Disc Review

For Beginners: The Best of M. Ward / M. Ward (Merge Records)

フォー・ビギナーズ:ザ・ベスト・オヴ・M.ウォード/M.ウォード

ズーイー・デシャネルと組んだ男女デュオ・ユニット“シー&ヒム”の相方として、あるいはジム・ジェイムス、コナー・オバースト、マイク・モギスとと集ったスーパー・グループ“モンスターズ・オヴ・フォーク”の一員として、など多彩な活躍を続けるシンガー・ソングライターのM.ウォード。彼がソロ名義でマージ・レコードに残したオリジナル・アルバム群からセレクトしたベスト・アルバムが編まれた。

といっても、けっこう選定先のアルバムは限られていて。2003年の『トランスフィギュレーション・オヴ・ヴィンセント』から「ヴィンセント・オブライエン」「アンダーテイカー」「デュエット・フォー・ギターズ #3」「アウタ・マイ・ヘッド」、そしてデヴィッド・ボウイの「レッツ・ダンス」のなかなかに周到なアコースティック・カヴァーという5曲。このアルバムから選ばれた曲がいちばん多くて。

あとは、2005年の『トランジスター・レディオ』から「ララバイ・アンド・エグザイル」。2006年の『ポスト・ウォー』から「ポイズン・カップ」「マジック・トリック」「チャイニーズ・トランスレーション」「ローラーコースター」。2009年の『ホールド・タイム』から「フォー・ビギナーズ」と、ズーイーもコーラスで参加した「ネヴァー・ハッド・ノーバディ・ライク・ユー」、そしてタイトル・チューン「ホールド・タイム」。

これら13曲に、今回新録された初出曲をひとつ加えた全14曲で構成されているのだけれど。その初出曲が、なんとゴドレイ&クレームの「クライ」のカヴァー! なんともM.ウォードらしいセレクションだ。うれしい。オーストラリアの女の子3人組“フォーク・ビッチ・トリオ”のコーラスを従えて、またまたイマジネイティヴに聞かせてくれる。

新曲も旧曲も、シー&ヒムのときとかとはまたひと味違う、ベッドルーム・ポップっぽいローファイ感とオールディーズ好きならではのキャッチーなセンスとが交錯するインディ・フォーク・テイストに貫かれていて。収録曲は時系列に並んでいるわけではないけれど、むしろそうした行ったり来たりの構成によってM.ウォードという音楽家の曲作りの根幹みたいなものが明らかになっているような…。

まさに“フォー・ビギナーズ”。入門編として編まれた1枚なのだろうけど、彼の活動を追いかけてきたファンも、今、改めてその魅力を再認識するための1枚として、ぜひ。フィジカルはヴァイナルのみかな?

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