Disc Review

Love Forever: Demo Recordings 1966-1968 / Jackie DeShannon (Real Gone Music)

ラヴ・フォーエヴァー:デモ・レコーディングズ1966〜1968/ジャッキー・デシャノン

本ブログでもしつこく告知させていただいてきましたが。ちょっと前に『グレイト・ソングライター・ファイル〜職業作曲家の黄金時代』って本を出して。いろいろなソングライターのことをあれこれ書かせてもらったのだけれど。

本当はこの人のことも取り上げなくちゃなぁ…と思っておりました。ジャッキー・デシャノン。1944年、米ケンタッキー州生まれ。59年にシェリー・リー名義でデビューし、以降ジャッキー・ディー、ジャッキー・シャノンなど様々な名義でシングル・リリースを続けた後、60年にロサンゼルスへ。リバティ・レコードと契約しジャッキー・デシャノンと名乗って心機一転、新たなアーティスト活動へと一歩を踏み出した才女ですが。

彼女の場合、ヒットチャート上での初ヒットは1962年、ウェスタイ・スウィングの王者、ボブ・ウィリスの「色あせし恋(Faded Love)」のカヴァーだったし、翌年ヒットしたのもジャック・ニッチ&ソニー・ボノ作の「ピンと針(Needles and Pins)」だったし、代表曲として語り継がれているのは1965年に大ヒットしたバート・バカラック&ハル・デヴィッド作品「世界は愛を求めてる(What the World Needs Now Is Love)」だし…。

『グレイト・ソングライター・ファイル〜職業作曲家の黄金時代』での彼女の名前に触れたのはバカラック&デヴィッドの章でだけだったりして。すんません。

でも、ご存じの通り、ジャッキーさんはソングライターとしても実に優秀で。自作のヒットも「ウォーク・イン・ザ・ルーム(When You Walk in the Room)」とか、「恋をあなたに(Put a Little Love in Your Heart)」とか、「ベティ・デイビスの瞳(Bette Davis Eyes)」とか、他のシンガーが後から取り上げてヒットさせた曲も含めて名曲がたくさんある。

そういう意味では、結局フレッド・ニール作の「うわさの男(Everybody’s Talkin’)」とかバッドフィンガーのレパートリーをカヴァーした「ウィズアウト・ユー」だけで語られることが多いハリー・ニルソンとか、自身名義で放った最大のヒットがキャロル・キング作の「アップ・オン・ザ・ルーフ」だったりするローラ・ニーロとか。そういうシンガー・ソングライターたちと同じ感じで、ジャッキーさんもキャリアをまとめられちゃいがち。ファンとしてはちょっと寂しい。

でも、そんなジャッキーのソングライターとしての魅力を、また別角度から楽しませてくれるコンピレーションが出ました。それが本作『ラヴ・フォーエヴァー:デモ・レコーディングズ1966〜1968』だ。

アルバム・タイトル通り、1960年代後半、彼女がソングライターとして書いた曲のデモ録音集。ただ、デモとはいえ、簡素な弾き語りによる宅録音源集というわけではなく。さすがシンガーとしてもソングライターとしても多忙をきわめていた時期だけに、彼女が所属していた音楽出版社、メトリック・ミュージックの仕切りでちゃんとバンドを従えてスタジオ録音されたものが大半。当時はこういう音源をサンプル盤としてプレスして、様々なシンガーの事務所とかマネージャーとかに配布されていたらしく。そういう一般には非公開だったデモ・ヴァージョンが集められている。

ジョージ・ティプトンと共作した洗練の極みみたいなオーケストラル・ポップあり、フォーク・ロックあり、ポップ・カントリーあり、ファンキーなスワンプ・ポップあり、切ないバラードあり、サイケっぽいロックンロールあり…。

彼女がこのデモ録音の直後にリリースしたアルバム『ミー・アバウト・ユー』(1968年)とか『ローレル・キャニオン』(1969年)とかに収録されることになる名曲の初期ヴァージョンもあって興味深い。今回初お目見えのジャッキー作品もある。もちろん1994年に編まれたアンソロジーなど、いろいろな機会にボーナス収録されたような既出音源とかもあるものの、それも含めてこれはジャッキーのファンにとってはたまらないお宝音源集だ。

1960年代後半から1970年代にかけて彼女がリリースしたオリジナル・アルバム群とともに味わいたい1枚です。

created by Rinker
Real Gone Music
¥3,548 (2025/05/13 11:52:25時点 Amazon調べ-詳細)

Resent Posts

-Disc Review
-, ,