
アウルズ、オーメンズ・アンド・オラクルズ/ヴァレリー・ジューン
今年のアタマ、日本でDVD化されたタイミングで本ブログでも改めて紹介したリトル・リチャードのドキュメンタリー映画『リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング』。
いろいろと印象的なシーンがありましたが。こりゃ大抜擢だな…と、けっこう驚いたのが、ヴァレリー・ジューンの登場。彼女がシスター・ロザッタ・サープの「ストレンジ・シングス・ハプニング・エヴリデイ」をカヴァーして歌ったシーン。絶妙に“今”と“過去”の橋渡しをしてくれたような感じで。かっこよかったなぁ。
と、そんなヴァレリーさんの新作。出ました。
ぼくがこの人の存在を知ったのは、オールド・クロウ・メディシン・ショウと共同名義でEPを出した2010年。その後、ブラック・キーズのダン・アワバックのプロデュースでメジャーからのファースト・アルバムをリリースしたりして、一気に気になる存在になったのでした。
その後、アルバムごとにマット・マリネリとか、ジャック・スプラッシュとか、プロデューサーを変えながらゆっくりリリースを重ねてきて。今回の新作では、なんとM.ウォードを起用。基本路線はこれまで通り、まあ、一言で言えば“アメリカーナ”ということになるのだろうけど。前述したロゼッタ・サープへのトリビュート・カヴァーとかを経たこともきっかになったのか、これまで以上にゴスペルっぽいというか。スピっぽいというか(笑)。歌詞も含めてそういう色合いを強めている感じ。
ベーシックなレコーディング・メンバーは、ジューンとM.ウォードがギターで、ドラムがスティーヴン・ホッジズ、ベースがカヴェー・ラステガー、キーボードがネイト・ウォルコットという5人編成。曲によってはウォルコット編曲によるホーン・セクションやストリングス・セクションが加わる。
ジューンとM.ウォードの二人で演奏している曲もあり、そこにバック・コーラスとしてノラ・ジョーンズを迎えた「スウィート・シングス・ジャスト・フォー・ユー」みたいなインディ・フォーク系あり、一人アカペラあり、ブラインド・ホーイズ・オヴ・アラバマを迎えた新型ゴスペルといった風情の「チェンジド」もあり。DJカヴェムが参加した「スーパーパワー」って曲では、数年前にヴァレリーが出した著書『Maps for the Modern World』に収められていた詩を朗読していたり…。
ブルース、ゴスペル、カントリー、インディ・フォーク、メンフィス・ソウル、ニューオーリンズR&B、ドゥーワップなど多彩なフォーマットを縦横に行き来しながらの全14曲です。