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Disc Review

Encore (33CD Boxset) / Donna Summer (Crimson Productions/Demon Music)

アンコール/ドナ・サマー

すっごいの出ました。ドナ・サマー。

ドナ・サマーって名前を聞くだけでもけっこうおなかいっぱい感あるけれど(笑)。今回出たのは、全世界1500セット限定のCD33枚組全329曲入りボックスセット。おなか、はちきれます。

1974年のファースト・アルバム『Lady of the Night』から2008年の『Crayons』まで、スタジオ・アルバム17作、ライヴ・アルバム2作に加えて、1979年の2枚組ベスト『On The Radio: Greatest Hits, Vol. I and II』、そして今回新たに編まれた7インチ・シングル集『7″ Single Versions』、12インチ・シングル集『12″ Single Versions』、リミックス集『Remixes』、アルバム未収録シングルなどレア音源集『Non-Studio Album Singles and Extended Mixes』が一気にぶちこまれている。

ぼくが最初にドナ・サマーを聞いたのは大方の音楽ファン同様、1975年にシングル「愛の誘惑(Love To Love You Baby)」がヒットしたときで。プロデューサーのピート・ベロッテ、ソングライター/アレンジャーのジョルジオ・モロダーの名前とともに脳内に強烈にインプットされた。で、この曲が入ったアルバムを聞いてみたら、「愛の誘惑」はA面まるごと占める艶めかしいロング・ヴァージョンになっていて。驚いた。けど、他の曲はわりと真っ当なMORというか、アダルト・コンテンポラリーな歌ものって感じで。

そこから遡って、前1974年にオランダだけで出たというファースト・アルバム『Lady of the Night』を聞いてみたら、これがいきなり1960年代ガール・グループみたいなポップ・チューンで幕開け。その後、カントリーみたいな曲があったり、サンシャイン・ポップふうがあったり…。その後のドナ・サマーを予測させるのはマイナー調のえぐいロック調の「ザ・ホステイジ」くらい。

まあ、最初はそういう人だったのだ。ジョルジオ・モロダー&ピート・ベロッテという、イタリア人とイギリス人のアメリカン・ポップス・マニアがドナ・サマーという強力に“歌える”個性を素材にしてやりたい放題、みたいな。そんなふうにスタートしてから、徐々にディスコものの成功が続いたことで、今度は真っ向から“クイーン・オヴ・ディスコ”としてキック4分打ちの曲ばっかりになっていって。

でも、たとえば1976年の『A Love Trilogy』に入っていたバリー・マニロウの「グッド・イット・ビー・マジック」のどエッチなディスコ・ヴァージョンとか、えぐくて楽しかったし。1977年の『I Remember Yesterday』ってアルバムも大好きだった。オープニングを飾るアルバム・タイトル・チューンのような、ドクター・バザーズ・オリジナル・サヴァナ・バンド系のおしゃれなディスコものとか、ダイアナ・ロス&ザ・スプリームス系のシャッフル・チューン「バック・イン・ラヴ・アゲイン」とか、トニー・マッコーリー作のバラード「キャント・ウィー・ジャスト・シット・ダウン」とか、ほんと、よく聞いたものだ。

ただ、このアルバムのB面ラストに入っていた「アイ・フィール・ラヴ」が、全部マシーンでやってるんだぜ的な観点からテクノ・ポップ系の音楽ファンの間でずいぶんと持ち上げられるようになって。個人的にはいちばん回数聞かなかったと思われる曲なのだけれど(笑)。この辺からドナ・サマーがシーンで担う役割も変わっていったのかなと思う。

で、モロダー/ベロッテのアメリカン・ポップス・マニアぶりが相変わらず炸裂した「マッカーサー・パーク」のカヴァーとかも挟みつつ、バカ当たりした「ホット・スタッフ」を含む1979年の『バッド・ガールズ』あたりまでで右肩上がりの第一期が終わり。そこでカサブランカ・レコードからゲフィンへと移籍。1980年の『The Wanderer』から円熟期とも言うべき第二期へ。

これ以降はいかにも1980年代的なエレクトロR&B系になっていって。特にクインシー・ジョーンズがプロデュースした『Donna Summer』とか、マイケル・オマーティアンがプロデュースした『She Works Hard for the Money』とか、直球で超売れ線サウンドまっしぐらみたいな。あっぱれという感じではあったけど、個人的にはちょっと興味を失いつつあった感じ。もちろん、この時期まではむちゃくちゃ売れていたので音だけは否応なく耳には入ってきていて。やっぱすごい人だなと思ってはいた。

けど、1984年の『Cats Without Claws』あたりから迷走が始まって。まあ、ドリフターズのカヴァーとか、ラストの感動的なゴスペルっぽい曲とか、この人の歌のうまさが思いきり発揮されていて嫌いじゃなかったとはいえ、このアルバムから以降が言葉は悪いけど衰退期にあたる第三期かな。

と、女王のそんな流れを改めて追いかけるには絶好のボックスセット。7インチ・シングル集、12インチ・シングル集、リミックス集、オリジナル・アルバム未収録音源集…これら“ボーナスCD”と銘打たれた8枚が、今回のボックスセットの目玉であることは間違いない。LPの片面1曲みたいなロング・ヴァージョンの多い人なので、シングル・エディット・ヴァージョンがあれこれ入っているのはうれしいし、ブルース・ロバーツとデュエットしたサントラ曲とか、ポール・ジャバラのアルバムにゲスト・ヴォーカルとして参加したときの素敵なバラードとかがまとめらめれているのも最高だし。

といっても、このボリュームのくせして、コンプリートじゃないんだよなぁ。シングル・ヴァージョンを完璧にゲットしたいと思ったら、以前出た『Singles…Driven by the Music』も結局は手放せない。アウトテイクとか、別テイクとかも特に入っていない。ヒップホップ系のアーティストとコラボしながらレコーディングしていたものの、いまだ未発表に終わっている遺作アルバム『Angel』の素材も少しくらいは入っているかと思ったら、そんなこともなかったし。ちょっとだけ残念。

もちろん、ドナ・サマーという偉大なディーヴァの歩みをアルバム単位で一気にたどり直すという意味では実にありがたい箱ではあります。それは確か。お値段、2万円超ってところが少々考え物ではありますが…。

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