Disc Review

Jazz Workshop, Boston, MA, May 15,1973 / Return To Forever (Floating World)

ジャズ・ワークショップ、ボストン、マサチューセッツ 1973/5/15/リターン・トゥ・フォーエヴァー

まあ、時にはいろいろ突っ込まれることもなくはない人ではありますが。スティーヴ・ガッド。でも、大方の音楽ファン同様、ぼくはこの人のドラムが大好きで。ガッド・ギャングとか、近年のエリック・クラプトンとの活動とかも含めて、聞くたびにノックアウトされる。

もちろん、近年のチック・コリアとのプロジェクトもごきげん。『チャイニーズ・バタフライ』とか、けっこう楽しんだ。1976年の『妖精(The Leprechaun)』とか、1978年の『ザ・マッド・ハッター』や『フレンズ』での共演も好きだった。エディ・ゴメスとガッドという組み合わせが当時やけに新鮮だった。ガッドの奥深い魅力を知ることができた。チック・コリアのおかげだ。

レコーディングされた音源としては、たぶんそのあたりがいちばん古いものになるのかな。ただ、コリアとガッド、二人の付き合いはもっと昔、1960年代からで。昨日今日じゃない、そのあたりのコンビネーションが確認できる1970年代前半のライヴ・アルバムを今朝はピックアップしてみます。去年の10月だったか11月だったかに出た盤だけど、この1月末にBSMFから国内盤が出たので、そのタイミングでのご紹介。

『チャイニーズ・バタフライ』でもコリアの往年の名曲「リターン・トゥ・フォーエヴァー」を再演していたけれど。ご存じの通り、その曲をタイトルに冠して1972年にリリースされたチック・コリア名義のアルバムをきっかけに誕生したスーパー・フュージョン・グループがリターン・トゥ・フォーエヴァー。そこにスティーヴ・ガッドが在籍していたときの貴重な記録だ。

そのコリア名義のアルバム『リターン・トゥ・フォーエヴァー』をバンドとしてのファースト・アルバムでもあると解釈すると、同じ1972年暮れに録音された『ライト・アズ・ア・フェザー』がセカンド・アルバムで。当時のメンバーはチック・コリア(ピアノ)、スタンリー・クラーク(ベース)、ジョー・ファレル(サックス)、アイアート・モレイラ(ドラム)、フローラ・プリム(ヴォーカル)。そこから、セカンドの完成後、ファレル、モレイラ、プリムが相次いでバンドを離脱。代わりにビル・コナーズ(ギター)、ミンゴ・ルイス(パーカッション)、そしてスティーヴ・ガッド(ドラム)を迎えて第2期リターン・トゥ・フォーエヴァーが誕生した。

この新編成で1973年5月、ボストンの名門クラブ“ジャズ・ワークショップ”に出演した際のライヴ音源を記録したのが、本作『ジャズ・ワークショップ、ボストン、マサチューセッツ1973/5/15』だ。ラジオ放送用の録音ということで、過去、アンオフィシャルな形で世に流通してはいた。けど、今回はオフィシャル・リリースだ。めでたい。

このあと、1973年夏にリターン・トゥ・フォーエヴァーはサード・アルバム『第7銀河の讃歌(Hymn of the Seventh Galaxy)』を録音することになるのだけれど、そのころにはガッドとルイスが早くも脱退。レニー・ホワイト(ドラム)が後任に就く。なので、ガッド入りのリターン・トゥ・フォーエヴァーの正規音源は本ライヴ盤でしか今のところ聞けない、と。そういうことになる。(追記:…とか、朝に書いたら、すぐお昼にソニーの鮎澤さんから、1996年、オフィシャルにリリースされたCD2枚組『Return to the Seventh Galaxy: Anthology』にガッド+ルイス入りの音源が収められているとのご指摘が! チェックしてみたら、ほんと、ロングアイランドのクワイエット・ヴィレッジで収録された「スペイン」など3曲の未発表ライヴ音源が入ってるじゃないですか。聞き逃していた。ちゃんと聞かなきゃ…)

セカンド収録の代表曲「スペイン」や、ファーストのB面まるごと使っていた「サムタイム・アゴー」など、ラテン色濃い初期レパートリーをロック色を強めた新編成で熱く聞かせている。サード・アルバムの表題曲のガッド・ヴァージョンも興味深い。

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