Disc Review

Titanic Rising / Weyes Blood (Sub Pop)

投稿日:2019.04.09 更新日:

TRising

タイタニック・ライジング/ワイズ・ブラッド

この人、1980年にアサイラムからアルバム出していた5人組、サムナーの中心メンバーだったサムナー・メーリングの娘さんなんだってね。知らなかった。びっくり。サムナーっていかにも80年代初頭の西海岸っぽいニューウェイヴ・ポップ・バンドで、あんまり売れなかったみたいだけど、「レディオランド」って曲とかそれなりに楽しんで聞いていた覚えがある。まあ、近ごろはその存在自体、すっかり忘れてましたが。

と、そんな娘さん、ナタリー・メーリングによるプロジェクト、ワイズ・ブラッドの通算4作目をご紹介。サブポップ移籍第一弾だ。ファーザー・ジョン・ミスティ、ホイットニー、レモン・ツイッグズなどとの仕事でもおなじみ、フォクシジェンのジョナサン・ラドーが共同プロデュースを手がけている。

ぱっと聞き、メーリングが紡ぐ美しいメロディも彼女の端正な歌声も、実にオーソドックスな60年代後半〜70年代ミドル・オヴ・ザ・ロード系ポップのようでいて、背後に横たわる音像の作り込み具合がなんとも絶妙。ピッチをあえて揺らしたハーモニーとか、ブライアン・ウィルソン的な意外性に満ちたベース・ラインとか、ダークな奥行き感とか、ノイズっぽいアプローチとか、様々なトラップが、ジミー・ウェッブ〜ヴァン・ダイク・パークス〜バート・バカラック的なアンサンブルのそこかしこに巧妙に仕込まれていて。

70年代のローレル・キャニオン系シンガー・ソングライターものを聞いているような気分になったと思ったら、アンビエントものの音渦のただ中に身を置いている気分になったり、グリニッチ・ヴィレッジのコーヒーハウスでフォーク・ブルース味わっている気分になったり、オルタナなチェンバー・ポップっぽいムードに突入したり、ベルリン時代のデヴィッド・ボウイを彷彿させたり、レディオヘッドみたいだったり、ビートルズみたいだったり…。

そのあたりの感触をメーリング本人は「ザ・キンクス・ミーツ第二次世界大戦、あるいはボブ・シーガー・ミーツ・エンヤ」と、うまいこと表現しいるようなのだけれど。オルガン、ストリングス、シンセ、スライド・ギターなどがさりげなく、けれども軽い異化効果をもたらしながらアルバムの中で交錯して、とにかくひとつのジャンルにくくれない、いろいろな意味で浮遊感に満ちた音世界を編み上げている。

構成力、半端なし。そんな中、愛のややこしさを歌うねじれたサンシャイン・ポップって感じの「エヴリデイ」が超絶、好きです。

子供のころ見た『タイタニック』という映画の物語、あるいはそれが下敷きにしている史実の向こう側に見え隠れする、なんとも割り切れない真理のようなものに対する独特の眼差しに貫かれた1枚。レモン・ツイッグズ、ブレイク・ミルズ、クリス・コーエンら興味深い顔ぶれもゲスト参加。CGなし、真っ向から人力で水中撮影したというアルバム・ジャケットもすごい。お父さんの往年のアー写もぼんやり写ってます。

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