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Disc Review

Just Coolin’ / Art Blakey & The Jazz Messengers (Blue Note)

ジャスト・クーリン/アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

2年近く前のことになるけれど。ぼくが編集長をつとめている無料のオンライン音楽雑誌『ERIS』の21号で、管楽器2本以上をフロントに立てたハード・バップ・ジャズのレギュラー・グループに関する特集記事を書いたことがあって。個人的に好きなグループ8つを紹介した。

まあ、誰もが大好きなマイルス・デイヴィス・クインテット——マイルス、コルトレーン、ガーランド、チェンバース、フィリー・ジョーという1950年代のクインテットも、マイルス、ショーター、ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウィリアムスという1960年代のクインテットも、これはもう殿堂入りってことで選外にして。

あと、とにかく2管以上という編成にこだわったので、管楽器がいないラムゼイ・ルイス・トリオとかザ・スリー・サウンズとかMJQとか、ワン・ホーンの山下洋輔トリオとかジョン・コルトレーン・カルテットとかウェザー・リポートとかも泣く泣く除外。

で、結果、紹介したのはアート・ファーマーとベニー・ゴルソンの双頭バンド、ザ・ジャズテットを筆頭に、ドナルド・バード/ペッパー・アダムズ・クインテット、ジャッキー・マクリーン/グレイシャン・モンカーⅢクインテット、日野皓正クインテット、キャノンボール・アダレイ・クインテット、ホレス・シルヴァー・クインテット、クリフォード・ブラウン/マックス・ローチ・クインテット、そしてアート・ブレイキー親分率いるザ・ジャズ・メッセンジャーズという8グループ。

どれもむちゃくちゃ好きなグループ。だけど、中でもぼくはブレイキーが、メッセンジャーズが大好きなのだ。ジャズ・メッセンジャーズだけは特別。ずいぶんレコードも買ったし、ライヴも見に行ったし。今でも大好きだ。ブレイキーが盟友ホレス・シルヴァーとともに初代ジャズ・メッセンジャーズを結成したのが1954年。以降、何度もメンバーチェンジを繰り返しながら、ジャズ界では珍しい長寿バンドとしてブレイキーが他界する1990年まで活動を続けた。

もちろん晩年のステージでは体力の衰えというか、聴力の衰えというか、いろいろな面でけっこうやばめの瞬間も多く、胸に痛かったのは事実だけれど。それでも最後までドラムという表現にこだわって、バンド・リーダーとしての責任を全うするみたいな姿勢には圧倒されたものだ。

多彩なメンバーが出入りしたメッセンジャーズだけれど、たぶんもっとも人気があるのは、やはりベニー・ゴルソンが音楽監督をつとめていた1958〜1959年のラインアップ、つまりリー・モーガン(tp)、ベニー・ゴルソン(ts)、ボビー・ティモンズ(p)、ジミー・メリット(b)、アート・ブレイキー(ds)という顔ぶれかな。アルバムで言うと必殺の『モーニン』とか、サンジェルマンでの伝説的ライヴ盤とかの時期。

ただ、ゴルソンがアート・ファーマーとジャズテットを結成するため1959年に離脱。以降、メッセンジャーズの音楽監督は当時注目の新進テナー・サックス奏者だったウェイン・ショーターが受け継ぐことになるのだけれど。その狭間、まだショーター加入前の1959年3月に実はすごいアルバムがレコーディングされていた。それが本作だ。

ここでゴルソンの代役をつとめたのは、ブレイキーがホレス・シルヴァーと初代ジャズ・メッセンジャーズとして活動開始したころのテナー・サックス奏者、ハンク・モブレーだ。ということで、モーガン、モブレー、ティモンズ、メリット、ブレイキーという、これもなかなか魅力的なラインアップが勢揃い。ブルーノート・レコードの定番スタジオ、ニュージャージーのルディ・ヴァン・ゲルダー・スタジオで6曲をレコーディングした。

なかなか魅力的な新曲揃い。モブレーも収録曲の半数の作曲も手がけるなど、代役とは思えぬ貢献ぶり。演奏も悪くない。なのに、これがなぜかお蔵入り。プロデュースを担当したのはブルーノートの創業者アルフレッド・ライオンで。彼が何をどう判断したのかはよくわからないのだけれど。

実はこの顔ぶれのメッセンジャーズは、翌月、ニューヨークの《バードランド》への出演が決まっていて。アルフレッド・ライオンはそちらをライヴ・レコーディングすることにしていた。このスタジオ・セッションで録音された曲も演奏される予定だったので、そっちのライヴ・パフォーマンスのほうがこのスタジオ・テイクよりタイトなものになるはず…と判断したのかも。

確かに、このスタジオ・セッション、昔からディスコグラフィに記録だけは掲載されていて。それによると、採用された決定テイクは、「ヒップシッピー・ブルース」がテイク14、「クローズ・ユア・アイズ」がテイク19、「ジメリック」がテイク5、「クイック・トリック」がテイク10、「M&M」がテイク15、表題曲「ジャスト・クーリン」に至ってはテイク21となっている。名手揃いだったとはいえ、けっこう苦戦した感じ、なきにしもあらず。

そんなこともあって、かっちりまとまった仕上がりを求めがちなアルフレッド・ライオンはいったん仕切り直し。《バードランド》でのパフォーマンスをアルバム『アット・ザ・ジャズ・コーナー・オブ・ザ・ワールド Vol. 1 & 2』としてリリースし、こちらのスタジオ録音をお蔵入りさせた、と。まあ、そんなところか。

ただし、『アット・ザ・ジャズ・コーナー…』のほうのセットリストに加わったのは「ヒップシッピー・ブルース」「M&M」「ジャスト・クーリン」という3曲のモブレー作品と、スタンダード「クローズ・ユア・アイズ」の計4曲だけ。それ以外の、「ジメリック」(作者不詳)と「クイック・トリック」(ティモンズ作)は未発表のまま。今回が初お目見えの楽曲ということになる。

もちろん、スタジオ・テイクとしては全曲今回が初出だ。もうファンキー・ジャズというか、ハード・バップというか、その最盛期の典型がここにあるって感じ。キャッチーでファンキーなテーマ・メロディが奏でられて、各プレイヤーのソロに突入して、ピアノ・ソロの終わりあたりにホーン2本によるセカンド・リフが重なってきて、4バーズのやりとりがあって、テーマに戻って大団円…みたいな。王道。やっぱ、お古いジャズが好きな人間としては落ち着きます。

いろいろな名曲のメロディを引用しまくって、JASRACの人に目くじら立てられそうなモブレーの無骨なテナー・ソロもばっちり。モーガンは当然完璧だし。ティモンズも相変わらずごきげんにファンキーだし。そしてブレイキーのグルーヴ!

ブルーノートから普通に出ていた往年の名盤の再発かと思わせるアルバム・ジャケットのデザインも含めて、最高。ハード・バップは不滅だな、まじ。

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