フロム・ウィジン・マリン/グリーン・リーフ・ラスラーズ
なんだか株とかも巻き込みつつ世界的に凄まじいことになってきちゃって。ワールドワイドな後手後手状態というか。あわあわ状態というか。最終的には個人個人がしっかりしないと…ってこと。たった今、ボブ・ディラン来日公演中止のお知らせも…(涙)。仕方ない。こういうときこそ、慌てず、基本に立ち返って、WHOが避けるよう提言しているものを改めて眺めておきましょうかね。
水泳プール、ジム、レストラン、レストランのメニュー、公共のウォーターサーバー、ショッピングカート、ハンドドライヤー、ソープディスペンサー、ホテルの部屋、エレベーターのボタン、公園、ショッピングモール、携帯電話、タッチスクリーン、銀行のATM…。
気をつけろと言われても困るものも含まれているけれど。これからはマスクどころか手袋も必須みたいな? まあ、びくびくしすぎて暮らすのも身体によくなさそうなので、ポジティブに、でも細心の注意を払いつつ、明るく過ごしましょう。
というわけで、今日も楽しい音楽をご紹介。グラム・パーソンズ〜フライング・ブリトー・ブラザーズ的なカリフォルニア系コズミック・カントリーというか、サイケデリック・カントリー・ロックというか、そういった味と、グレイトフル・デッドのアシッド感とが合体したような、なんとも魅力的なグリーン・リーフ・ラスラーズのアルバムです。
この人たち、ブラック・クロウズ〜クリス・ロビンソン・ブラザーフッドのクリス・ロビンソンが言い出しっぺとなって2017年に結成されたバンドで。クリス(ギター、ヴォーカル)と、マザー・ヒップスのグレッグ・ロヤコーノ(ギター、ヴォーカル)がフロントを張って、デヴィッド・ネルソン・バンドやムーナリス、フィル・レッシュ&フレンズあたりでよくタッグを組んでいるピート・シアーズ(ベース)、ジョン・モロ(ドラム)、バリー・スレス(ギター、ペダル・スティール)がバックを固める編成。
クリスが思いつきで始めた、趣味性の高い、カヴァー曲中心のプロジェクトって感じだけれど。取り組み方はマジ。本気度高し。ほとんど北カリフォルニア周辺を離れることなく、ローカルなライヴ活動を行なっているようだけど。旧世代のロック・ファンだけでなく、けっこう若い世代のリスナーにも注目されて、大いにマニアックな人気を博しているらしい。ということで、ついに彼らのアルバムが出た。
結成後、わりと間もない2018年3月、カリフォルニア州ミルヴァレーのスウィートウォーター・ミュージック・ホールでライヴ録音されたもの。デッドの一連のサウンドボード・レコーディングを手がけてきたことでおなじみの女性エンジニア、ベティ・カンター・ジャクソンが録音を担当しているのも、なんかいい感じ。オーディエンス用のマイクとか立てていないようで、歓声がうすーく入っているだけなのがまた、ブートレッグのサウンドボードものを聞いているような気分にさせてくれて(笑)。楽しい。
いきなりグラム・パーソンズの「ビッグ・マウス・ブルース」でスタート。続く「グルーヴ・ミー」はグレッグ・ロヤコーノがリード・ヴォーカルをとるオリジナル。ライヴでの人気曲らしい。「ノー・エクスペクテーションズ」はもちろんローリング・ストーンズの『ベガーズ・バンケット』からの選曲。オリジナル・ヴァージョンで聞けるブライアン・ジョーンズのスライド・ギターの感触をしっかり受け継ぎつつトゥワンギーな気分を演出するバリー・スレスのペダル・スティールが印象的だ。
アシッドでサイケなジャムを挟み、ジョニー・キャッシュの「フォルサム・プリズン・ブルース」とアーサー・ビッグボーイ・クルダップ〜エルヴィス・プレスリーの「ザッツ・オールライト」というサン・ロカビリー系の楽曲がメドレーで披露される。なんともモーダルな展開がやばい。そして、タウンズ・ヴァン・ザントの「スタンディン」から、ボブ・ディランの「寂しき4番街(Positively 4th Street)」、ウェイロン・ジェニングスの「ランブリン・マン」、J.J.ケイルの「ライド・ミー・ハイ」へ…。
文句なし。カントリー〜ロカビリー〜フォーク・ロック〜カントリー・ロックの往年の名曲群を素材にアシッドなジャム感覚でよみがえらせる、みたいな。「寂しき4番街」とか、クリス・ロビンソンならではのはかない切なさみたいなものも漂って、なかなかしみる仕上がりだ。
過去のライヴのセットリストとか見ると、他にもマール・ハガード、ジョージ・ジョーンズ、グレイトフル・デッド、ダグ・サーム、ザ・バンド、スティーヴ・ヤングなどの曲とか取り上げているようで。このプロジェクト、現在も続いているのかどうかわからないけれど、もし続いているのならば、ぜひとも生で体験したいものです。フィジカルはアナログのみ? だとしたらそれも潔いっすね。