいきととらえたあのアルバムの決定版的拡張エディションだ。

このファースト・ソロに関しては2006年にけっこう充実した内容の2枚組デラックス・エディションが出ていて。トム・ダウドによるオリジナル・ミックス11曲と、プロデュースをつとめたデラニー・ブラムレットによる未発表ミックス10曲と。そこに興味深いボーナス・トラックを詰め込んだものだったけれど。

今回はそこに、大半が初出となるエリック・クラプトン自らの手によるミックス11曲も加わった。ディスク1がトム・ダウド・ミックス11曲。ディスク2がクラプトン・ミックス11曲。ディスク3がデラニー・ブラムレット・ミックス10曲。で、ディスク4が別ヴァージョン+アウトテイク集。このレア音源に関しては、2006年デラックス・エディションのディスク1、2、それぞれの末尾に収められていたキング・カーティス入りの「ティージン」とか、「レット・イット・レイン」の別ヴァージョン「シー・ライズ」とか、アウトテイクの「ブルース・イン・A」とか、デラニー&ボニー&フレンズのシングル「カミン・ホーム/グルーピー」とか、そのあたりを1枚にまとめて、さらに「カミン・ホーム」の未発表別ミックスを追加。

というわけで、2006年デラックス・エディションを持っている身としては、全11曲8曲が未発表のエリック・クラプトン・ミックスと、この「カミン・ホーム」の別ミックスのために、またもや4枚組を買うの? どうするの? ということになるわけですが。

でも、本格的にソロとして新たな地平に足を踏み出そうとしているクラプトンの意欲のようなものが、まだどこか手探りっぽい自身のミックスの随所に聞き取れるようで。まあ、若干空回り気味というか、勇み足っぽい感触も強いのだけれど、それも含めてものすごく興味深い。ブートレッグで既出の音源ではあるけれど、やっぱりオフィシャルで聞けるのは格別です。

クラプトンは、ここでスタジオ・セッションをともにしたボビー・ホイットロック、カール・レイドル、ジム・ゴードンとともにデレク&ザ・ドミノズを結成。いよいよ大傑作『レイラ』の制作へと突入していくことになるのでありました。

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