Yeah, It's That Easy / G. Love & Special Sauce (Okeh/Epic)
かっちょいいね、相変わらず。
前作、セカンド・アルバムでちょっと一瞬停滞気味になったG・ラヴ君ですが。また復調してきたみたい。もちろん、あの、CD1曲目のドラムの音だけでもうぶっとんだファースト・アルバムの衝撃はないのだけれど。それでも、今回はぐっとノーザン・ソウル色を強めて、柔軟なところを見せる。
ポップ度をちょっと増しつつ、ファンキーさは失わずに、いい感じの仕上がり具合。やっぱりこいつはえらいね。見上げた若者だね。単なるレトロ趣味に終わらない“勘”のよさが魅力だ。
Sold Out / Squirrel Nut Zippers (Mammoth)
どこの雑誌にも書かなかったし、ここでもレビューしなかったし、年間ベスト10とかにも選んでいなかったけど、去年のぼくの愛聴盤のひとつだったのが、こいつらのセカンド・アルバム『Hot』。70年代にジム・クウェスキン聞いたり、マリア・マルダー聞いたり、ダン・ヒックス聞いたり、パサディナ・ルーフ・オーケストラ聞いたり……ああ、名前書いてるだけで懐かしくなってきちゃったけどさ、つまり、そういう、なんつーか、グッド・タイム・ミュージックっつーか、そのテの感触を持つ連中のアルバムを聞きまくっていたころの気分を思い出させてくれる、近ごろ得難いバンドです。
と、そんなスクォーレル・ナット・ジッパーズの最新盤は、間もなくリリースされるらしいサード・アルバムからのアウトテイクやら、ライヴやらを集めた限定盤だ。いちおう6曲入りだけど、シークレット・トラックとしていっぱい入っているので、見逃せないぜっ。サード・アルバムが楽しみだなぁ。今度はレビューしようっと。
Ink / Livingston Taylor (Chesky)
リヴの新作は大半がカヴァー曲。スティーヴィー・ワンダーの「イズント・シー・ラヴリー」、レイ・チャールズの「ハレルヤ・アイ・ラヴ・ハー・ソー」、クリス・モンテスの「モア・アイ・シー・ユー」、ジェリー・ラファティーの「霧のベイカー・ストリート」、ドン・ヘンリーの「エンド・オヴ・ジ・イノセンス」、ジャクソン・ファイヴの「ネヴァー・キャン・セイ・グッドバイ」などなど、とにかくこういうのをリヴがリヴならではの調子でカヴァーしている、と。そう聞いて、おおっ、と思う人にのみおすすめしたい佳盤です。
ケニー・ランキンみたいな感じだね、つまり。なごむよ、これは。
Turbosherbet / Willie Wisely (October)
去年の暮れにこちらでも取り上げたミネアポリスのポップなシンガー・ソングライター、ウィリー・ワイズリーのセカンド。前回取り上げたときはまったく素性がわからなかったのだけれど、その後いろいろ集まった情報によると、地元では“ダブル・ダブリュー”などと呼ばれて、けっこうクロート筋で評価されている人みたい。特にソングライターとしての才能に注目が集まっているとのこと。
そういえば、やはり去年、ここで取り上げたザ・ビーティフィクスのクリス・ドーンとはルームメイトだって。面白いね。
で、この新作。ぐっとソリッドなセンスを増した感じかな。近ごろ話題のパワー・ポップ人脈の重要人物としてもぐっとクローズアップされそうな仕上がりだ。初期のハニードッグズなどのプロデュースも手がけていたオクトーバー・レコードのジョン・ストロベリー・フィールズがプロデュース。サンプリングだとは思うけど、ドカドカッとしたドラム・フィルと同時にハープが流麗に鳴り響いたり、面白いアイデアも随所に。
Transplanting / Elaine Summers (Loosegroove)
去年のアルバム年間ベスト10にも選んだピート・ドロージ&ザ・シナーズの紅一点メンバーによるソロ・アルバムだ。プロデュースはピート・ドロージが担当している。
全曲、彼女の自作。なかなか泥臭く、ブルージーな曲を書く。ざくざくっと重たいバックのサウンドもかっこいい。そして、ファンキーにしゃがれた彼女の歌声。聞かせます。メリサ・エスリッジから押しつけがましさを拭ったみたいな声、かな。ブルース、フォーク、そしてロックンロール。ごきげんな女性アーティストだなぁ。すごいや。
ピート・ドロージの新作も待ってます。
Demolotion / Umajets (Clearspot)
元ジェリーフィッシュのティム・スミスが元ホリーフェイズのロブ・アルドリッジと組んだバンド。ロジャー・マニング、エリック・ドーヴァーらの助けも得て、なるほどねー、やっぱり……というようなパワー・ポップを聞かせる。
B級っちゃB級。そんなに強い魅力を感じなかったのだけれど、なんだかこういう音楽って、あとになってから存在感を増してくることもあるからなぁ。どうなんでしょうか。などと言いつつ、けっこう愛聴している昨今です。国内盤はジャケットが変わっているので、ご注意を。
Chupacabra / Imani Coppola (Columbia)
シングルの「リジェンド・オヴ・ア・カウガール」が全米トップ40入りした新人女性シンガー・ソングライター。ちょっとひょうきんなラップなんかも大幅に交えて、イメージとしては女性版ベックって感じ?
