Disc Review

The Teammates: Twenty Years of Making Music 1965-1985 / Dean Torrence & Friends (Omnivore Recordings)

ザ・チームメイツ:20イヤーズ・オヴ・メイキング・ミュージック1965-1985/ディーン・トレンス&フレンズ

ビーチ・ボーイズと並ぶ1960年代カリフォルニア・サウンドの重要な担い手、ジャン&ディーンのひとり、ディーン・トレンスが幅広い人脈を活かして実現した多彩なコラボレーション音源を新たにまとめた1枚。

ちょうど20年前の2002年、ヴァレーズ・サラバンド・レコードから同趣向の『ザ・ディーン・トレンス・アンソロジー:リジェンダリー・マスクド・サーファー・アンマスクド』という18曲入りコンピレーションが出たことがあったけれど。そのライナーを書いていたデヴィッド・ベアードが今回も監修を手がけており、音源的なダブリはほとんどなし。うれしい仕上がりだ。

内容をざっくり眺めてみると。まず、トラック1の“ザ・リジェンダリー・マスクド・サーファーズ”名義の「バイ・アワー・アルバム」は、ハリー・ニルソンの「バイ・マイ・アルバム」をちょっとだけ改作したもの。1996年に出たリジェンダリー・マスクド・サーファーズの『ジャン&ディーンズ・ゴールデン・サマー・デイズ』に「サンクス・フォー・バイイン・アワー・アルバム」という微妙に歌詞やテンポ感の違うヴァージョンが収められていたけれど、今回はそれとは違う未発表別ヴァージョンでの収録だ。1985年録音。

トラック2の「サマータイム・サマータイム」とトラック3「ザ・シーム・フロム・レオンズ・ガレージ」は1965年にブレアー・バード・レコードから“アワー・ギャング”名義でリリースされたシングルのAB面。A面はもちろんザ・ジェイミーズ、1958年のヒットのカヴァーだ。B面はディーンとゲイリー・ジークリーが共作したインスト。レオン・ラッセルのガレージで録音したものだとか。

トラック4「ルイジアナ・マン」はダグ・カーショウ作。彼が兄弟デュオ、ラスティ&ダグとして1961年に放ったカントリー・ヒットのカヴァーだ。ジャン&ディーンが1966年、ジャン・ベリーとジョー・オズボーンの共同プロデュースによるセッションで録音した未発表テイクだ。

トラック5「スノウフレイクス・オン・ラフィング・グレイヴィーズ・ウィスカーズ」は1967年に“ザ・ラフィング・グレイヴィー”名義でリリースされたシングルのB面曲。ラリー・ネクテルとジョー・オズボーンがプロデュースしたものだ。トラック6はそのA面曲、ビーチ・ボーイズ作品をカヴァーした「ヴェジタブルズ」。カウント入りの未発表別ミックスで収められている。この曲は2002年の『リジェンダリー・マスクド・サーファー・アンマスクド』にも入っていて、そちらもラフィング・グレイヴィーズ名義になっていたけれど、実際は1972年に“ジャン&ディーン”名義で出たテイクだったっけ。なんだかややこしい。

レッキング・クルーの一員としても知られるセッション・ギタリスト、マイク・ディージー絡みの人脈と組んだ“ロックスリー・ホール”名義の「ムーヴィング・デイ」(トラック7)と、“ホグファット・カンティーナ・シンガーズ&ベル・エア・バンディッツ”名義の「イッツ・ア・ビューティフル・デイ」(トラック8)は、それぞれ1969年と1972年に録音された未発表音源。ブルース&テリーと組んで1973年にレコーディングされたトラック9「ジャスト・キープ・イット・アップ」とトラック10「ラヴ・レイス」も未発表もの。

トラック11「恋する十代(A Teenager in Love)」、トラック12「瞳は君ゆえに(I Only Have Eyes for You)」、トラック13「ゲット・ア・ジョブ」、トラック14「ワン・サマー・ナイト」は、1981年に“ディーン・トレンス”名義で日本独自に出たLP『サーフ・シティー(Music Phase II 1977-1981)』に収められていた音源たち。トラック15「デッド・マンズ・カーヴ(ドクター・ランディ・ヴァージョン)」は1978年録音の未発表テイク。

マイク・ラヴと組んだ“マイク&ディーン”名義のトラック16「ビー・トゥルー・トゥ・ユア・バド(バドワイザー・ファイト・ソング)」は1982年、バドワイザー・ビールのCM用に制作されたプロモ・シングル音源。もちろんビーチ・ボーイズの「ビー・トゥルー・トゥ・ユア・スクール」の替え歌だ。

やはり“マイク&ディーン”名義のトラック17「ライトニン・ストライクス」、トラック18「ハー・ボーイフレンズ・バック」は1983年、アメリカの大手電気店チェーン“レディオ・シャック”でのみ買うことができるという触れ込みで制作されたミュージック・カセット『ロックンロール・シティ』絡みのセッションで録音されたもの。その後、アメリカではトラック19「アリー・ウープ」を加え『ロックンロール・アゲイン』と改題されLP化された。日本でもDJを入れた仕様で『リッスン・トゥ・ジ・エアー』なるタイトルの下、リリースされていた。

トラック20のクリスマス・ソング「ジングル・ベル・ロック」も同趣向。同年、ヒットバウンド・レコードからシングル・リリースされた音源だ。日本では“リッスン・トゥ・ジ・エアー”シリーズの一環として出た『ウィンター・パーティ・オン・ザ・ビーチ』 なるタイトルのLPに収められていた。

元タートルズのフロー&エディと組んでジャン&ディーン・クラシックスをカヴァーしたトラック21「太陽の渚(Ride The Wild Surf)」(1984年)、オープニングを飾っていたニルソン作品のさらなる改作にあたる“ザ・リジェンダリー・マスクド・サーファーズ”名義のトラック22「オーダー・マイ・アルバム」(1985年)、そしてマイク&ディーンがビーチ・ボーイズ作品をCM用にリメイクしたトラック23「ファン・ファン・ファン(コマーシャル)」(1985年)はいずれも未発表音源。

とか、いろいろ書いてますが。実はぼくの手元にまだブツが届いておらず、現状ストリーミングで聞いている段階。なので、詳しいデータはわかってません(笑)。申し訳ない。音源に関して勘違いとかあったらお許しを。ディーンへのインタビューを含むライナーとか貴重な写真とかが掲載されているブックレットがけっこう充実しているらしいので、正解はそちらを。早く届かないかな。楽しみ。ディーンが単にジャン&ディーンの片割れというだけの存在ではないことがよーくわかるうれしいコンピです。

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