グラデーション・ワールド・ライヴ/リクオ
相変わらず全国を駆け巡りながら熱いライヴ活動を続けるリクオ。ぼくは行けなかったのだけれど、つい先日も東京公演があって、大いに盛り上がったみたい。年齢を重ねて、キャリアを重ねて、ますます太く、確信に満ちた歌を放つようになってきたようで。なんだか、とても頼もしい。
そんな彼の最新ライヴ・アルバムが出た。2019年7月21日、東京・代々木のザーザズーでレコーディングされた1枚。去年リリースされた新作スタジオ・アルバム『グラデーション・ワールド』発売記念スペシャル・ライヴの模様が収められている。現在のバック・バンド“ホーボー・ハウス・バンド”を率いてのパフォーマンス。コーラスに真城めぐみ、途中からキーボードに『グラデーション・ワールド』のプロデュースを手がけた森俊之も参加。ストリーミング配信/ダウンロード販売という今どきな形態でのリリースだ。
時には、あまりにもまっすぐなメッセージにたじろがされるものの、そのある種赤裸々なまでのストレートさと、ピアノ弾きならではの洗練されたコード進行やテンション・ノートを適度に交えた切ないメロディラインとがいい案配に絡み合って、なんとも独特の世界観を編み上げる…と、それがリクオの、特に近年のごきげんな持ち味。
スタジオ・ヴァージョンでは、正直、少しコンパクトに“おさまりすぎ”ているかな、と感じた楽曲も、ライヴではいい感じに荒れて。曲の魅力がよりダイレクトに伝わってくる気がする。ライヴに定評があるだけに、この人、これまでにも少なからずライヴ盤を出してパフォーマーとしての実力をアピールしてきたのだけれど、今回のやつもかなりいい仕上がりだ。
『グラデーション・ワールド』の収録曲はもちろん全曲披露。新曲「酔いどれ賛歌」も含まれている。そこに必殺の「ソウル」をはじめ、「雨上がり」「アイノウタ」「ミラクルマン」といった過去の楽曲が挟み込まれる構成。
始まってすぐ、2曲目に前作『ハロー』からの「永遠のダウンタウンボーイ」が歌われるのもうれしい。最近のリクオの楽曲には、かつてぼくたちの心を躍らせた日本のポップ・ミュージックたちからの名フレーズが意図的に織り込まれ、ポップ・シーンの縦軸のようなものを感じさせてくれることが多いのだけれど、その代表的存在とも言える1曲で。
♪僕らは歳をとり世界は変わったけれど/終わらない想いを隠して生きてくなんて/悲しいことだろう?
言葉として見ると、いやいやいや…と腰が引けそうなメッセージではあるけれど、リクオの迷いのない歌声で、しかもライヴで突きつけられると、ああ、そうかもね…と、ふと納得してしまうから不思議だ。『グラデーション・ワールド』の「千の夢」で歌われる“悩み続ける運命なら/ロックンロールで悩もう”というフレーズも素直にぐっときます。青い気持ち、ちょっとだけ思い出します(笑)。