ポップでハイパーな音作りを聞かせるのだけれど、サンプリングされているのがドノヴァンだったり、ドアーズだったり、ルビー&ザ・ロマンティックスだったり、なかなかやるね、おねーちゃん。と思ってクレジット見たら、昔、大好きだったディガブル・プラネッツと仕事していたマイケル・マンジーニのプロデュースでした。でもって、サビはきっちりポップなメロディを用意して。日本のFMで大いにもてはやされそうな1枚です。
ビョーク方面への目配りもあるみたいだけど、それは余計なんじゃないかと思います。
Songs And Sounds / Pat Dinizio (Velvel)
スミザリーンズのパット、初ソロ・アルバム。相変わらずエルヴィス・コステロっつーか、マーシャル・クレンショーっつーか、そういうのが好きなんだなぁって味がよく出てます。
とは言うものの、今回はバックをつとめる連中がすごいから。ストラングラーズのJ・J・バーネルがベース、ルー・リードんとこでやってるトニー・サンダー・スミスがドラム、ジャズの名プレイヤー、ソニー・フォーチュンがサックス。ジャズやファンクの要素も取り込みつつ、切れ味鋭いサウンドを作り上げている。
アルバムの冒頭とラストに、映画からのカヴァー曲を配しているのも面白い。まあ、バンドも解散して、離婚もして。そのせいか人間不信っぽい歌詞もなきにしもあらずだけれど。んー、がんばってほしいものです。なんだ、この締めは。
Phenomenon / LL Cool J (Def Jam)
実はこの人のアルバム、いつも「もうダメかもな」と思いながら買ってるんだけど。いまだにごきげんだねー。今回は元ニュー・エディション(あ? 今もあるのか?)のラルフ・トレスヴァントとリッキー・ベル、バスタ・ライムズ、キース・スウェット、レッドマン、メソッド・マン、ロスト・ボーイズなど、もう豪華な後輩を従えての1枚。貫禄だね、こりゃ。
どの曲も、リフといい、サビといい、かなりポップな仕上がり。個人的にはラルフとリッキーを迎えて、懐かしきニュー・エディション・ナンバー「キャンディ・ガール」を盛り込みながら進行する「キャンディ」です。俺も昔作ったことあったよ、「キャンディ」って曲。原田真二じゃないよ。なつかしのココナッツ・ボーイズですよ。
The Firm--The Album / NAS Escobar, Foxy Brown, AZ & Nature (Aftermath/Interscope)
ポール・ロジャースが出てくるのかと思ったら、違いました。すんごい顔ぶれが合体したスーパー・ヒップホップ・ユニット、ザ・ファームのアルバム。ぶっちぎりで11月8日付け全米アルバムズ・チャート初登場1位でした。なもんで、取り上げてみたんだけど。
まあ、これだけの顔ぶれが集まったうえにしかも、プロデュースはドクター・ドレ。かっこわるいわけがない。でも、あえて厳しく聞くとね、そんなに面白くないかもしれないよ、これ。今のヒップホップのおいしいところをちょっとずつつまんで全部盛り込んだだけみたいな。そんな感触もある。だから、そういうもんだと思って聞かないとキツイかも。そういうもんだと思えば、ばっちりです。
ぼくはそういうもんだと思えず、今いち乗り切れませんが。