Disc Review

Tin Can Trust / Los Lobos (Shout! Factory)

ティン・キャン・トラスト/ロス・ロボス

企画ものではないオリジナル・アルバムとしてはけっこう久々かな。ロス・ロボスの新作。レコード会社を移籍してのスタジオ・アルバム通算14作目です。

米アリゾナ州の移民法とか。メキシコからの移民をめぐる人権問題みたいなやつに関して議論が沸き上がっているわけですが。イーストLAのチカーノたちも厳しい不景気にあえいでいるようで。当然、ロス・ロボスの新作もそうした空気感を如実に反映した歌詞を多く含んでいる。アルバム・タイトル曲「ティン・キャン・トラスト」の歌詞には、2着で2ドルの安物シャツを着て空き缶集めに精を出しながら日々をやり過ごしている男の姿が描かれているし。他の曲でも、女に裏切られてずたずたになって逆ギレする男が出てきたり、トラブルまみれの現実のもとで不運や憎悪に懸命に立ち向かおうと抗う男が出てきたり…。

でも、そういうときでもロス・ロボスは下を向かない。「ティン・キャン・トラスト」の主人公は、そんなハードな現実のもとにあっても、惚れた女に“俺には金もない。ダイアの指輪も買えない。でも、男にしかもたらせないものをお前にやるぜ”とぶちかましてみせる。“お前にやれるもの、それは愛だけだ”と。いぇいっ! やー、ロス・ロボスのメンバーの風体と併せて味わうとさらにぐっときます。

こんな時代だからこそラティーノとしての自分たちのルーツを今いちど見つめ直すべきだとメッセージしているような曲もあるし、明るいストリートを歩いていると同じルーツを持つ仲間たちが俺の憂鬱を吹き飛ばしてくれると歌う曲もあるし、スカッとぶっとばすごきげんなギター・インスト曲もあるし。ロックンロールとラティーノ音楽とを絶妙に融合してみせる手腕も相変わらず、さすがって感じ。やっぱりいいよね、ロス・ロボス。スーザン・テデスキも1曲参加。

このところ、エルヴィスのFTD盤とかチャーさんの通販ものとか、アマゾンで扱ってない盤の紹介が多かったけれど。これはアマゾンでも普通に売ってます。なのでインスタントストアのほうにものっけときました。興味のある方はぜひ。あと、CRTの告知も更新してます。次回はガーシュイン&ウィルソンがテーマ。ゲストは高田漣くんです。iPhoneとか携帯でブログを読んでくださっている方も、お時間のあるときwebでアクセスして左の告知欄、チェックしてみてください。

あと、その直前、8月16日にお茶の水のウッドストック・カフェでエルヴィス・プレスリーをテーマにしたイベントもやります。詳細はこちら。定員15人って規模みたいなので、けっこう密度の濃いイベントになりそう。CRTともども、よろしければご予約を。

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