Disc Review

Wild Kingdom / Hot Club Of Cowtown (Gold Strike Records)

ワイルド・キングダム/ホット・クラブ・オヴ・カウタウン

今月の25日、CRT&レココレのイベントが20周年を迎える。毎月1回ずつのトーク&レコード・コンサート・イベント。みなさんの温かい応援、会場であるロフトのスタッフのみなさんの協力、および能地プロデューサーのがんばりのおかげで20年続けてこられました。ありがとうございます。

今となってはもう信じられないことだけれど、20年前、日本の音楽シーンでは“カントリー・ロック”というジャンル自体、なんだかすっかり忘れ去られている感じだった。当初はレココレ誌に特集をお願いしても断られる、みたいな(笑)。海外ではオルタナ・カントリーとか、ルーツ・ロックとか、今で言うところのアメリカーナ的な音楽の萌芽とか、いろいろ盛り上がりつつあったところで、そういう新しい動きと70年代のカントリー・ロックとがシンクロするようにして存在感を発揮していたにもかかわらず、だ。

ということで、もっと多くの日本のリスナーにそうした新旧カントリー・ロックの魅力が伝わればいいな…と、ワーナー、ソニー、ユニバーサル、東芝EMI、ポリドール、マーキュリー各社の協力を得ながら“カントリー・ロックの逆襲”なるコンピレーションCDシリーズをリリースしたり、佐野元春&ザ・ホーボー・キング・バンドやラスト・ショウら意識的な日本のミュージシャンのみなさんとコンサートを開催したり。その流れで並行してスタートしたトーク&レコード・コンサート・イベントが“CRT(カントリー・ロッキン・トラスト)&レココレ・プレゼンツ…”だった。

で、いろいろ曲折を経ながらの20年。感慨深いです。なので、20周年記念でもある25日のCRTでは最新のカントリー・ロック周辺の話題はもちろん、20年前の“逆襲”シリーズのことなども振り返りながら、あれこれ素敵な音源を聞きまくりたいなと思ってます。ご興味ある方は、PCでご覧の方は右のサイド・バーを、スマホの方は下に掲載してあるCRTのインフォメーションを、あるいはネイキッド・ロフトのスケジュール・ページなどをご参照のうえ、ぜひ参加してください。

振り返ってみると、あの当時オルタナ・カントリー周辺のシーンでもっともいきいきと存在感を発揮していた連中が、ウィルコであり、サン・ヴォルトであり、スティーヴ・アールであり、ルシンダ・ウィリアムスであり、オールド97’sであり、ウィスキータウンであり…。

とともに、ぼくが大好きだったバンドのひとつが今日の主役、ホット・クラブ・オヴ・カウタウンだ。真っ向からのカントリー・ロックというよりも、この人たちの場合はウェスタン・スウィングというか、ホット・ジャズというか。まあ、“ホット・クラブ”を名乗っていることからもわかる通り、ジャンゴ・ラインハルト&ステファン・グラッペリの影響を色濃くたたえつつ、ボブ・ウィルズやスペイド・クーリーの伝統をもひょうひょうと受け継ぐ連中で。

ホイット・スミス(ギター)、エラナ・ジェイムズ(フィドル)、ジェイク・アーウィン(ベース)の3人組。CRTが立ち上がるちょっと前くらいにデビューしているから、彼らももう20年選手だ。いいおじちゃん、おばちゃんになりました。途中、2005年にいったん解散して、エラナさんがボブ・ディランのツアーに参加したり、ソロ・アルバム出したり、別トリオを結成したり、フジ・ロックで来日したり、で、数年後に再結成したり…。なんだかぬるぬると活動を続けている感じ。それもまた、力が抜けてて、この人たちらしくてよいです。

今年の1月に出たザ・バンドへのトリビュート・アルバム『クロッシング・ザ・グレイト・ディヴァイド』に続く本作は、たぶん11作目。全曲カヴァーだった前作と違い、ホイット・スミスとエラナ・ジェイムズによるオリジナルでほぼ全編を固めた1枚だ。といっても、この人たちの場合、オリジナル曲とていい意味で既視感ばりばりであることが重要な魅力というか、必要不可欠な要素のひとつだったりもするわけで、そのあたりの感触は今回も外していない。カントリーとジャズがごきげんに交錯する佳曲ぞろい。中には5拍子でスウィングする、ちょっとだけ小洒落た曲があったりもするけれど、まあ、その程度。

1曲好きだったら全曲好き、1曲聞いてピンとこなかったら全曲アウト…みたいな、そういうアルバムです(笑)。お試しください。数曲収められたカヴァーの中では、ラストの「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」がごっきげん!

動画はエラナさんのオリジナル「マイ・キャンディ」。このアルバムのオープニングを飾っているドラム+ピアノ入りのスタジオ・ヴァージョンではないのだけれど、子供がわーいわーいと暴れまくる昼間の屋外ステージで、アルバムのオープニング・チューンを3人だけで楽しげに演奏している映像があったので、そっち貼っておきます。

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