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Nothing But Pop File, vol.107: Won't you share with me a song, Al?

NBPファイル vol.107:アル・ジャーディン作品集

ビーチ・ボーイズのオリジナル・メンバーのひとり、アル・ジャーディンが8月末に新曲「ウィッシュ」をデジタル・リリースしました。

この曲、もともとは1990年代初頭、ブライアン・ウィルソンがビーチ・ボーイズと活動をともにしなくなっていた時期に書かれたもので。長年活動をともにしてきたのに、いろいろな事情から一緒にバンドができなくなってしまったブライアンのことを思って、さらには亡くなってしまっていたデニス・ウィルソンのことも重ね合わせた楽曲だったとのこと。

結成時、ビーチ・ボーイズの核を成していたウィルソン三兄弟のうち、当時バンドに在籍していたのは三男のカールのみ。長男ブライアンと次男デニスはもうバンドにいなかった。そんなふたりへのアルさんの思いがこの曲にはこめられている、と。曲を書き始めたころには健在だったカールもその後亡くなったことを思うと、ここには彼への思いも重ねられているのかも。

長いこと未完成のまま置かれていたのだけれど、アルさんのソングライティング・パートナーのひとり、ラリー・ドヴォスキンに背中を押されてようやく完成。今年の5月、アルさんがヴォーカルとベース、ドヴォスキンがコーラスとキーボード、テイラー・シンプソンがドラムという布陣でレコーディングされた、と。

“君たちが佇んでいるのが見える/太陽を浴びて笑いながら/ぼくたちはみんな若くて愛に満ちていた/君たちはまばゆいばかりの無垢さという贈り物をくれた/そのことにぼくは心から感謝している”みたいな歌い出しからして泣けます。“黒い鳥がそよ風に乗って飛んできて/君の愛を奪っていった/いつか戻ってくるのだろうか…”というフレーズもビーチ・ボーイズの歴史を知る者の胸をしめつけるフレーズだし。

そして大サビ、“今、君(たち)は自由になった/木に花が咲いた/また戻ってきて歌ってほしい/ぼくと歌を分かち合ってほしい/やり残した歌を/いつか太陽の下で/君(たち)はいつだってただひとりの存在”と歌われ、“君(たち)をまた取り戻したい/かけがえのない友よ/愛は永遠に終わらない…”というサビへ。

この曲から得られた収益の一部は“メイク・ア・ウィッシュ財団”を介してミュージケアーズに寄付される予定だとか。アルさんは他にも未発表のオリジナル曲があるのでそれを完成させて2010年のソロ名義による初スタジオ・フル・アルバム『ア・ポストカード・フロム・カリフォルニア』以来のセカンド・ソロ・アルバムを制作したい…とも。

さらには、最強のブライアン・ウィルソン・バンドを再編してツアーに出たいとも計画しているそうで。マイク・ラヴのビーチ・ボーイズが1960年代の作品を中心にライヴしているのに対し、1970年代以降のビーチ・ボーイズ作品をライヴで披露したいとも語っている。実現したら最高かも。

アルさんとは、2016年、彼がブライアン・ウィルソン・バンドの一員として来日した際、湯川れい子さんにお誘いいただいて、光栄なことにお食事をともにさせていただいたことがあって。アルさんもご夫妻、こちらも夫婦で。お寿司をいただきながら、いろいろな話を聞かせていただいた。

1966年の初来日のこととか、1970年代、ブライアンが本調子じゃなかった時期にアルさんたち他のメンバーがどんなふうに曲作りをしていたかとか、1979年のジャパン・ジャムの話とか、マイク・ラヴが引き継いでいるビーチ・ボーイズのこととか…。音楽の話だけでなく、日本食のこととか、国民皆保険についてとか、アメリカの政治のこととか、アルさんらしくとても穏やかに、理知的に、楽しく話してくれたっけ。こちらの話もしっかり聞いてくれて。いい人だったなぁ。

ちなみに、そんなアルさん。9月3日がお誕生日。めでたく82歳になられました。でも、新曲の歌声を聞けばわかる通り、まだまだ超お元気。ばっちり現役。これからも素晴らしい歌声でぼくたちを楽しませてほしいものです。

と、そうした気持ちもこめて、スロウバック・サーズデイ恒例NBPプレイリスト、今週はアル・ジャーディンさんにスポットを当てます。ビーチ・ボーイズで、あるいはソロで、アルさんがソングライターとして関わった楽曲群の中からぼくの好きなものをいつものように12曲、ピックアップしてみました。

1曲目に新曲の「ウィッシュ」を置いて。そのあとに思いつくまま、年代などかまわずランダムに並べてあります。他にも「コナ・コースト」とか「ビー・ヒア・イン・ザ・モーニン」とか、選びたかった曲もたくさんあるけれど。いつもの12曲リストってことで。ビーチ・ボーイズというとどうしてもブライアン・ウィルソン、あるいはマイク・ラヴにスポットが当たるわけですが。このツー・トップだけでなく、デニスがいて、カールがいて、そしてアルさんがいたからこそ、あの素晴らしいアンサンブルが生まれていたのです。誰ひとり欠けてもビーチ・ボーイズではない。そんなことを改めて確認するプレイリストとして、よろしければ、ふわっと楽しんでみてください。


Won't you share with me a song, Al?

App Icon Apple Music
  1. Wish / Al Jardine feat. Larry Dvoskin (2024)
  2. Lady Lynda / The Beach Boys (1979)
  3. At My Window / The Beach Boys (1970)
  4. Waves of Love 3.0 Ocean Mix / Al Jardine (2023)
  5. California Saga (On My Way to Sunny Californ-i-a) / The Beach Boys (1972)
  6. A Postcard From California / Al Jardine feat. Glen Campbell (2010)
  7. Good Time / The Beach Boys (1977)
  8. Don't Go Near the Water / The Beach Boys (1971)
  9. Wake the World / The Beach Boys (1968)
  10. Jenny Clover / Al Jardine (2021)
  11. Our Sweet Love / The Beach Boys (1970)
  12. And I Always Will / Al Jardine (2010)
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