ミルク・フォー・フラワーズ/H.ホークライン
ウェールズのシンガー・ソングライター、ヒュー・エヴァンスが“H.ホークライン”名義でリリースする5作目、出ました。2017年に前作『アイ・ロマンティサイズ』をリリースして。その後、かつてプライベートでもパートナーだったアルドゥス・ハーディングをツアー、レコーディング両面でサポートしたりしていたけれど。あれから6年。久々の新作だ。
ボーイ・アズーガ、スウィート・バブー、グループ・リスニング、ヤングハズバンドら、いつものウェールズ〜ロンドン周りのインディ・ロック仲間に加え、ティム・プレスリー、ジョン・パリッシュらが参加。プロデュースはこちらもかつてパートナーだったケイト・ル・ボンが引き続き手がけていて。さすがの、繊細で精緻なアンサンブルを提供している。
特に先行リリースされていたアルバム・タイトル・チューンを含む冒頭の2曲とか。ポップでけっこうゴージャスなサウンド・アプローチと、字面を眺めていてもさっぱり意味がわからない、なんとも不思議なイメージが連なる歌詞と、儚さをはらむエヴァンスの個性的な歌声と…。いろいろな要素が複雑に絡み合いながら、苦悩と優美さとが交錯する独特の世界観を演出している。
音だけ聞くと、おっ、トッド・ラングレン? とか一瞬思っちゃったりもする冒頭の「ミルク・フォー・フラワーズ」とか、歌詞の意味、全然わからないもんなぁ。意味なんかない、響きと異化効果に主眼を置いた言葉選びなのだろうけど。そのわからなさ加減と、わからないのになぜだか切なく胸にするっと入り込んでくる感触にむしろぐっと惹きつけられちゃう。
次の「プラスティック・マン」もキャッチーな音に乗せて“助けて、助けて…”とか繰り返しているし、終盤に入っている「モーストリー」って曲とか、優しい音像の中、“死にたい、死にたい、ハッピーに死にたい”とか繰り返してるし…。
海外のレビューを眺めていたら、“『サージェント・ペパーズ…』とパフューム・ジーニアスの間のどこかに着地している”みたいな表現があって。うまいこと言うなと思いました。アルバム・ジャケットも意味深。
国内盤も出るけど、ちょっと先、5月だとか。