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Lucius / Lucius (Wildewoman/Fantasy)

ルシャス/ルシャス

ブランディ・カーライルらとともにジョニ・ミッチェルの復活ステージとかをばっちりサポートしていたことも印象的だったジェス・ウルフとホリー・レシングの二人に、ダン・モラッドとピーター・ラリッシュが加わったインディ・ポップ・バンド、ルシャス。彼らのセルフ・タイトルド・アルバム、出ました。

セルフ・タイトルド・アルバムというと、まあ、普通は『ザ・ドアーズ』とか『ザ・ストゥージズ』とか『レッド・ツェッペリン』とか『イーグルス』とか『ラモーンズ』とか『クラッシュ』とか、ファースト・アルバムでいきなりバンド名を名乗るものだけれど。中にはウィーザーみたいにジャケットの色を変えながら何度も出すパターンもあれば、フリートウッド・マックみたいにメンバーが変わってもう一回出し直すパターンもあり…。

でも、ルシャスの場合は、キャリア半ば。2009年の自主制作盤『ソングズ・フロム・ザ・ブロムリー・ハウス』から数えて5作目にして初のセルフ・タイトルド・アルバム。パターンとしては、9作目にして初めて『ザ・ビートルズ』(通称:ホワイト・アルバム)を出すとか、セカンド・アルバムで初めて『ザ・バンド』を出すとか、5作目で『メタリカ』を出すとか、そっち。

2023年にそれまで在籍したマム+バップ・レコードを離れてファンタジーと契約。シングル「ストレンジャー・デンジャー」をリリースして。さあ、続いて移籍第1弾アルバムも来るかな、と期待していたら。去年、新作ではなく、なんとブランディ・カーライルやマーカス・マムフォードを迎えて2013年の本格デビュー作『ウィルダウーマン』を再演したアルバムってのがまず番外編的に出て。それを挟んで今年、ようやく新作アルバムとして本作『ルシャス』が届けられた、と。

こうした流れを見ても、ルシャス、これまでの味もしっかり引き継ぎつつ、いい感じに心機一転したような。そういえばルシャスは、2018年に過去曲のアコースティック再解釈集『ヌーズ』をリリースした後も、デイヴ・コブとブランディ・カーライルのプロデュースによる『セカンド・ネイチャー』で一気にダンサブルな方向へと大胆に、堂々と飛躍してみせていたっけ。足下を見つめ直すことが次の一歩をより確かなものにするってことか。

バンドキャンプを見たら、本人たちのコメントが載っていて——

「私たちの4作目のスタジオ・アルバムは、バンドとして一緒にレコーディングし始めた当初の4人の姿そのものです。ここ数年、私たちは根を張り始め、人生のパートナーを見つけ、家族を築き、庭を育ててきました。犬も飼いました(よく耳を澄ますとバックに鳴き声が聞こえるかも)。人生と人間関係についての曲を書き、自宅スタジオでレコーディングしました。ダニーがプロデュースとミックスを担当しました。このアルバム制作を通じて、人生のサイクルの始まりと終わりを目撃し、人間の経験の美しさと脆さを感じました。だからこそ、今回のアルバムはセルフ・タイトルドがいちばん似合います。これは私たちの物語であり、今現在の私たちであり、ここに至るまでの道のりです。ようこそ、私たちのリヴィング・ルームへ」

ダン・モラッドのセルフ・プロデュースの下、ルシャスの4人を、マディソン・カニンガム、ソロモン・ドーシー、ドーズのテイラー・ゴールドスミス、イーサン・グルスカ、ロブ・ムース、ルーク・テンプル、パヴォ・パヴォのオリヴァー・ヒル、ウォー・オン・ドラッグズのアダム・グランデュシエルら音楽仲間がサポート。

アルバムを出すごとにいろいろな音楽性を取り入れながら新たな魅力を見せ続けてくれたルシャスだけれど。今回は前リメイク・アルバムともども、ポジティヴに原点回帰してみせた感じ。持ち前の実験的なアプローチはそのまま、人間関係の機微、愛と喪失、人生の喜びと悲しみなどを描いたパーソナルな歌詞世界と融合。ジェスとホリーの美しい二声ヴォーカルをフィーチャーしつつ、それをアコースティックとエレクトロニックと両者をナチュラルにブレンドした奥深い音像で包み込んで。

やっぱりこういうルシャスはいいっすね。沁みます。

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