
ボールド・アズ・ラヴ(デラックス・ボックスセット)/ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス
今朝も箱、いきましょう(笑)。
ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスはご存じの通り、バンドとして稼働中にたった3作のオリジナル・アルバムしか残さず解散してしまったわけだけれど。
1967年5月のファースト『アー・ユー・エクスペリエンスト?』でその画期的な才能を轟音爆裂パワー・トリオ・サウンドでお披露目し、続く同年12月リリースのセカンド『アクシス:ボールド・アズ・ラヴ』でジャズやR&Bなどの伝統も的確に継承したソングライターとしての優れた資質を思い知らせ、翌1968年の2枚組『エレクトリック・レディランド』で最先端的録音技術を最大限に駆使しながらとてつもなく完成度の高い壮大な音宇宙を構築してみせた、と。そういう流れ。
そんな歩みの中間地点にあたるセカンド・アルバムの拡張ボックスです。4CD+ブルーレイ・オーディオの5枚組。CD1がオリジナル・アルバムのステレオ版の最新リマスター。CD2がモノ版最新リマスター。CD3と4が別ヴァージョン、未発表スタジオ・テイク、デモ音源、ライヴ、テレビ出演時音源など40トラック(うち27曲だか28曲が初出みたい)。で、ブルーレイ・オーディオにオリジナル・アルバムのステレオ/モノ両ヴァージョンのハイレゾ、およびドルビー・アトモス・ミックス。
『アクシス:ボールド・アズ・ラヴ』は、エンジニアのエディ・クレイマーが4トラック・マルチ・レコーダーと最先端のコンソール卓を導入したことで、スタジオ録音ならではのエフェクトがぐっと強化されるようになった1枚で。ジミ本人もこのときから自らフェーダーを積極的にいじり倒すようになったらしく。テープ逆回転、ステレオ・パニング、フェイジングなどが多用されている。オーヴァーダビングもふんだんで、曲によってはジミさんのプレイが3人分折り重なっていたり。
そういうぐるぐる感が『アクシス…』最大の魅力だったりもするわけだけど。7〜8年前に、アナログ・プロダクションズのステレオ&モノ・マスターでの再発があったとき、ハイレゾ音源をゲットして聞いて。実はモノ版のほうにハマり直したものです。多彩なエフェクトに惑うことなく、ジミヘンのソングライターとしての有能さとかヴォーカリストとしてのソウルフル感覚とか、そういうものをまっすぐ堪能できる気がして。「雨を望めば(One Rainy Wish)」とか、ヴォーカルが真ん中にいるだけでけっこう落ち着くもん。まあ、このアルバムで落ち着いちゃっていいのかどうか、それは確かに微妙ですが(笑)。
だから今回もCD2、よく聞いてます。もちろん最大の目玉はCD3と4で。実験精神に満ちた制作過程を追体験できる。作曲とサウンド・デザインが同時並行。互いを刺激し合いながら、あの独特の音世界を生み出していく様子には興奮するばかり。このセッションであれこれ試行錯誤が繰り返された後、アルバムへの収録は次作に先送りされた曰く付きのシングル曲「真夜中のランプ(Burning of the Midnight Lamp)」もオリジナル・モノ・ミックスはもちろん、別テイクとか、オケとか、ライヴとか、いろいろ入ってます。
今回新たにエディ・クレイマーも関わりながら作られたというドルビー・アトモス・ミックスはまだ体験してないけど。きっとものすごくぐるぐるしてるんだろうなぁ…(笑)。


