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Disc Review

Failer / Kathleen Edwards (Zoe)

フェイラー/キャスリーン・エドワーズ

更新しなかった期間、最長記録かも。楽しみにしてくださっている方、すみませんでした。なにせ趣味のホームページなもんで。年度末~新年度は、いくらぼくのようなフリーランスとはいえ、けっこうばたばたしちゃいますね。たくさん「早く更新せいっ!」というお叱りのメール、いただきました。お返事、全然書けませんでしたけど、お気持ち、ありがたく頂戴しました。

つーことで、なんと今年いまだ2度目の更新です。前回の更新以来、戦争が始まっちゃったり、おかげで東京でのメジャーリーグ開幕戦がとんだり、メジャーリーグのインターネット画像中継に申し込んだらいつの間にか日本では見られないことになっちゃったり、桜もまだ満開にならないうちに六義園の夜間ライトアップ期間が終わっちゃったり、小林亜星の盗作に関する信じられないくらい稚拙な主張が裁判で通っちゃったり、現実的にはもはや何の効力もないことが証明されているはずのコピーコントロールCDが相変わらず大量に出回っていたり…。おっきいことからちっちゃいことまで、最悪の出来事が次々と起こっている。とんでもなく歪んだ時代に生きているんだなぁ、と実感するしかない昨今。

でも、いやな気分になったとき、ぼくはいつも大好きな音楽と野球で乗り切ってきたわけで。ロックンロールとベースボール。どっちもアメリカの象徴じゃん。やんなっちゃうね。ぼくが好きな文化って、映画とか文学とかも含めて、たぶん日本のことなんかまったく知らないか、興味ないか、いや、どっちかっていうと日本のことなんか嫌いだったりするやつらが作り上げたものなんだろうなとも、改めて思う。痛い。

とはいえ、好きなものは好き。仕方ない。同じアメリカン・カントリーの世界でも、トビー・キースみたいにブッシュの前で戦意高揚曲を歌っちゃうやつもいれば、ディクシー・チックスみたいに同じ国民としてブッシュを恥ずかしいと思うときっちり表明してえらい目にあっちゃうやつもいる。この一点にすがりつつ、相変わらず新譜を買いまくっております。そういえば、以前ここで取り上げたジェイソン・ムラーツ君、ここにきてようやく魅力が広まり始めたのか、ビルボード誌のヒートシーカーズ・チャートのトップ10についに突入です。うれしい。

で、今回のピック・アルバムの主役は、去年のSXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)でも話題になったカナダ出身、23歳の女性シンガー・ソングライターだ。2000年のEP盤に続いて、2002年にドメスティックにリリースされた本格デビュー・アルバムが、今年の1月、ついにインターナショナル向けにディストリビュートされた。ってことで、早く紹介したかったんだけど、なかなか更新ができなくて(笑)。ちょっと遅めのご紹介になってしまった。シンガー・ソングライター・ファンはもう愛聴しちゃっているかも。

ステイシー・アールとかルシンダ・ウィリアムスとかギリアン・ウェルチとか、このホームページでもよく取り上げてきたタイプの女性シンガー・ソングライターが好きな方には間違いなく楽しめる一枚だと思う。ほどよいルーツ味と、オルタナ・カントリー味とに彩られた内省的な歌声。シニカルな歌詞も胸を突く。サックスとかをバックに配したエッジ感あふれる楽曲もあるけれど、やはり耳を引きつけるのはより淡々と、メランコリックに展開するアコースティック曲たち。70年代に次々登場した先輩シンガー・ソングライターたちを思わせる手触り満載ながら、どこか90年代のインディーズ系ロック・アーティストたちにも通じる独特の諦観のようなものも漂っていて。面白い個性だ。

スローンを送り出したハリファックス周辺のシーンで活躍するスターリングのメンバーなども参加しており、カナダのポップ・シーンの躍動感を伝えてくれる。

その他、久々の更新なので最近お気に入りの盤をさらにふたつほど―― 

Now And Again / Jim Kweskin Band (Bix Streets)

for Record Collectors Magazine (revised)
 ジム・クウェスキン。この人はぼくにとってある種の恩人だ。ぼくにとってフォーク/ブルースの最良の紹介者になってくれた人。ジム・クウェスキン&ザ・ジャグ・バンドがトラディショナルなフォークや戦前ブルース、スタンダードをカヴァーしまくった63年録音のファースト・アルバムを、高校生のころ小川町のハーモニーってレコード屋さんで後追いで買って。聞きまくって。そのひょうひょうとした感覚にやられて関連音源を集めまくって。すっかりその道にハマった。まあ、有名無名含めて昔の名曲を発掘し、さほど大きくアレンジすることなく聞かせてくれるクウェスキンの場合、自作自演でなきゃ一段下…みたいな誤った見方が定着してしまったビートルズ以降のポップ・シーンでは評価の対象になりにくかったわけだが。でも、メンフィス・ジャグ・バンドやガス・キャノンやミシシッピ・ジョン・ハートやチャック・ベリーやペギー・リーなど縦横無尽にカヴァーしまくったこの人がいなきゃ、ぼくがその種の過去の名作群に出会う時期はもっと遅くなっていたはず。

 と、そんな紹介者だったクウェスキン。いまだ同じ姿勢のまま活動を続けていて。すでに40年選手。今や彼自身がある種のルーツ・ミュージックへと達した感も。このほど出たジム・クウェスキン・バンド名義の新作“Now And Again”も、その名の通りかつて録音した曲のリメイクも含め、往年のフォークやスタンダードを軽やかに、アコースティカルにカヴァーした一枚だ。現在は建築関係の仕事をしているというクウェスキン。単独では心もとなかったか、サモア・ウィルソンって女性シンガーをフィーチャーしつつ、相変わらずひょうひょうとした個性を発揮している。感謝をこめて楽しみます。

Shawn Sahm / Shawn Sahm (Evangeline)

for Music Magazine (revised)
 エルヴィス・プレスリーの愛娘、リサ・マリーのデビューが、まあ、一部でそこそこ話題になってますが。こちらは、われらがテックス・メックス大将、故ダグ・サームの愛息の新作ソロ。海外では去年リリースされたものだけれど、このほど国内配給も決定。てことでご紹介です。

 あえて父親の影響を排除せんと奮闘するリサ・マリーとは対照的な仕上がりというか。80年代からサー・ダグラス・クインテットに加わり、父を背後から支えてきた孝行息子が、父の死という悲しみを超えて、大好きだったヘヴィ・メタルへの未練も捨て去り、雄々しく二代目を襲名する、と。そんな感動のドラマが全編を貫く1枚だ。もともと似てるんだし、尊敬もしてるんだから、親父から芸をまんま引き継いで何が悪い…という、まあ、志ん朝の心意気というか。うれしい一本立ちだ。

 バンドにはテキサス・トーネイドーズ人脈がずらり。オーギー・マイヤーズの息子、クレイも名を連ねる。オーギーとフラーコ・ヒメネスもゲスト参加。生前のダグの声も聞ける。自作曲中心だが、往年のダグのレパートリーのカヴァーや親子共作曲もあり。カントリー、ブルース、サイケデリック、テックス・メックスなど、父親のもとで培ったきわどい越境感覚が発揮された佳曲ぞろいだ。最初聞いたとき、アルバム冒頭では、ああ、これを親父さんが歌ったら…と余計なことを考えたものだが、中盤以降、そんな後ろ向きな思いも吹き飛んだ。リック・モンローへの提供曲の自演版「サスピシャス・アイズ」が必殺です。

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