
オネスト・ダラー(エクスパンデッド・エディション)/NRBQ
われらが“Q”。NRBQ。何度も日本にやってきてくれて、そのたび毎回大いに盛り上がって。この人たちのライヴを生で体験することができたのは本当に幸運だったなと思う。心から思う。
昔からよく耳にしていたフレーズに、“NRBQの魅力はライヴを見なきゃわからない”というのがあって。まあ、これ、どのバンドに対しても大方当てはまっちゃう、ある種ありきたりなフレーズだったもんで。そう言われるたび、そうなのかなぁ、レコードでも十分楽しいけどなぁ、と軽く聞き流していたものだ。
けど、1996年だっけ? 渋谷ON AIR WEST で彼らの初来日ステージに接して、いやいやいやいや、その通り、と。まじ、こいつら、ライヴ見ないとわからん、と思い直したものです。テリー・アダムスのやばさ満点、アナーキーなまでの多様性にくらくらしたっけ。むちゃくちゃ盛り上がった。
ただ、すでにアル・アンダーソンが脱退したラインアップでの来日で。もちろんその穴をスパンピナート兄弟ががっちり埋めた感じのステージもそれはそれで本当にごきげんだったのだけれど。ああ、それだったら、アルさんがいたときのライヴも見てみたかったなぁ…と複雑な気分を抱いたことも確か。
なもんで、来日後に出た東京公演のライヴ盤とともに、併せてよく聞いた彼らのライヴ・アルバムが1992年、まだアル・アンダーソン在籍時のパフォーマンスをけっこう雑にコンパイルした感じの『オネスト・ダラー』で。なんとこのほど、そのデラックス・エディションなるものが、ジャケットを替えて、ボーナス音源を追加して、リマスターされて、ライナーも新調して、オムニヴォア・レコードから再発されました。これはうれしい。
1986〜1991年、12ヵ所の会場で収録されたライヴ音源集。といっても、数ある音源から選りすぐられた…という感じでもなく、けっこうヴォーカルが音程外していたり、ギターもピアノもミス・タッチとかしていたり、そういう音源を、平気平気、別に関係ねーよとばかり、豪快に…というか、テキトーにというか、気楽に寄せ集めた感じの仕上がりで。実にNRBQらしい1枚だ。
「ライディン・イン・マイ・カー」「ワッキー・タバッキー」をはじめとするQのオリジナルが半分くらい。残りがカヴァーで。これがまたごきげん。ジョン・セバスチャンをゲストに迎えて、彼のハーモニカをフィーチャーしつつ披露したラヴィン・スプーンフルの「ロンリー(エイミーのテーマ)」とか、レン・バリーの「1-2-3」とか、サッチモの「ザ・ダミー・ソング」(なぜか2ヴァージョン)とか、ご存じ「バットマンのテーマ」とか、おなしみのスタンダード「嘘は罪」とか、お得意の全方位カヴァー。カール・パーキンス作品の歌詞を半分くらいテリーが勝手に替えながらシレッとカヴァーした「テネシー」とかも楽しい楽しい。
今回の再発にあたって、デューク・エリントンの「ロッキン・イン・リズム」と、フェビアンの「ターン・ミー・ルーズ」をカヴァーしている未発表ライヴ音源がボーナス追加されてます。
ちなみにオリジナル・リリース時、話題になったサイン入り1ドル紙幣がランダムに入っているという企画は、今回はないみたいです。そりゃそうだ。