Disc Review

Brother Johnny / Edgar Winter (Quarto Valley Records)

ブラザー・ジョニー/エドガー・ウィンター

エドガー・ウィンター、久々の新作だ。ソロ名義での最後のオリジナル・スタジオ・アルバムが2008年の『レベル・ロード』。そのちょっと後にスティーヴ・ルカサーと連名でライヴ盤『アン・オッド・カップル』を出したりはしていたけれど。スタジオ・アルバムとしてはこれが14年ぶりの1作ということになる。しかも、内容は実兄にあたる故ジョニー・ウィンターに捧げるトリビュート・アルバム。

2014年7月16日、ジョニー・ウィンターが他界したとき、すぐに何らかの動きがあるかなとは思ったものの。当時エドガーは、そんなにすぐ兄へのオマージュを企画することなどできないと表明。もちろん訃報の直後、各方面から追悼盤を出すべきだという企画が次々持ち込まれはしたらしいが、エドガーの気持ちは変わらず。とはいえ、もちろんいつかはトリビュート盤を作らなければと考えていたようで。自身のライヴでも、セットリストの最後をジョニーゆかりのレパートリーで締めくくってみたり。彼なりに気持ちの整理を続けていたようだ。

やがて、兄との悲しい別れからからも8年の歳月が流れて。周囲からの後押しもあり、エドガーはようやく兄ジョニーの歩みに改めて対峙し、それを心から讃えるトリビュート作品を完成させてくれた。しかも、ジョニーを愛する実に豪華な音楽仲間たちとともに、だ。

ジョー・ボナマッサ、ケニー・ウェイン・シェパード、ケブ・モ、ビリー・ギボンズ、デレク・トラックス、ジョー・ウォルシュ、デヴィッド・グリッサム、ジョン・マクフィー、スティーヴ・ルカサー、ドイル・ブラムホールII、フィル・X、ダグ・ラパポート、ウォーレン・ヘインズ、ロベン・フォードといった、幅広いジャンルからのギタリストたちはもちろん、マイケル・マクドナルド、リンゴ・スター、ボビー・ラッシュ、デヴィッド・キャンベル、先日他界したテイラー・ホーキンスら、多彩な顔ぶれが曲ごとにフィーチャーされている。フィーチャリング・アーティストとしてクレジットされてはいないけれど、さらにビル・ペイン、ドク・カプカ、ケニー・アロノフ、ワディ・ワクテルらも参加。

「ミーン・タウン・ブルース」「ロックンロール・フーチー・クー」「アライヴ・アンド・ウェル」「アイム・ユアーズ・アンド・アイム・ハーズ」「ゲス・アイル・ゴー・アウェイ」「ストレンジャー」「自滅的ブルース(Self-Destructive Blues)」といったジョニー自身、あるいはリック・デリンジャー作のオリジナル・ナンバーに加えて、チャック・ベリーの「ジョニー・B・グッド」、ローリング・ストーンズの「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」、ボブ・ディランの「追憶のハイウェイ61(Highway 61 Revisited)」、レイ・チャールズの「ドラウン・イン・マイ・オウン・ティアーズ」、パーシー・メイフィールドの「暗い苦しみの思い出(Memory Pain)」、ロバート・ジョンソンの「いい友だちがいるならば(When You Got a Good Friend)」といったジョニーのカヴァー・ヴァージョンでおなじみの十八番レパートリーもたっぷり含む選曲。

さらに本作のためにエドガーが新曲2曲を提供。ひとつは兄ジョニーの人生をジョニーの一人称視点で綴った「ローン・スター・ブルース」。これはケブ・モが客演したアコースティック・デルタ・ブルースだ。もうひとつはアルバムのラストを締めくくる「エンド・オヴ・ザ・ライン」。こちらは名匠デヴィッド・キャンベルのストリングスをバックに、エドガーがジョニーとの別れを切々と歌うバラード。

ジョニー活動後期の曲がまったく取り上げられていないのは、まあ、仕方ないのかな。後期のジョニー・ウィンターにも、まじ、いい作品、いいパフォーマンスは多かったので、そのあたりにももうちょいスポットを当ててほしかった気もするけど。でも、それはファンの贅沢かつ身勝手な望みか。その辺は抜きにしても、本作、これはこれで十二分に感動的な全17曲のトリビュート作です。ジョニー・ウィンターは永遠です。

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