Disc Review

You Can't Hip A Square: The Doc Pomus Songwriting Demos / Doc Pomus (Omnivore Records)

ユー・キャント・ヒップ・ア・スクエア:ザ・ドク・ポウマス・ソングライティング・デモズ/ドク・ポウマス

ノージくんから、こういうアルバムが出るらしいよ、というニュースを聞いて、さっそく予約。夏休み終盤、これ聞きながら楽しもうと目論んでいたリリース。ドク・ポウマスの生誕100年を記念して編まれたCD6枚組のデモ音源集です。

先週の金曜日、8月15日にリリースされたはずで、ストリーミングはめでたくスタートしているものの、注文したWebストアでは“お取り寄せ14日間”みたいなことになっていていまだ届かぬまま、お盆休みも終わっちゃう…という、なんとも悲しい状況(笑)。当然、充実した内容だと伝えられているブックレットも確認できてはいないのですが。でも、うれしいのでストリーミングで聞いているだけの状態でご紹介しちゃいます。

ドク・ポウマスのことは拙著『グレイト・ソングライター・ファイル〜職業作曲家の黄金時代』にも書かせていただいていて。プレイリストとかも作ったりしています。よかったらそちらも参照していただけるとうれしいです。

で、本作。今年春のレコード・ストア・デイにアナログ2枚組で限定リリースされた『ビバ・ドク・ポウマス:ソングズ・フォー・エルヴィス(ザ・デモズ)』もまるっと含まれたCD6枚組です。

生前、ドクが保管していた様々なシンガーへの提供曲のアセテート・デモを、娘さんのシャリン・フェルダーさんがしっかり受け継いで。その貴重な記録をシャリンさんと、音楽出版社ポウマス・ソングズのウィル・ブラットン、オムニヴォア・レコードのチェルシー・パウエルスキーの共同プロデュースの下、がっつりコンパイルしたボックスセットだ。アセテートからのレストアとマスタリングは、グラミー賞受賞エンジニアのマイケル・グレイヴスとジョーダン・マクロード。

メインのソングライティング・パートナーであるモート・シューマンがヴォーカルをとった音源が基本。その他、ドク本人が歌ったものや、後輩ソングライターにあたるニール・セダカ、エリー・グリニッチ、ケニー・ランキン、ピート・アンダース、トニ・ワイン、スコット・フェイガン、あるいは誰だかわからないデモ・ヴォーカリストたちが歌った音源など、楽曲の売り込み用のトラックを満載。スタジオで、あるいは自宅で、ピアノだけをバックに歌われていたり、しっかりバンドを伴っていたり、物によってはヴォーカル1本のアカペラだったり…。中にはホーム・パーティでの録音みたいなやつも含まれている。

ディオン&ザ・ベルモンツ「恋のティーンエイジャー(A Teenager in Love)」、ミスティックス「ハッシャバイ」、ドリフターズ「ジス・マジック・モーメント」、レイ・チャールズの「ロンリー・アヴェニュー」、そして「ア・メス・オヴ・ブルース」「キス・ミー・クイック」「マリーは恋人((Marie’s The Name) His Latest Flame)」「サスピション」などをはじめとするエルヴィス・プレスリーへの一連の提供曲など、しっかり世に出て大ヒットした曲もあれば、誰にも採用されず世に出なかった曲も。後に別曲へと発展するプロトタイプ的な音源もたくさん。

もちろんデモはデモ。大方、チープだったり、粗っぽかったりはするのだけれど。いろいろ発見が多くて、ほんと楽しい。宝の山って感じ。「父がよく言っていました。ヒット曲をたくさん出したソングライターに話を聞くと、彼らは必ず、そうしたヒット曲と同じくらい良い、あるいはそれ以上に良い出来なのに、何も起こらなかった他の50曲について話すものさ…と」というシャリンさんの言葉がしみます。

やはりとっかかりとしてはディスク5のエルヴィスへの提供曲集が特に面白くて。フェビアンの「ターン・ミー・ルーズ」ももともとはエルヴィスのために作られたものだったこともわかるし、映画『ラスベガス万才』のサントラに収められていたジャジーな「ひとりぼっちのバラード(I Need Somebody to Lean On)」のデモも聞けるし。

もちろん6CD全160曲以上をまとめた形での配信もあるものの、8月8日、一足先にCDボックスのディスク1〜4までをひとくくりにした『The Doc Pomus Songwriting Demos』(全111曲)ってのと、ディスク5の『Viva Doc Pomus: Songs For Elvis (The Demos)』(全31曲)と、ドクさんのブルージーなヴォーカルを全編でフィーチャーしたディスク6『You Better Believe It!』(CDは全23曲ながら、権利関係から配信では冒頭4曲を省いた全19曲)の3つに別れた形での配信もあり。

とりあえずストリーミングで聞き進めながら、ドクが生前に遺した様々な資料、アセテート盤や楽譜の写真、シャリンさんをはじめとする共同プロデューサーたちの他、ピーター・グラルニックなども執筆しているというライナーノーツなどを満載した48ページのブックレットを含むブツの到着を心待ちにするのでありました。

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