
ラスト・ミズーリ・エグジット/ケイス・オーツ
ウィルコのジェフ・トウィーディをあれこれサポートしてきた息子さん、スペンサー・トウィーディの婚約者でもあるシンガー・ソングライター、ケイシー・ゴメス・ウォーカーを核に活動するオルタナティヴ・カントリー・バンド、ケイス・オーツ。
ケイシー(ヴォーカル、アコースティック・ギター)とスペンサー(ドラム)の他、マックス・スーバー(ギター、ペダル・スティール)、スコット・ダニエル(フィドル)、ジェイソン・アッシュワース(べース)、ノーラン・チン(キーボード)という編成で。
結成はイリノイ州シカゴ。古いおうちの地下室で3日間で録ったというファースト・アルバム『ラスト・ミズーリ・エグジット』が出ました。なんだかウィルコの『ビーイング・ゼア』とか、あのあたりのアルバムが出た時期のことをふっと思い出させてくれるような1枚です。プロデュースはスペンサー。
アルバム・タイトルはケイシーさんが2013年、故郷のミズーリ州を離れて、大学に通うためにシカゴへと移住する際、車で移動中にミズーリとイリノイの州境手前で見かけた標識の言葉だとか。新たな場所での日々の始まり、子ども時代から大人時代への一歩など、いろいろなことが象徴されているみたいだけど。それだけにアルバム全体がケイシー・ゴメス・ウォーカーというシンガー・ソングライターの成長の記録という手触りの仕上がり。
自身のティーンエイジャー時代をけっこう赤裸々に振り返っていたり、スピリチュアル方面に深くはまり込んでしまった友だちについていろいろな後悔を綴っていたり、飛行機を盗んだカップルが湖に墜落して女性のほうが死亡してしまった物語を描いていたり。真摯な告白から、友だちどうしの会話みたいなものまで、多彩なテーマをケイシーは独特の子どもっぽい声で歌っていく。そのさまがなんとも沁みます。
アコギを軽く掻き鳴らしながら、“知らないことだらけだったね/家に帰るとき車でレースして/目を閉じて地獄を探して/死ななくてよかったじゃん…”とか歌う「セヴンティーン」とか、なんか、すごい。
“友だちを恋しく思ったっていいんだよ/実家のこととか、カウチで寝ているお父さんのこととか/私のこと考えてくれてもいいんだよ/あなたは大学を出て、きれいな顔で、広いおうちに住んでいる…”と、ライトなポップ・カントリー・サウンドでシニカルに歌い綴る「イン・ア・バンガロー」も、耳に残った。
ケイシーさん、どんなストーリーテラーに成長していくのかな。
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