Scouts Honor…By Way Of Blood / Rampage (Elektra)
バスタ・ライムズの従兄弟だよね。ずいぶん前にシングルがけっこうヒットして、アルバムも出るかと思っていたらその後音沙汰なし。どうなったのかと思っていたのだけれど、レーベルも移籍してようやくフル・アルバムが登場した。
バスタとかなり近いセンのラップを聞かせているので、バスタ・ファンには絶好の1枚だろう。実際、バスタ・ライムズが率いているフリップモード・スクワッドの面々(含・バスタ)がかなりの割合で登場しているから、ランページのソロ作というよりはフリップモード・スクワッドのアルバムといったニュアンスが強いのかも。
テディ・ライリーとドギー・ウィリアムスの共同プロデュースによる「ウィー・ゲッツ・ダウン」って曲、むちゃくちゃかっこええです。メロウな「コンカー・ダ・ワールド」、ドープな「テイク・イット・トゥ・ザ・ストリーツ」など、キャッチーな曲多し。
Supa Dupa Fly / Missy Misdemeanor Elliott (The Gold Mind Inc./East West)
ジョデシ、アリーヤ、MCライト、ジーナ・トンプソンなどなど、ここ数年、たっくさんのアルバムのクレジットでお目にかかるシンガー/ラッパー/ソングライター/アレンジャー/プロデューサーのソロ・デビュー盤。
さすが人脈はすごくて、バスタ・ライムズ、リル・キム、ダ・ブラット、アリーヤ、共同プロデュースも手がけているティンバランドなどなど、豪華なメンツが曲ごとにゲスト参加したバカ・ポップなヒップホップ・アルバムって感じ。さすが、テンポ感の設定とかばっちりで。遅すぎず、早すぎず。ごきげんなグルーヴだらけ。歌うようなラップするような、なんともぎりぎりの歌声もいいし。
適度にポップで適度にファンキー。いい仕事聞かせていただきましたって気分かな。ぶっこわれたところが少なすぎて、逆に物足りない感なきにしもあらずだけれど、まあ、贅沢な要求だね、それは。
Love You To Tears / The O'jays (Volcano/Global Soul)
エディ・リヴァート率いるベテラン・ヴォーカル・グループの新作。息子のジェラルド・リヴァートがレーベル・ヘッドをつとめるグローバル・ソウル/ヴォルケーノからのリリースだ。ジェラルドやキース・スウェットら、若い才能にプロデュース/ソングライティングをまかせ、かなり充実した1枚に仕上げている。
プロデュースする若者たちもオージェイズの伝統あふれる芸風に存分に敬意を表している感じで。いいあんばいで昔ながらのオージェイズの持ち味と新しいR&Bサウンドとが合体している。個人的な好みだと、ケニー・ギャンブル&レオン・ハフがプロデュースしていた時期の傑作群を別にすれば、いちばん好きなオージェイズのアルバムかもしれない。泣ける曲、いっぱいです。
歌、うめーよ、やっぱり。衰えません。
Come To The River / Terry Evans (AudioQuest)
ジョン・フォガティ、ライ・クーダー、ジョン・リー・フッカーといった連中のアルバムでバック・コーラスをつとめたりもしているごきげんなオヤジの新作。ぼくが知ってる限りではこれが3枚目のアルバムだけど。もっとあるかもしれない。
今回もライ・クーダー、ホルヘ・カルデロン、ヘンス・パウエルなどをバックに回してオリジナル曲はもちろん、ウィリー・ディクソンの曲やらペパーミント・ハリスの曲やら、渋い選曲でキメている。ドラムが前作のジム・ケルトナーじゃなくなっちゃったのは少々残念だけど、全体の手触りは変わらず。
とにかくライ・クーダー好きならチェックしとかんといかん1枚でしょう。独特のバウンド感がたまらんす。
David Ryan Harris / David Ryan Harris (57/Columbia)
元フォロー・フォー・ナウ。ディオンヌ・ファリスのアルバムで曲を共作したりプロデュースしたりしていたデイヴィッド・ライアン・ハリスのソロ名義での初アルバムだ。ブレンダン・オブライエンがスタートさせた57レーベルからの登場。
スティーヴィー・ワンダーからスライ、プリンス、オールマン・ブラザーズ・バンド、REMまでを分け隔てなく吸収したギタリスト/ソングライターとしての力量をとりあえずお披露目した1枚って感じ。スピーチのソロ・アルバムとかに共通した手触りを感じるなぁ。
ブレンダン・オブライエンのミックスのせいか、飾り気まるでなしの音像で。キャッチーさには徹底的に欠けるものの、レニー・クラヴィッツのファーストやベン・ハーパーの諸作にも通じる生な空気感が魅力的だ。まだよく聞き取れてないものの、歌詞のほうもかなり深そう。
Strangers Almanac / Whiskeytown (Outpost)
“ノー・デプレッションズ”誌の表紙にもなっている注目のオルタナ・カントリー・バンド。
