コール・ミー・キング/サン・オヴ・デイヴ
クラッシュ・テスト・ダミーズ。うー、懐かしい。このバンド名をタイピングしたのは何年ぶりだろう(笑)。「ムムムム…」、流行りましたねー。ベックの「ルーザー」とかと同じころだったような。1994年くらい?
そのクラッシュ・テスト・ダミーズのメンバーだったのが本日の主役、ベンジャミン・ダーヴィル。2000年くらいまで在籍していたけれど、その後脱退。以降は“サン・オヴ・デイヴ”なるペルソナの下、強烈なブルースマンとして大活躍するように。片手でパーカッションを操り、もう一方の手でハーモニカとマイクを持って、吹いたり、ボイパしたり、ベース・ヴォーカル入れたり。でもってファンキーに足踏みして、それらすべての音をその場でサンプリング〜ループさせながらごきげんなベーシック・グルーヴを作り上げて、それに乗せてかっこいいパフォーマンスを展開し続けている。
そんなやばいおっさん、サン・オヴ・デイヴの新作アルバムだ。カヴァー・アルバムとかも含めて、これが通算10作目かな。日本でも2008年、『03』というタイトルの4作目(ややこしい)が別タイトルの下、DVD付きでリリースされたこともあったので、それでハマった方も多いことだろう。ぼくもそうでした。『ブレイキング・バッド』とか『トゥルー・ブラッド』とか『ゴシップ・ガール』とか『プリーチャー』とか、アメリカのドラマでよく音源が使われていることでおなじみかも。
この人、クラッシュ・テスト・ダミーズのメンバーだったくらいで、もともとはカナダ出身。その後、1998年に英国ロンドンに渡り20年ほどを過ごして、その間にジュールズ・ホーランドの番組に出てそれなりに話題を巻き起こしたりしていたこともあって、英国アーティストっぽいイメージも強いのだけれど。最近また、思うところあって祖国カナダに戻ったのだとか。そのおかげか、改めて初心に立ち返ったような仕上がりだ。
ちょいちょい曲によっては自分でもいろいろな楽器をダビングしたり、ホーンやメロトロンによるストリングス・アンサンブルなども導入しながらポップなアプローチに挑んだりすることもあるサン・オヴ・デイヴ。去年リリースした前作『コール・ミー・ア・キャブ』がそういう“間口広め”系のアルバムだったのに対し、しかし今回は真っ向からこの人ならでは、心の拠点とも言うべきブルースをあえて再訪した感触。
たぶん本人による演奏だと思われるドラムやギター入りの曲も含まれてはいる。ピアノ入りも2曲ほど。けど、音像の主役はあくまでこの人ならではの声とブルース・ハープと足踏みとパーカッション。かっこいい。
なもんで、ブルースにこだわっているといってもトラディショナルな様式美とかはぐっと薄め。ハーモニカのリフは確かにもろデルタ・ブルースって感じだけれど、歌詞的には、けっしてブルースの伝統に安易に引っ張られることなく今の時代ならではのメッセージを伝えているものもあるし。音像もファンキーで、スプーキーで、スモーキーで、アシッドで、サイケデリック。それでいてむちゃくちゃアーシーでルーツィ。今昔が躍動的に融合している。
ワイルドさやラフさと、音の積み方に対する緻密なノウハウ、クールなアレンジ力などが絶妙に入り乱れて。こりゃ、たまらない。ライヴで全曲見たいです。