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Disc Review

Return to Greendale / Neil Young & Crazy Horse (Reprise)

リターン・トゥ・グリーンデイル/ニール・ヤング&クレイジーホース

ニール・ヤングの日本公演には、もちろん過去何度か足を運んでいるけれど。最後は2003年11月の日本武道館。その年の夏に出た新作アルバム『グリーンデイル』に合わせたワールド・ツアーだった。

ご存じの通り、『グリーンデイル』というのは米西海岸の架空の町に暮らす家族の姿を描いたコンセプト・アルバム。911以降、ブッシュ政権下の政治腐敗、環境破壊、マスメディアの迷走など、さまざまなテーマを、家族3世代の在り方に重ね合わせ、ニール・ヤングらしい強烈なメッセージとして放っていく、まあ、いわばロック・ミュージカルで。発売前からあれこれ噂されていた。

当初はあまりいい噂ばかりじゃなかった覚えがある。アルバム・リリースに数カ月先駆け、全曲を披露する北米コンサート・ツアーがスタートしていて。でも、その評判が今ひとつ芳しくなく。高いチケット買ってライヴに出かけてみたら聞いたこともない新曲を淡々と演奏するばかりで、みたいなニュースも少なからず伝わっていた。おかげで、実際にアルバムを手に入れるまでは、正直、ぼくも少し引き気味だったのだけれど。が、聞いてみたら違った。ごきげんだった。まさにニール・ヤングな1枚だった。

当時のヤングさんといえば、活動初期に通じる2000年の『シルヴァー&ゴールド』とか、ブッカー・Tらのサポートを受けつつ渋くキメた2002年の『アー・ユー・パッショネイト?』とか、多彩で、ちょい穏やかめな諸作を出し続けていたのだけれど。『グリーンデイル』では盟友クレイジー・ホースとがっちりタッグ。1996年の『ブロークン・アロウ』、いや1994年の『スリープス・ウィズ・エンジェルズ』、いやいや、もしかしたら1990年の『傷だらけの栄光(Ragged Glory)』以来、本当に久々のニール・ヤング&クレイジー・ホース節が堪能できるスタジオ・アルバムに仕上がっていた。

なので、アルバム・リリースから半年もしないうちに実現した来日公演には、ほんと、心から期待して。もちろん、ニール・ヤングたちも見事そんなファンの身勝手な期待感にばっちり応えてみせてくれたものだ。懐かしい。

武道館のステージ上にはグリーンデイルの街のセットが組まれていた。大きなスクリーンも設置されていた。ニール・ヤング&クレイジーホースの面々と、ヤングさんのヴォーカルに口パクしたり映像とシンクロしたりしながら物語を演じるキャスト(コーラスも担当していた当時の奥さま、ペギさんも含む)やダンサーの面々が互いに絡み合い、躍動していた。コンサート前半が『グリーンデイル』全曲演奏。キャストの演技付きでアルバムの全10曲が曲順通りに披露されて。

で、そのあと後半、クレイジーホース単体で「ヘイ・ヘイ・マイ・マイ」「見張り塔からずっと(All Along The Watchtower)」「セダン・デリヴァリー」「ラヴ・アンド・オンリー・ラヴ」「パウダーフィンガー」「ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド」「ライク・ア・ハリケーン」を演奏。なんか、前半がお芝居で後半が歌謡ショーの美空ひばりコマ劇場公演みたいな構成ではありました。

でも、楽しかった。盛り上がった。今もあの夜の充実感、忘れられない。でもって、そんな充実した思い出を今改めて鮮明に更新させてくれるライヴ・アルバムが出た、と。そういううれしいお知らせです。ヤングさんの“アーカイヴズ・パフォーマンス・シリーズ”の最新リリース『リターン・トゥ・グリーンデイル』。

件のアルバムが出てまだひと月も経っていない2003年9月4日、カナダのトロントで行なわれた全曲演奏ライヴの模様を収めたライヴ・アルバムだ。日本公演の2カ月ほど前の記録ということになる。『グリーンデイル』ツアーの前半部をまるごと収録。CD2枚組フォーマット、アナログLP2枚組フォーマット(Amazon / Tower)、そして2CD+2LP+フル・コンサート映像入りのブルーレイ+既発のアルバム制作ドキュメンタリー『インサイド・グリーンデイル』のDVDという限定デラックス・エディション(Amazon / Tower)。フィジカルはこの3形態でのリリースだ。

ちなみに、デラックス・エディションは間もなく、11月20日発売予定。その他、ストリーミングもある。もちろん、ニール・ヤングのアーカイヴ・サイトでのハイレゾ配信もある。

ここで提起されていたブッシュ政権下の諸問題が、結果的に何ひとつ解決していないどころか、トランプというモンスターの出現によって、より混迷を深めている現在のアメリカに向け、ついに自らアメリカの市民権をゲットしたニール・ヤングが改めて放つ鋭い矢、と。そんな感じかな。

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© 2020 Kenta Hagiwara