どうもこれがサード・アルバムらしい。中心メンバーは、上のやつと似てるけど、デイヴィッド・ライアン・アダムズってヴォーカリスト/ギタリスト/ソングライター。まだ22歳だってことだけど、そうとう深いものを持ってます。若いころのジャクソン・ブラウンに似てるかな。いい意味での楽観主義的手触りも含めて、そんな感じ。
「16デイズ」「イン・タウン」など、見事なカントリー・ロック曲ぞろい。「エクスキューズ・ミー・ホワイル・アイ・ブレイク・マイ・オウン・ハート・トゥナイト」とか、タイトルもいいなぁ。やってくれます。メロウなソウル感覚も漂う「エヴリシング・アイ・ドゥ」って曲も好き。デイヴィッド・ライアン君、ソングライターとしてそうとうイケてるみたい。フィドルとヴォーカルを担当するケイトリン・キャリーってやつも重要な役割を果たしている。ギターのフィルなんとかってメンバーはストーンズが好きらしく、確かに曲によってはキース・リチャーズっぽいバッキング・フレーズが挿入され、それなりにサウンドを締めている。
まだ成長過程にあるバンドだとは思う。いい意味での荒っぽさを残したまま、どこまで可能性を広げていくか、今後が楽しみ。
Too Far To Care / Old 97's (Elektra)
インディーズからの2枚を経て、見事メジャー・デビューを飾ったダラス出身のオルタナ・カントリー・バンド。
ウィルコやサン・ヴォルトなど、内省的なアプローチが特徴のこの道の先達と比べるとかなり外向的というか(笑)。タイトにキメてます。リズム隊のドライヴ感が気に入ったぜっ。曲もポップ。まともなバラードはひとつもなし。リンク・レイあたりを思わせるギターのトワンギー感、リバーブ感もよいです。
ウィルコとかが主に精神性の面から従来のカントリーと一線を画しているのに対して、こいつらはドライヴ感とか音像自体のパワーで差別化をはかろうとしている感じかな。これはこれでありの方向性。ライヴ、やかましそうでいいです。
Homegrown / Blue Mountain (Roadrunner)
もういっちょ、オルタナ・カントリーもの。
こちらも新作をリリースしたらしいボトル・ロケッツと並ぶルーツ・ロック若手バンド(上で紹介したウィスキータウンも仲間だね)、ミシシッピー出身のブルー・マウンテンの新作だ。サン・ヴォルトのジョン・スターラットの妹のローリーちゃんがベースをやってることでもおなじみかも。ジョンさんも2曲ほどゲスト参加。兄妹ぐるみでオルタナ・カントリー・シーンを盛り上げようってことですか。いいね。
このテのバンドには珍しくギター、ベース、ドラムの3ピース。ヘタするとアナクロになりがちなアプローチを、中心メンバー、キャリー・ハドソンの乱暴なギター・サウンドがぶちこわしてくれる。ハドソンさんは曲作りの面でも大いに才能を発揮。カウ・パンクっぽい曲やザ・バーズっぽい曲も含めて、それなりにバラエティ豊かな仕上がりだ。フォーク・ロック的なアプローチが他のオルタナ・カントリー勢に比べて強いのもこいつらの特徴かも。
Transistor / 311 (Capricorn)
新生キャプリコーン・レーベルの看板スターとして、売れてるみたいっすねー。
ハイパー・メタル・レゲエ・トリップホップ……って感じかな。サブライムとかランシドとか、そういう連中の売れ具合も含めて、近ごろロック方面からのクロスオーバーは、もはやヒップホップをベースにするのではなく、レゲエ/スカをベースに行なわれているようだ。そういう意味では間違いなく旬なバンドなんだろう。
ちょっとヴォーカルの線が細いような気がして、今ひとつ思い切りハマりきることができないワタシですが。サンバ系フュージョン風味も取り込んだアルバムのラスト・チューン「スティーリング・ハッピー・アワーズ」のコズミックなムードは面白かった。これならヴォーカルが細くても違和感なし。ただ、このラインだったらフィッシュマンズにかなわないか。
Pup Tent / Luna (Elektra)
ギャラクシー500が分裂してできたかたっぽ、ルナの新作だ。ギャラクシー500の再評価ムードが高まる中、絶好のタイミングでのリリースって感じ。
熱心なファンには怒られそうだけど、ぼくの場合、どっちのバンドも“ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの現在形”っぽい乱暴な捉え方をしてしまっているので、今回もそういう気分で聞きました。ドラムが変わったみたいで、それがいい効果を上げている。混沌とした手触りは減ったかもしれないが、ビートにのっかって舞うギターとかシンセとか、そうした上ものの存在感がむしろ増した感じ。
しかし、ここでもリンク・レイっぽいトワンギー・ギターの伝統がばっちり生きていて。リンク・レイって凶悪ギタリストがアメリカのポップ・シーンに残した遺産は、まじ、でっかいんだなぁってことを再確認です。