カラー・セオリー/サッカー・マミー
本ブログは、だいたい基本的に平日の午前中に更新することにしているのだけれど、定期的な通院の日だったもんで、今日は午後の更新です。病院ってもともとマスク着用度が高いところなので、見た目、あまり変わった感じはないものの。なんとなく空気感はいつになく重いような…。プラシーボかもしれないけど(笑)。
待合室に設置してあるテレビからは変わらず新型コロナ情報の洪水。介護の現場の混乱ぶりとか、瀬戸際はいつなんだとか、自粛の是非とか、次々と流れていて。でも、患者さんたちはそういうのに特に目を向けるでもなく、なんとなくやり過ごしていて。病院だからってわけじゃなく、なんだかみんな疲れてきちゃってるのかなぁ、と。
当初1〜2週間くらい様子を見ろと言っていたお国のほうからは、さらに“おおむね10日程度”はこれからもおとなしくしてろと“要請”されてしまい。この辺に関するぐったり感も並じゃない。憤りもいろいろあるけれど。やり場のない怒りを覚えて精神的に疲れるのがいちばんやばい気がするので、今のところは何でもいいからブライト・サイドに目を向けて、できるだけ楽しく、ふんばりましょう。
てことで、今朝、病院で順番待ちしながらそれなりに楽しく聞いていたのが、これ。歌詞は重め。でも、音は楽しい。サッカー・マミーことソフィー・アリソンのセカンド・アルバムだ。前作、2018年の『クリーン』同様、ゲイブ・ワックスがプロデュース。ナッシュヴィルにあるブラッド・ジョーンズの“アレックス・ザ・グレイト”スタジオでのレコーディングされている。
ソフィーさんは1997年生まれ。現在22歳だ。で、今回のアルバム、ジャケットも含めてサウンド面では彼女なりの1990年代ノスタルジーがベーシックになっているらしい。自分が子供のころに親しんでいた音楽が輝きを失いつつあることへの危機感のようなものを反映しているのだとか。
まあ、もともとノスタルジーというのはきわめてヴァーチャルなもので。世代それぞれ。全世代共通の絶対的ノスタルジーとかあり得ない。そういう意味では1997年生まれの女の子にとってのノスタルジーとか言われても、現在60歳代で、1990年代以降は全部“最近”(笑)みたいな日々を生きるぼくには共感しようもないのだけれど。
それでも、何かを懐かしむことと背中合わせに存在する何らかの“傷み”には、世代の違いを超えて心を動かされる。『カラー・セオリー』というタイトル通り、本作は大きく3つの色に象徴されるテーマ分けがなされていて。ひとつが悲しみの“ブルー”。病の“イエロー”。そして喪失感の“グレイ”。
音に関しては先述の通り、どこかナインティーズのインディ・ロック的な感触に貫かれたポップなアプローチが聞かれるのだけれど、これまた先述した通り、歌詞的にはけっこうヘヴィ。ダーク。自身が思春期から抱えてきたメンタル・イルネス、心の病のようなものも反映されているし、病を象徴する“イエロー”という語をタイトルに含む7分超の先行トラック「イエロー・イズ・ザ・カラー・オヴ・ハー・アイズ」では、末期がんで闘病を続ける母親との関係が綴られていたりもする。
アルバム全体に彼女が散りばめたノスタルジアは、背中合わせに存在する現在進行形の“傷み”とあいまって、彼女が向かうべき未来を予見させる、みたいな? よくわからないけど。とにかく、そんなふうに時間軸が幾重にも折り重なりながらうねっている感触には世代を超えてちょっと惹きつけられます。