ウィメン・イン・ミュージック パートIII/ハイム
カリフォルニアのサンフェルナンド・ヴァリー出身の三姉妹ポップ・ユニット、ハイム。去年の夏、久々のリリースだったこともあってこのブログでも早々に取り上げたシングル曲「サマー・ガール」は、ルー・リードからの影響も色濃い都会派ブリージー・ポップ…みたいな感じで。ほんと気持ちよく、お散歩のとき聞きまくったものです。
2013年にアルバム『デイズ・アー・ゴーン』でデビュー。2017年にセカンド・アルバム『サムシング・トゥ・テル・ユー』。活発にツアーなども続けながらゆったりしたペースでアルバムをリリースしてきているのだけれど。
「サマー・ガール」以降、ハイムは短いインターバルで次々とシングルを発表。来たるべきサード・アルバムめがけてぼくたちファンの期待度を高めていった。秋には「ナウ・アイム・イン・イット」が出て。これはクールなエレクトロ・ポップみたいな感じで。でも、三姉妹バンドというフォーマットゆえか、あまり打ち込み打ち込みしない、さりげない“バンド感”のようなものが漂う仕上がり。この辺がハイムならではの個性のひとつだと思う。
と思っていたら、次はアコースティック・ギターのスリー・フィンガー・アルペジオをバックに3人がヴォーカルを分け合うフォーキーな「ハレルヤ」が出て。3人でひとりのシンガー・ソングライターみたいな感触。これも姉妹バンドならではの個性かなと思ったものだ。
で、今年に入って、今度はちょっとハスっぱなロッキン・ガールっぽい魅力を前面に押し立てたキャッチーな「ザ・ステップス」をリリース。トリオ・バンドゆえのすっきりシンプルなアンサンブルが痛快だった。
世の中が新型コロナウイルスで騒然とする4月に出た次のシングル「アイ・ノウ・アローン」は、まさに誰もがステイ・ホームを強いられる中で意識せざるを得なかった“孤独感”のようなものをテーマにしていて。彼女たちの、どこか内省的な側面がフィーチャーされた1曲だった。“「青春の光と影」の歌詞を全部叫ぶの…”という歌詞にまたまた旧世代ポップス・ファンの心が揺れました(笑)。
そして、5月の末ごろ、トム・ペティに触発された曲だなんて、またまたおじさんファンを喜ばせることを言いながら「ドント・ワナ」という曲を先行公開して。いよいよ6月26日、サード・アルバム『ウーマン・イン・ミュージック パートIII』が世に出た、と。そういう流れ。日本盤も本日、7月1日リリースです。
先行シングルのうち、4曲目の「ザ・ステップス」以降の3曲がアルバム本編、全13曲の中に含められている。もちろん、「サマー・ガール」「ナウ・アイム・イン・イット」「ハレルヤ」も入ってはいるけれど、ボーナス・トラック扱い。アルバムのラストに一気に並べられている。
とにかく、先行シングル群を聞き続ければわかる通り、ハイム三姉妹の音楽的な幅というか、繊細さと大胆さを揺れ動く感性の柔軟さというか、そういう豊かな個性がいい形で詰め込まれた1枚。まだこれが3作目ではあるけれど、これまででいちばん充実した仕上がりじゃないかな。
「サマー・ガール」との連環を思わせるサックスの響きに導かれて始まるアルバムのオープニング・チューン「ロサンゼルス」とか、ファンキーさとクールさを共存させながらごきげんにハネるミディアムもの「ガソリン」とか、フォーキーな「リーニング・オン・ユー」とか、淡々としたビートと不思議なベースラインをバックにワイルドなスポークン調のヴォーカルがうねる「アイヴ・ビーン・ダウン」とか、先行シングル曲以外にも聞きもの多し。
トバイアス・ジェッソ・Jr.、アリエル・レヒトシェイド、ロスタム・バトマングリらがサポートしてます。