ベルリン〜ライヴ・アット・セント・アンズ・ウェアハウス/ルー・リード
輸入盤はちょっと前に出ていて。国内盤は来年早々のリリース。紹介のタイミングがちょっと間抜けになっちゃいましたが。最近よく聞いているので、今日はこいつを。ニューヨークに行ってきたせいすかね。お調子者ですいません(笑)。
ルー・リードが73年にリリースしたものの、セールス的に大失敗に終わり、以降演奏を封印していた伝説のアルバム『ベルリン』を2006年にステージで完全再現したときの記録。日本でも映画公開された、あれですが。映画の公開、DVDリリースに合わせて、ライヴCDも出ました。ブライアン・ウィルソンの『ペット・サウンズ・ライヴ』とか、なんとコンサートという場で初めて全体像を披露することになった『SMiLE』とか、ゾンビーズの『オデッセイ&オラクル』再現ライヴとか、この種の試みは近年やけに多いわけだけれど。
改めてずいぶんと多くのことを発見させてもらったという意味では『SMiLE』に近いかも。73年のオリジナル・アルバムで展開していた宿命の物語がより立体的に甦っていて。その底力を、改めて、というより、むしろ初めて思い知らされた気がする。ブライアンの『SMiLE』がシーンに受け入れられるるまで37年という歳月を必要としたように、『ベルリン』もまた33年という歳月が必要だったということか。完全“再現”とはいえ、音圧やアタック感は完全に今のものなわけで。このライヴ盤での音像こそが初めて世に現出した『ベルリン』の完成型なんじゃないかとさえ思える。
30年前はこっちの素養も心許なくて。何にもわかっちゃいなかったんだなぁ、と。またまた思い知らされました。何も知らないくせに、わかったような気分になって、いいの悪いの自分の中で勝手に決めつけちゃいけないっすね。若さの暴走は無知の暴走と裏表。このライヴ盤を聞いてからオリジナル・アルバムに立ち返ってみると、一音一音にこめられていた意味のようなものが、別の表情をたたえながら匂い立ってくるようで。くらくらする。