ホエン・アイ・ワズ・ヤング〜MGMレコーディングズ 1967〜1968/エリック・バードン&ジ・アニマルズ
アニマルズというと、たぶん多くの人が、まずトラディショナル・フォーク・ブルースをエレクトリック・バンド・アレンジで再構築した「朝日のあたる家(The House Of The Rising Sun)」や、バリー・マン&シンシア・ワイル作の「朝日のない街(We Gotta Get out of This Place)」、あるいはジョン・リー・フッカーの「ブーン・ブーン」のカヴァーなどを売りにしていた1964〜65年ごろ、シンプルに“アニマルズ”とだけ名乗っていた英コロムビア/EMI時代の音を思い出すんじゃないかと思う。
あの時期のホワイト・ブルース風味というか、ブルー・アイド・ソウル感覚というか、それももちろんめちゃくちゃかっこいいのだけれど。その後、1966年にいったんバンドを解散して、中心メンバー、エリック・バードンを核に新たなラインアップで再スタートを切った時期、“エリック・バードン&ジ・アニマルズ”名義で活動していた1967〜68年の、一気にサイケデリック風味を強めた時期の音もかっこいい。当時、けっこう日本でも人気があった記憶がある。
と、そんな時期、エリック・バードン(ヴォーカル)、ヴィック・ブリッグズ(ギター、ピアノ)、ジョン・ワイダー(ギター、ヴァイオリン、ベース)、ダニー・マカロック(ベース)、バリー・ジェンキンス(ドラム)という顔ぶれで、本拠地を“サマー・オヴ・ラヴ”まっただ中の米サンフランシスコへと移し、MGMレコードと契約して再スタートを切った第二期の音源を総まくりしたCD5枚組が先月、2月に出ました。
ディスク1は新生アニマルズの第一弾となった1967年のアルバム『サンフランシスコの夜(Winds of Change)』。解散前のサード・アルバムに引き続き、トム・ウィルソンをプロデューサーに迎えたダークでディープでサイケな1枚だ。ヒット曲「サンフランシスコの夜(San Franciscan Nights)」とか、「グッド・タイムズ」とか、ローリング・ストーンズの「黒くぬれ(Paint It Black)」のカヴァーとか、ジミ・ヘンドリックスに捧げた「イエス、アイ・アム・エクスペリエンスド」などアルバムの全11曲に加えて、ブリッグズのファズ・ギターとワイダーのヴァイオリンが強烈な印象を残したシングル曲「若い思い出(When I Was Young)」や、LSD絡みの「僕のサンドーズ(A Girl Named Sandoz)」など、アルバム未収録のシングル音源をボーナス追加している。
ディスク2は1968年の『野性の若者たち(The Twein Shall Meet)』。前作と同じくトム・ウィルソンのプロデュースの下、サイケ路線にプログレッシヴな味もまぶした傑作だ。シタールなども導入してモンタレー・ポップ・フェスティバルでの経験を描いた「モンタレー」や、サイケな反戦歌「スカイ・パイロット」などが収められている。アルバム全8曲に加え、その2曲のシングル・モノ・ヴァージョンもボーナス収録。
1968年には、なんと、あと2枚のアルバムをアニマルズはリリースしているのだけれど。そのうちのひとつ、『エヴリ・ワン・オヴ・アス』の全7曲に、シングル・カットされた「白い家(White Houses)」のシングル・ヴァージョンをボーナス追加したのがディスク3。ここからオルガンとピアノのズート・マネーことジョージ・ブルーノが加入した。ぐっとシンプルなバンド・アンサンブルに立ち返り、初期のR&Bっぽさとこの時期のサイケっぽさとがうまい具合に融合した1枚。なのに、なぜだか英国ではリリースされずじまいだった。
その後、ズート・マネーのバンド仲間だったギタリスト、アンディ・サマーズがブリッグズに代わって参加。この新ラインアップでやはり1968年に録音されたアナログLP2枚組が『愛(Love Is)』。アイク&ティナ・ターナーの「リヴァー・ディープ・マウンテン・ハイ」、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの「アイム・アン・アニマル」、ジョニー・キャッシュの「リング・オヴ・ファイア」、トラフィックの「カラード・レイン」、ビージーズの「トゥ・ラヴ・サムバディ」、フェントン・ロビンソンの「時は流れて(As the Years Go Passing By)」などを大胆なアレンジで聞かせたこのアニマルズのラスト・アルバムをまるごと収めたのがディスク4。
で、ディスク1に入っていた『サンフランシスコの夜』のモノ・ヴァージョンがディスク5。すべてオリジナル・マスター・テープからの新リマスタリング。ボーナス収録のシングル・ヴァージョンのリマスターに関してもすべてオリジナル・マスターが使われていて、それは今回が初なんだとか。国内盤もあります。
このあと、エリック・バードンはウォーの結成を経て、ソロ時代へと向かうわけですな。そこからもまたいいっすよねー。