Disc Review

Now Would Be A Good Time / Folk Bitch Trio (Jagjaguwar)

ナウ・ウッド・ビー・ア・グッド・タイム/フォーク・ビッチ・トリオ

本日、朝日カルチャーセンターで“映画とボブ・ディラン”講座。例の映画『名もなき者』のこととか、いろいろお話しようと思ってますが。

あの映画とか見ていると、あの時代のフォーク・ソング至上主義の人とか、ほんとにピュアリストというか。アコースティック・ギターで奏でられるフォーク・ソングは真摯で、神聖で、しみじみ味わうべきもので、厳粛に考察されるべきもので…。なもんだから、もうビートルズ人気が世界的に爆発しているあの時期、1960年代半ばに、エレキはすべてを崩壊させるとか、堕落だとか真剣に信じ込んでいたわけで。

今もそういう人いるのかな? よくわかりませんが。もしいらっしゃったとしたら、このグループ名とか、絶対ありえないんだろうなー。

フォーク・ビッチ・トリオ。

オーストラリア・メルボルン出身。ハイスクール時代の友だちどうしだというハイド・ペヴェレル、ジーニー・ピルキントン、グレイシー・シンクレアからなる3人組で。2022年あたりからシングルのリリースを重ねてきて。ついに初フル・アルバムを届けてくれました。

ベッドルーム・ポップ的な音像の下で展開する沈静した透明な曲調と、繊細で思慮深い3声ハーモニーが素晴らしく。なるほど今どきのインディ・フォークだなー、とは思うけれど。この人たちは独特の切り口とシニカルなユーモア感覚とで、先述したような、フォークというジャンルが陥りがちなややこしい罠をするりとかわしてみせる、そのたたずまいがなんともかっこいい。

ジェンダーレスな価値観とか、性的な夢想とか、届かぬ思いとか、喪失感とか、そうした心の揺らめきをちょいクールな眼差しで皮肉まじりに綴っていく。bandcampの紹介文では、彼女たちの歌詞の世界観をメアリー・ゲイツキルやオテッサ・モシュフェグみたいな作家と重ね合わせていた。

生きることの儚さ、虚しさに押し潰されそうになりながら、でも、そういう孤独感をも共有する形で友だちと心から笑い合ったり、飽和した情報の荒海を巧みにすり抜けたり…。しなやかで、しかも、たくましい感じ?

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■8月4日はRITTOR BASEでサラウンド試聴イベント

■8月21日には池袋・新文芸坐で映画『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』上映後のトーク・イベント

■8月22日がCRTスティーリー・ダンまつり

■9月6日は湯浅学を迎えて早稲田大学エクステンションセンターで洋邦ノヴェルティ・ソング大特集…。

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