ワーキングマンズ・デッド:50周年記念デラックス・エディション/グレイトフル・デッド
今日は寝坊しちゃって。午前中のスケジュールをあたふたこなすのに精一杯で。ブログは後回し。午後になってちょっと落ち着いたので、ちらっと更新しておこうかな、と。そんな“今”を過ごしております(笑)。
あたふたしているときはこれかな、ということで、BGMはデッドでした。10日ほど前、アウトテイク集を紹介した1970年の『ワーキングマンズ・デッド』。その50周年記念エクスパンデッド・エディションが出たので、それをストリーミングでふにゃ〜っと聞いてました。
ぼくはデッドのサイトにアナログのピクチャー・ディスクをオーダーずみ。数日前、出荷を知らせるメールは来たものの、さすがにブツはまだ届かず状態。それが届いてからブログで紹介しようかと思っていたのだけれど。まあ、さっきも書いた通りストリーミングも7月10日から始まっているので。いつ届くかわからない荷物を待っているのも何なので、紹介しておきます。
ご存じの通り、グレイトフル・デッドは1965年、奇才ジェリー・ガルシアを中心にサンフランシスコで結成されたバンド。サイケでアシッドでラウドな長尺インプロヴィゼーションをフィーチャーしたサウンドで、当時の若い世代の間に自由と解放のシンボルとして流通し始めたドラッグ/トリップ体験をより効果的に彩るアイテムとして、まず人気を博したわけだけれど。
そういうクローズドな三密っぽい環境では最強に魅力を発揮したデッドも、モンタレー・ポップ・フェスとかウットストック・フェスとか、そういうオープンな環境で他のアーティストとの共演…みたいなシチュエーションでは今いち本領を発揮することができず。最悪なパフォーマンスで評判を落としちゃったり。オルタモントの悲劇にバンドのスタッフが絡んでいたり。メンバーがドラッグの所持容疑で逮捕されちゃったり。マネージャーをつとめていたミッキー・ハートの父親が金を持ち逃げしちゃったり…。
散々な状況に心が折れちゃったのかどうなのか。よくわかりませんが。とにかく初期の音楽的方向性からちょっと路線変更。より内省的でアコースティックな音作りをめざすようになって、1970年に2枚のアルバムをリリースした。ちなみに2作目のほうが『アメリカン・ビューティ』。こっちも超傑作だけれど、今回出たのはその5カ月ほど前に世に出たもうひとつの傑作『ワーキングマンズ・デッド』のほうだ。
ジェリー・ガルシア、ボブ・ウェア、ロン“ピッグペン”マッカーナン、フィル・レッシュ、ビル・クルーツマン、ミッキー・ハートというラインアップでのレコーディング。サンフランシスコのパシフィック・ハイ・レコーディング・スタジオで10日間で作り上げたものだとか。プロデュースはバンドのライヴ・エンジニアをつとめていたボブ・マシューズとベティ・カンター。
メンバーの重要なルーツであるカントリーやフォークに急接近したアコースティカルな仕上がりが話題を呼んだ。ジェリー・ガルシアがペダル・スティールを弾くようになったので、そういう音楽をやりたくなっただけ、という説もあるけれど。それにしても、たとえばCSNとかポコとか、当時人気を博していた他の大物カントリー・ロック・アクトに比べると、コーラスもアンサンブルも思い切りユルい。
でも、このなんともドラッギーなユルさこそがポイント。一度ハマると忘れられなくなる。間違いなくデッドならでは。ジェリー・ガルシア&ロバート・ハンターというソングライティング・チームによる曲作りもある種のピークを形成している感じだし。つーか、ぼくは世代的に、実はこっちの路線がデッド初体験だったりするもんで。どうにも抗えない。はちみつぱい、久保田麻琴といった日本人アーティストに対する影響も計り知れない。
てことで、その名盤のオリジナル・リリースから50年。それを寿ぐアニヴァーサリー・エディションだ。CDだと3枚組という仕様。ディスク1が全8曲入りのオリジナルLPの最新リマスター音源。ディスク2と3が、1971年2月21日、ニューヨーク州ポート・チェスターのキャピトル・シアターで収録された未発表ライヴ音源。このライヴ音源は16チャンネルのアナログ・マスター・テープから新たにミックスされたものだとか。
同時期のライヴ盤『グレイトフル・デッド(Skull & Roses)』とか『ヨーロッパ’72』とか、あの辺を聞きながら、けっこうダラけてんなー…と思っていたものだけれど。いやいや、甘かった。今回の1971年未発表ライヴ音源を聞いちゃうと、あちらがものすごくタイトなライヴ盤だったように思えちゃうというか(笑)。そのくらい今回のはユルユルです。もちろん、いい意味で。こんな脱力した「ミー・アンド・ボビー・マギー」とか「ネクスト・タイム・ユー・シー・ミー」とか、逆に宝のように思えてくる。
ライヴでは『ワーキングマンズ・デッド』と『アメリカン・ビューティ』からの曲もたくさんやっていて。ピッグペンのやさぐれ気味のヴォーカルが味わい深い「イージー・ウィンド」とか、思いきり緊張感のない(笑)「バーサ」とか、イントロの途中でチューニングが気になったか、いったん演奏を止めて最初からやり直す「リップル」とか、ラストを締める長尺の「アンクル・ジョンズ・バンド」とか、かっこいい。この時期から『ヨーロッパ’72』あたりまでの、デッドのアメリカーナ路線再評価のためにも必携のアニヴァーサリー・エディションという感じ。
デヴィッド・フリックによるライナーも充実しているらしいんだけど、まだストリーミングで聞いているだけでブツを手にしていないので、それは読んでません(笑)。早く届かないかなぁ…。